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1981:ゆっくりできない家

2012/07/26 (Thu) 00:18
「ゆっくりしていってね!!」
「みんなでゆっくりしようね!!」

先頭に立つのは、母親であるゆっくりれいむ。
その後ろを、10匹の子ゆっくりが列をなしてついて行く。
ぽよんぽよんと、母の後ろを楽しげに跳ねて進む子ゆっくりたち。
子供たちが毎日楽しみにしている、食後のお散歩である。

「ゆ!!おはなさんだよ!!ゆっくりたべるよ!!」
「ゆゆ!!ちょうちょさん!!ゆっくりまってね!!」
「ゆゆっ!!いもむしさんだ!!れいむにゆっくりたべられてね!!」

お花畑に到着すると、ある子れいむは綺麗な花々を啄ばみ始める。
蝶々を見つけた子まりさは、ゆっくり追いかけっこを始める。
そして、葉の上に芋虫を発見した子れいむは、食後のデザートといわんばかりに一口でそれを飲み込んだ。

「ゆゆ!!みんなゆっくりしてるね~♪」
「「「ゆっくりしてるよ!!おかーさんもゆっくりしていってね!!」」」

それを眺める母れいむは、至福の表情を浮かべる。
子供たちが生まれてから半年が経った。幸運にも、子供たちは1人も欠けることなく成長した。
赤ん坊をここまで育てるのは、随分苦労した。でも、子供たちとゆっくりする未来を願って、諦めずに育て続けた。
そして今、毎日毎日…子供たちは思う存分ゆっくりしている。それだけで、母親であるれいむの苦労は報われ、心は満たされるのだった。

「ゆっ!そろそろかえるじかんだね!!みんな!!ゆっくりおうちにかえるよ!!」
「「「ゆっくりかえるよ!!」」」

母れいむがそう呼びかけると、子ゆっくりたちは一斉に母れいむの周りに集まる。
来るときにそうであったように、帰りも母を先頭にして一列になってゆっくり行進していく。

ゆっくり一家の巣は、大木の根元にある大きな横穴だ。
そこには一家がくつろぐ広間とは別に、餌を貯蔵しておく倉庫と、子ゆっくりたちの宝物を保管しておく部屋がある。
カムフラージュも完璧で、発情したゆっくりありすも、捕食種であるゆっくりれみりゃも巣を見つけることは出来ずにいた。
一家自慢の、とてもゆっくりできる場所だ。

「…ゆゆ?」

母れいむが、何か違和感を感じて跳ねるのを止める。
それに従って、後続の10匹の子ゆっくりたちも行進を止めた。

「ゆ!?おかーさんどうしたの!!ゆっくりおうちにかえろうね!!」
「そうだよ!!おうちにかえればゆっくりできるよ!!」

母れいむが感じた違和感を、子ゆっくりたちはまだ感じ取っていなかった。
だが…目の前の光景は、よく見れば“違和感”という言葉では済まされないぐらい変わり果てていた。

そこには、人間のお兄さんが立っていた。
どうやら嬉しい事があったらしく、ゆっくりたちに言わせれば…最高にゆっくりした顔をしている。
何かいやな予感がする……母れいむが代表して、お兄さんに問いかける。

「ゆ!!おにーさん!!ここでなにをしてるの!?ゆっくりこたえてね!!」

お兄さんは、笑みを絶やすことなく母れいむに答えを返す。
惨めなお前達にもこの“幸せ”を分け与えてやるぞ、とでも言わんばかりに。

「あぁ…今日から、ここにお兄さんの家を建てるんだ。今はその準備だよ」
「……ゆ?」

その会話がなされるのとほぼ同時に、鈍感な子ゆっくりたちも異変を察知した。

―――さっきまでここにあったはずのおうちが、跡形もなく消えている

おかしい。さっき家を出るときは、ここに確かに家があったのに、おかしい、あれ?…なんで?
不思議そうな顔をしている一家に向けて、お兄さんは説明を続ける。

「だから、君達は他の場所でゆっくり暮らしてね。お兄さんからのお願いだよ!」

木は、全て切り倒されていた。
かつて巣があった場所…そこに巣の入り口はなく、あたり一面が綺麗に均されていた。
一家は、突然降りかかった悪夢に唖然としていた。
早くおうちに帰ってゆっくりしようと思っていたら、そのおうちが…ない。どうして?どうして?
固まった表情のまま、答えの出ない問答を繰り返すゆっくり一家。
ふと我に返った親れいむは、目の前のお兄さんがおうちを壊してしまったのだと確信した。

「ゆ!!どうしてこんなことするの゛!!ここにはれいむたちのおうちがあ゛ったんだよ゛!!」
「知ってるよ。でも今度ここにお兄さんの家を建てるから、君達の家は邪魔なんだ。だから潰しちゃったの。ごめんね」

悪びれる様子もなく謝るお兄さんは、親れいむの体当たりにはびくともせず、一人で柵を立て始めた。
その間、近くに住んでいる他のゆっくりもお兄さんを攻撃する。延べ100匹以上のゆっくりがお兄さんの強行を止めようとしたが…
一度に攻撃するのはせいぜい2,3匹程度。お兄さんから見れば、そよ風程度の力もない。
面積にすると200平方メートル程度。家を建てる土地と資材を置く場所の確保が完了してしまった。

「ほら、出てって出てって。邪魔だよ」

お兄さんはぽいぽいっと一匹ずつゆっくりを柵の外に放り投げる。
逃げようとするゆっくりもいたが、お兄さんの腕から逃げることは出来なかった。






今日、散歩から帰ってきたら…巣が消えていた。

巣の中はとてもゆっくり出来る場所で…

ご飯がたくさん貯めてあって、宝物も大事に仕舞ってあって…

かつて自分の巣があった場所…そこには昨日までの面影はなく、柵に囲まれた広大な土地と意味不明な看板だけがそこにあった。

お母さんが作ってくれたテーブルと椅子も、一生懸命貯めてくれたご飯も。

子ゆっくり全員で協力して手に入れたセミの抜け殻も、今度お母さんにプレゼントしようと思っていたお花さんも。

狩りに出かけている間、仲良くお留守番していたであろう赤ちゃんゆっくりたちも。


今は仲良く、土の下。


「どうじでぇ!!どうじでれいむだちのおうちをこわしじゃうのお゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉ!!」
「まりさのおうちをかえしてよ!!そこにはまりさたちのおうちがあるんだよぉ!!」
「おかーしゃん!!おうちがないとゆっくちできないよおおぉぉぉ!!」
「ありしゅのおうちどこぉ!?おかーしゃあ゛あ゛ぁぁぁあ゛ん!!!」
「どうしてこんなことするのおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!??」

建設予定地から追い出された100匹を超えるゆっくり。
一箇所に集まって、巣を奪われた悲しみに泣き喚いている。
各々の一番のゆっくりプレイスを奪われた。備蓄していた食糧も全て土の下。
ゆっくりの群れを襲うのは絶望。命を脅かす危機に、誰もが絶望していた。

不意に…一匹のゆっくりが、呟いた。

「……おにーさんに、しかえしするよ」

決して大きくない声。普段の張り上げるような声と比べれば、それは声とすら言えないくらい小さかった。
だが、そこにいる誰もがその声を耳にした。そして、そのゆっくりの意思を読み取った。

「ゆるせないよ…おにーさんに、ぜったいしかえしするよ゛っ!!」

声を張り上げたのは、ゆっくりまりさ。
だが、他のゆっくりたちは決して同調しなかった。

「だ、だめだよ!!にんげんにはかてないよ!!ゆっくりできないよ!!」
「そうだよ!!ゆっくりやめてね!!そんなことしたらゆっくりできなくなっちゃうよ!!」

皆知っているのだ。本気を出した人間の力を。
実際、さっきだって必死の抵抗を試みたにもかかわらず、あっさり排除されてしまったではないか。
人間が攻撃の意思を見せていない間は、こちらから手を出すべきではない…簡単に言えば、そういう考えなのだ。

「ゆぐぐぐぐぐ…!!!わかったよ!!おくびょうなみんなはゆっくりしてればいいよ!!」

だが、そんな簡単な説得では納得できなかったまりさは、決意を胸に森へと駆けていった。
最高のゆっくりプレイスを奪われた恨みを、抑えつける事が出来なかったのだ。

「まりさだけでもおにーさんをゆっくりこらしめるからね!!」


土地の確保を終えたお兄さんは、現在の自分の家へと帰っていく。

その後ろを、気づかれないように一匹のゆっくりまりさがつけていく。
お兄さんの住処の場所を調べるため。偵察のためである。

「ふぅ…疲れた」

何気ない動作で後ろを振り向くお兄さん。
まりさは、ゆっくりとは思えない速さで木の陰に隠れた。

「ゆ…ゆっくりかくれたよ…!」

お兄さんには聞こえない程度の声で、一人呟く。
まりさは気づかれないように、じっと息を潜めてお兄さんの様子を伺っている。
お兄さんが再び歩き出すと、まりさはその後ろを再び追い始めた。

しばらくすると、お兄さんの家が見えてきた。現在はここに住んでいるようだ。
まりさの目的は、現在のお兄さんの家を発見して今後の情報収集に生かすこと。
だから、これ以上の深入りは不要であり、禁物であった。
だが…ゆっくりまりさ特有の過剰な自信と無鉄砲さが、判断を誤らせた。

「ゆ!いまおにーさんをやっつければ、まりさはみんなのひーろーだよ!!」

自分の能力を過信したゆっくりの辿る末路といえば一つしかないが、このまりさはどうであろうか?
まりさは、まずはお兄さんが家の中へ入っていくのを確認してから、玄関へと跳ねていった。
見上げると、まりさの身体より何倍も大きい扉が、そこに立ちはだかっている。
これを破壊するのは困難だと判断したまりさは、家の反対側の窓ガラスのあるところへと向かった。

「ゆゆぅ!!これならこわせるよ!!」

庭に面した窓ガラス。これなら、石をぶつけて壊す事が出来る。
大きな音をたててしまうことになるが、果たしてそれでいいのだろうか?
まりさにとって、そんなのは愚問だった。
音をたてるということは、お兄さんがこっちに気づくということ。
そうすればお兄さんを探す手間をかけることなく、お兄さんをやっつける事が出来る。


何故なら、まりさは誰よりも強いから!


人間が聞いたら笑ってしまうだろうが、まりさは本気でこう思っているのだ。

「ゆっ!!ゆっくりわれてね!!」

口から勢いよく石を吹き出し、窓に衝突させる。すると、窓ガラスはあっさり砕け散ってしまった。
うまくまりさが通れるぐらいの穴が出来たので、すばやく侵入する。だが…

「ゆぶっ!?ゆぎゃああああぁぁああ!!いだいいいぃいいいっぃぃ!!!」

その穴は、綺麗に丸くできたわけではない。尖った部分があるのは当然である。
まりさは、その鋭く尖ったガラスに底部を引っ掛けてしまい、皮を強く抉ってしまったのだ。

「までぃじゃのあじがあぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!だれがだじゅげでねええええぇぇええぇぇぇ!!!」

餡子脳を揺さぶるほどの痛みに、床の上を転げまわるまりさ。これだけ騒がしければ、住人が気づかないわけがない。
ガラスの割れる音と、耳障りな叫びを耳にしたお兄さんは、リビングにやってきてその光景を目の当たりにする。
聡明なお兄さんは、何が起こったのかを瞬時に理解したようだった。

「おいおい…大丈夫かい?」
「ゆぎゃああああぁぁあん!!!おにーざんゆっぐりだずげでええぇぇえぇぇぇぇ!!!いだいよおおぉおっぉぉ!!」

全身を蝕む激痛に、まりさは目の前のお兄さんが憎むべき敵であることもすっかり忘れ、全身全霊で助けを求める。
お兄さんは数秒間だけ何かを考えるような仕草をした後、台所から“ゆっくり治療セット”を持って来た。

「ちょっと痛いかもしれないが、治して欲しかったら我慢するんだよ?」
「ゆっぐじぃ!!ゆっぐりがまんするよ!!だがらゆっぐりさっさとなおじでね゛!!!」

身の程を弁えない高圧的な言葉遣いにも、お兄さんは表情をぴくりとも変えずに治療に専念する。
お兄さんは移植用の皮を適当な大きさに切り取って、傷を塞ぐように貼り付けた。
そして、剥がれないように周りを水で少しだけ溶かして塗り固めていく。

「よし、出来た。まりさ、ちょっと動いてごらん」
「ゆ?ゆっくりぃー!!……ゆゆ!!ゆっくりなおったよ!!」

ぴょんと大きくジャンプして、治ったことを示してみせるまりさ。
それを見ると、お兄さんは一層微笑んでまりさの頭を優しく撫でた。

「次から気をつけるんだぞ。中身が無くなったらゆっくりできないからね」
「ゆっ、ゆっくりできないのはいやだよ!!だからゆっくりきをつけるよ!!」
「そうだね…あ、そうだ、君がさっきみたいに怪我をしないようにする、いい方法があるよ」

お兄さんの提案に、まりさは躊躇い無く食いついた。

「ほんとう!?おにーさん!!そのほうほうをゆっくりおしえてね!!」
「この森をずっと進んだところに、川があるだろう?
 あそこは昔は海だったところで、畔には今も大きな貝殻がたくさん転がっているんだ。
 その貝殻の中に潜り込めば、外からの衝撃を防ぐ事が出来る。絶対に怪我はしない、ってことさ」
「ゆゆぅ!!すごいね!!それならずっとゆっくりできるよ!!」

まるで夢のような話に、まりさは目を輝かせた。
外界からの攻撃を完全に封じる鉄壁の防御。それさえあれば、自分達の家を奪った人間も敵ではない!
一刻も早く帰って皆に知らせよう。そうすれば、手伝ってくれる仲間だっているはずだ!

「おにーさんありがとう!!まりさはゆっくりかえるよ!!」
「あぁ、気をつけてね」

お兄さんが開けてくれた玄関から勢いよく飛び出して、まりさは森の中へ消えていった。
まりさにこのことを教えてくれたお兄さんは、とてもゆっくりできる人だ。
憎き人間を倒したら、お礼として一緒にゆっくりさせてあげよう。

まりさはそこまで考えて、自分の思考が矛盾していることに…………気づかなかった。

“餡子脳を揺さぶるほどの痛み”は、まりさの記憶を見事に混乱させてしまっていたのだ。

「……ふぅ」

意気揚々と森へ引き上げていくまりさを、お兄さんは穏やかな目で見つめている。
そして、自分の中で何かを確信すると、玄関のドアを静かに閉じた。


まりさは群れに戻ると、お兄さんから聞いた話をそのまま仲間に伝えた。
それでも殆どのゆっくりは、まりさの復讐を肯定しなかった。

「やっぱりゆっくりできなくなるよ!!」
「ゆっくりかんがえなおしてね!!」
「そんなことより、いっしょにゆっくりしていってよー!!」

しかし、ごく僅かなゆっくり…まりさと仲のよかった2匹のゆっくりだけは、まりさの話を受け入れてくれた。

「それならだいじょうぶだね!!おにーさんをゆっくりこらしめるよ!!」
「とかいはのありすにかかれば、にんげんなんていちころよ!!」

ゆっくりれいむと、ゆっくりありすである。
他のゆっくりが止めるのもまったく聞き入れずに、3匹は復讐のための準備に入った。
そのためには、何より復讐の要となる貝殻を3匹分用意しなければならない。
お兄さんに言われた場所へ行ってみると、確かにそこには大きな貝殻がたくさん転がっていた。

3匹は適当に貝殻を見つけて、試しに潜り込んでみる。
この河原に転がっているのは、成体ゆっくりでも潜り込めるほど大きな貝殻ばかりだった。
ここが海であった時代は、こんな大きな巻貝が近辺に生息していたのだろうか。

「ゆ!れいむはこれにするよ!!」
「とかいはのありすにぴったりなのはこれね!!」
「まりさはこれにするよ!これがいちばんゆっくりつよいかいがらだよ!!」

そうして3匹が貝殻を持ち帰って…一ヵ月後。
まりさの偵察によれば、今日がお兄さんの新しい家の竣工日だ。
その情報どおり、かつて群れのゆっくりたちの巣があった場所には、立派な3階建ての家屋が完成していた。
3匹は皆思っていた。今日から、憎き人間はこの家に引っ越してくるに違いない、と。
そのときこそが、自分達の復讐のときだ。自分達の家を奪ったのと同じように、人間の家もゆっくりできないようにしてやる。
実際、その日のお兄さんは朝の早いうちに新しい家にやってきて、その後は一度も外に出ていない。

「ありすのさくせんはかんぺきよ!!とかいはのありすたちのちからをみせてあげましょう!!っぶぅ!!」

今回の作戦を立てたありすは、興奮のあまりクリームを吐き出しそうになっているが、寸前のところで堪える。
しかし、ありすの作戦が完璧であることには変わりない。3匹はそう確信している。
あれから3匹は、貝殻を持ち運べるだけの力をつけるために、毎日特訓を繰り返した。
何かあればすぐに貝殻に潜り込んで身を守る事が出来るように、俊敏性をつける訓練もした。
この一ヶ月間の日々は、全てが復讐のためにあったといっても過言ではないだろう。

「みんなでおにーさんをゆっくりこらしめるよ!!」
「「「ゆっくりぃーーーーーーー!!!」」」
「おにーさんにおうちをとられちゃったけど、こんどはみんながおにーさんをゆっくりできなくするよ!!」
「「「ゆっくりぃーーーーーーー!!!」」」
「おにーさんをこらしめて、こんどはみんなでゆっくりしようね!!!」
「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」

最後に、結束を固める3匹のゆっくりたち。
彼らの目的はただひとつ。お兄さんの家を滅茶苦茶にして、ゆっくりできないようにすること。
彼らの願いはただひとつ。ゆっくりできる平穏な日々を、再び手に入れること。

そして…夜。

3匹のゆっくりは、願いを実現するべく…作戦を実行する。

「ゆっ…ゆっくりしずかにしてね!」
「れいむはむこうだよ!まりさはむこうにいってね!」

事前の作戦通り、3匹は等間隔でお兄さんの新しい家を取り囲む。
こうすることでお兄さんの退路を絶つというのが、ありすの説明だった。
完璧だ。完璧すぎる作戦だ。3匹は半分勝利を確信しつつ、作戦通りに配置についた。




ありすの完璧な作戦によれば、3匹のゆっくりが一斉に突入してお兄さんをゆっくりできなくさせることになっている。
そのときを…その合図を2匹は待っている。合図を送るのは他でもない、あの日偵察に向かったまりさの役目だ。

深呼吸して心を落ち着かせると、まりさは…声高らかに宣言した。

「ゆっくりとつげきいぃぃいいーーーーーーー!!!!」
「「「ゆううぅぅうぅぅぅっぅうぅぅ!!!!!」」」


まずは、家屋内に侵入する進路を確保する必要がある。
それぞれが持っている貝殻で、窓ガラスを破壊しようと試みる3匹。
だが……そこに最初の難関が立ちはだかった。

「ゆっ!!われないよぉ!!?」「どうじでぇえええぇぇ!!!??」
「いつもはわれるのにいいいぃぃぃいいいぃ!!!」

いつもなら簡単に割ることの出来る窓ガラスが、今日に限っては……まったく破壊する事が出来なかった。
頑丈な貝殻をどんなに叩きつけても…何度も何度も叩きつけても…
窓ガラスにはうっすらとヒビが入るだけで、砕け散ってゆっくりたちの侵入路となることはなかった。

「どうじでわれないのおおぉおぉぉおぉ!?!?」
「これじゃゆっぐじでぎないいいいいぃぃぃぃいぃい!!!」

知能の低い、そして学習するということを知らない饅頭どもは、強化ガラスという存在は知らないし受け入れることも無い。
ただガラスを破壊できないという事実だけが、ゆっくりたちの結束を少しずつ、確実に崩壊へと導いている。

その崩壊を止めたのは、玄関の扉が開く音だった。
現れたのは…他でもない、家の主である。

「さっきからうるさいぞ!誰だよ、こんなイタズラをするのは…」

まさか自分の家の窓を叩いているのがゆっくりだとは思っていないのか、お兄さんは近所の子供を叱り付けるような口調である。
迂闊にも、その大きな声が3匹を呼び寄せる結果となってしまった。

「ゆ!!みんなこっちだよ!!こっちにおにーさんがいるよっ!!」

あっという間に玄関に集い、お兄さんを取り囲む3匹のゆっくりたち。
憎き敵を目の前にして、全員が空気を吸い込んで膨らみ、怒りの表情で威嚇のポーズをとった。

「おいおい…一体何事なんだよ。ゆっくり説明してくれよ」
「ゆ゛っ!まりさたちは、おにーさんをこらしめにきたよ!!」

息を荒くしながら、まりさは怒気を込めて説明するが…
そんな簡単な説明では、お兄さんは自分が置かれた状況を理解できるわけが無い。

「はぁ?よくわからないけど、お兄さんは今忙しいから。それが済んだら遊んであげるからさ、待っててくれるかな?」
「ゆぎゅぅっ!!ふざけないでね!!まりさたちはしんけんにおにーさんをこらしめるんだよ!!」
「うん?…言ってる意味がよくわからないんだけど、そういう遊びをしたいってことかい?」

どうしてここまで言われなければならないのか…恨みを買った覚えは無いのに、とお兄さんは不思議そうな顔をしている。
自分がゆっくりの家を破壊して住処を奪ったことを、朝ごはんの目玉焼きを焦がしてしまった程度の些細なこととしか思っていないのだろう。
お兄さんはまりさたちの怒りの言葉を、ごっこ遊びの台詞としか考えていないようだ。

「あそびっでいうなあぁぁぁぁああぁ!!!まりさだぢばほんぎだぞおおおぉぉぉおおぉおお!!!」
「れいむたちのおうちをこわしたことを、ゆっくりこうかいしてね!……ゆっくりこうげきいいいぃいーーーー!!!」

れいむの合図と共に攻撃を開始する3匹。
貝殻を器用に背負ったまま、お兄さんの足元にバラバラのタイミングで体当たりを繰り返す。
だが、お兄さんはまったく痛がらない。ぜんぜん痛くないのだ。
何故なら、まりさたちは自分の身体でぶつかるだけで、背負った頑丈な貝殻をまったく攻撃に生かしてないからだ。

「ハハハ!そうかそうか、チャンバラごっこで遊びたいんだな。それじゃお兄さんの家の中に入ってね!」

そういって家の中へ入っていくお兄さん。それに続いて、3匹のゆっくりたちも家の中についていく。

「ゆっ!!ゆっくりにげないでね!!」
「ゆっくりおいかけるよ!!」「とかいはのありすからにげられるなんておもわないでね!!」

家の中は、まりさが想像する“人間の家”とは似ても似つかなかった。
家具は殆ど無く、あるのはテーブルと一人分の椅子だけ。ベッドも無くタンスも無く本棚も無い。

「さて…少しだけでいいなら、一緒に遊んであげるよ!ゆっくり掛かっておいで!」
「だからあそびじゃないっでいっでるでしょ!!??ゆっくりりかいしてね!!!」
「ばかにしないでね!!まりさたちのこうげきをうけて、ゆっくりくるしんでね!!!」

これだけ言われれば、さすがに3匹の餡子脳でも馬鹿にされていると自覚できるだろう。
頭に餡子の上った3匹は、先ほどと同じようにバラバラのタイミングでお兄さんに体当たりをしかけていく。

「おお、痛い痛い(笑)」
「ゆっ!!もうすこしでおにーさんをたおせるよ!!えいっ!えいっ!」
「とかいはのこうげきをうけて、ぶじでいられるとおもわないでね!!」

お兄さんが痛がる素振りを見せるので、ゆっくり3匹は自分達の攻撃が効いていると勘違いしている。
もう自分達の勝利は目の前だ、と自信に満ち溢れた笑み。それをみたお兄さんは…今までと同じように、優しく微笑んだ。

「さて、お兄さんもそろそろ本気を出そうかな」








ヒュパッ!!








その瞬間、目の前のれいむとありすの姿が消えるのを、まりさは目撃した。

2匹の貝殻だけが、その場に残されている。









「ゆ……?」

ワンテンポ遅れて、べちゃりと気味の悪い音が後方から聞こえてきた。

それはまるで、大きな饅頭を壁に叩きつけて破裂させたような…そんな音であった。






「ぶじゅあああぁlrぃがあえろがじぇおrgじゃおえr!!??」
「え゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っえ゛っ…!!!」
「どどどっどどうじだのおおおおおおおぉぉぉぉぉふだりどもおぉぉおおぉぉぉぉぉ!!??」





仲間の悲鳴を聞いて、まりさは初めて何が起こったのかを理解した。
振り向くと、そこには壁に張り付いてびくびく痙攣しているれいむとありすの姿があった…
加わった圧力に耐え切れなかった皮が破れて、2匹は傷口からそれぞれの中身をだらしなく漏らしている。

「れいむうぅぅううぅうぅぅぅ!!!ありずううぅぅうあうぅっぅぅ!!!ざっぎまでがっでだのにどうじでええぇぇぇえぇぇぇ!!??」
「あっちゃー、ちょっと力入れすぎたかな。あはははは…ゴメンね♪」

ゆっくりにとって、中身が大量に流出することは死に直結する。
だが、お兄さんは自分がしたことの重大さなどまったく理解せず、けらけらと笑うだけだ。

「れいむうううううう!!!あでぃすううううううう!!!ゆっぐりしすぎだよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」

両手についた餡子とカスタードをぺろりと舐めながら、まりさを見下ろすお兄さん。
後ずさりするまりさに対して、お兄さんは何かを思い出したような顔でこう呟いた。

「本当にゆっくりはバカだね。せっかく貝殻を持ってきたのに、それを使わないんじゃ全然意味ないじゃん」

「…ゆっ!!」

お兄さんの一言で、まりさはハッとした。
仲間は貝殻をうまく使えなかったから死んでしまったけど、貝殻に潜り込めば今の攻撃だって防げる!!
そうすればまりさはお兄さんに勝てる。死んでいった仲間のためにも、お兄さんを倒してゆっくりするんだ!!
…決意を新たにしたまりさは、一度だけお兄さんを見上げると…持ってきていた貝殻の中に潜り込んだ。

「ゆっゆっゆ!!このかいがらがあれば、おにーさんのこうげきなんてぜんぜんこわくないよ!!」

貝殻に深く潜り込んだまりさからは、お兄さんの表情をうかがい知ることは出来ない。
でも、きっとお兄さんは悔しがっているに違いない。攻撃できないことを悔しがっているに違いない。
これで絶対に勝てる……まりさは、勝利を確信していた。

「………」

対するお兄さんは、何も言葉を発しない。
おそらく、手も足も出ない現実に絶望して口を利く余裕もないのだろう。
ゆっへっへと笑うまりさの声が、貝殻の中に響いた。

「………」

おかしい。まりさは素直に感じ取った。
いくらなんでも、おかしいのではないか。悔しがる言葉の一言でも、吐き捨てるはずだ。
なのに、憎むべき敵は一言も発していない。
まりさに平伏する言葉も、まりさの知能を羨む言葉も、まりさの優位を受け入れることを拒む狂気の叫びも…

「ゆ!!だまってないてゆっくりしゃべってね!!」

痺れを切らしたまりさは、貝殻の入り口から顔を覗かせて外の様子を伺った。
貝殻の外では、お兄さんが地べたに座ってぐったりとしていて……ゆっくりたちから見れば、最高にゆっくりしていた。
そんな様子が気に入らないまりさは、ゆっへっへと笑いながらお兄さんを罵る。

「ゆっへっへ!!ばかなおにーさんはゆっくりまけをみとめてね!!そうすればゆるしてあげるよ!!」
「……ふわああぁぁぁぁぁあぁあ……あー眠い」

普通の感覚なら、まりさの高圧的な言動にキレてブチまけてしまうところを、お兄さんは穏やかにスルーする。
逆に、お兄さんの緊張感の無さがまりさのプライドをチクリチクリと突く。

「ゆぎゅう゛!!きこえないの!?ゆっくりまけをみとめてね!!ていこうはむいみだよ!!」
「ん?誰か喋ったか?お兄さんの目の前には貝殻しかないけど…貝殻が喋るわけないよね!!」
「ゆんぎゅううぅぅっ!!もうおこったよ!!おにーさんはゆっくりくるしんでね!!」

我慢の限界に達したまりさは、愚かなことに……自ら貝殻の外へ飛び出した。
貝殻に篭っていては満足に移動できない。お兄さんに攻撃するには、貝殻から出るしかないのである。
身軽になったまりさは、ぶりゅんという気持ち悪い音をたてながら大きく跳びはねて、お兄さんにタックルした。

…が。

「ゆ゛ん゛っ!?っぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」

顔面にデコピンを食らったまりさは、顔が凹んだままその場でのた打ち回る。
お兄さんは相変わらず眠そうな顔をしているが、痛みに暴れるまりさを見るとこう言った。

「おいおい、貝殻の外に出てきたらダメだろう?君の仲間みたいに潰されちゃうぞ?」
「ゆ゛!?そうだったよ!!かいがらのなかにいればあんぜんだよ!!おにーさんのこうげきもきかないよ!!
 ゆっへっへ!!てきにそんなこというなんて、おにーさんはばかだね!!」

自分の立場を弁えない言葉を吐きながら、まりさは再び貝殻の中に戻った。
ほんの少しだけ顔を覗かせて視線を上に向け、お兄さんの様子を窺っている。

これが人間だったら、どんなバカでも自分の言葉と行動のおかしな点に気づくのだが、ゆっくりの餡子脳ではそうもいかない。
そして、『貝殻の防御』の決定的な欠点を理解させるために、お兄さんはこんなことを言い出した。

「おいおい、貝殻の中にいたらダメだろう?外に出てお兄さんに攻撃しないと勝てないぞ?」
「ゆ゛!!そうだったよ!!まりさのこうげきをうけて、ゆっくりくるしんでね!!
 ゆっへっへ!!てきにそんなこというなんて、おにーさんはばかだね!!」

意気揚々と貝殻の外へ跳ね出てくる。さっきと同じようにお兄さんに攻撃しようとするのだが…結果は先ほどと同じ。

「む゛ん゛!?っがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!??」
「おいおい、貝殻の外に出てきたらダメだろう?君の仲間みたいに潰されちゃうぞ?」
「っゆ!?そ、そうだったよ…!!かいがらのなかにいれば…あんぜんだよ!!ゆっくりかくれるよ!!」

そして、お兄さんはただひたすら同じことを繰り返した。
まりさが貝殻の中に隠れれば、『中にいたらお兄さんを倒せない』と言って誘い出す。
貝殻の外に出てきたら死なない程度の攻撃を加えて、『外にいたら殺されるぞ』と言って脅す。
だんだん体力を失っていくが、それでもまりさは何の疑問も抱かずに貝殻の中と外を往復する。
一方、お兄さんはあまりの可笑しさに笑いを堪えるのがやっとという様子だ。

そんなことを30回程度繰り返して……

まりさはやっと、“気づいた”。

「ゆぎゅうううううう!!!!じゃあどうじだら゛い゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」

貝殻の口から顔だけ出して、涙を垂れ流しながら泣き叫ぶまりさ。
まりさはやっと気づいたのだ。自分が袋小路に追い込まれたことに。
つい数分前まで、この貝殻さえあれば外敵の攻撃を全て防げる、絶対に負けることは無い、自分は最強だ、と思っていた。
事実、貝殻に潜り込んでいるときはお兄さんは攻撃してこなかった。貝殻の中は確かに安全だったのだ。
けれども、それだけでは勝てない。負けることはないが、勝てることもないのだ。

それが、ゆっくりの『貝殻の防御』の欠点である。

「外に出ておいでよ。そしてお兄さんに攻撃すれば、まりさは勝てるんだよ?」
「ゆううううだめだよおおおおおお!!!そんなことしたられいむやありずみだいにごろざれじゃう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う!!!」
「じゃあずっと中にいれば?そうすれば安全でしょ?」
「それもだめええぇぇぇえぇえ!!!かいがらのながにいだら、ゆっぐりごうげぢでげな゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛!!!」















「やっと気づいたか、バカ饅頭」

穏やかな笑顔のまま、ドスの聞いた声でつぶやくお兄さん。
その声に本能的な恐怖を感じたまりさは、ゆ゛っと声を漏らして震え上がった。

「一ヶ月前にお兄さんはお前に教えてあげたよね。『貝殻があれば、外からの衝撃を防げる』って。覚えてる?」
「ゆ゛!?ま、まさか…おにーさんはあのときゆっくりさせてくれたおにーさんなの!?」

まりさの餡子脳の中で、やっと記憶が繋がった。
底部を怪我したときに治してくれたお兄さんと、目の前のお兄さんは…同一人物である、と。
それは、目の前にいるお兄さんが貝殻について教えてくれた、ということでもある。

「ゆっ!!おにーさんだましたね!!かいがらがあればかてる、なんてうそつくおにーさんはゆるさないよ!!」
「騙しちゃいないさ。お兄さんは本当のことしか言ってないよ。
 お兄さんは『貝殻があれば衝撃を防げる』としか説明してない。『人間に勝てる』なんて一言も言ってないよ?」
「ゆ……ゆぐぐぐぐ…!?」
「それをバカなお前は間違って解釈したわけだ。『貝殻があれば人間に勝てる。まりさ様は最強だ!』ってな」

ニヤニヤしながら、まりさの顔を覗きこむお兄さん。
まりさは…何も言い返す事が出来なかった。

「お兄さんはお前がバカだってことを最初から知ってたから、こうなるってことも分かってたんだよ。
 あははは!!全てはお兄さんの思い通り!!まりさはバカだから、お兄さんの作戦に引っかかっちゃったんだ!!」
「ゆうううぅぅぅぅ!!!!ゆぐぐっぐううぐう゛う゛う゛う゛う゛!!!!」

わざとらしく床の上を転げまわりながら、腹を抱えて爆笑するお兄さん。
最初は、人間に教えてもらった貝殻を使えば攻撃を防げて、人間にも絶対に勝てると思っていた。
でもそれは間違い……貝殻が保障してくれるのは命の安全だけであって、決して人間に勝てるわけではない。

そして、この一部始終の行動が復讐の相手であるお兄さんに思惑通りであったという事実。
復讐を思いつき、お兄さんの家に侵入し、貝殻のことを聞いて、貝殻を確保し、お兄さんの新居に侵入する一連の行動。
これら全てが、お兄さんの手のひらの上で踊らされていたという事実が…

お兄さんに復讐するという信念も、ゆっくりとしてのちっぽけなプライドも、ズタズタに引き裂かれてしまったのだ。

なまじ知能があるばかりに、まりさは復讐の相手に踊らされていたという事実が耐え切れなかった。
その溢れ出るような感情は……涙となって、泣き声となって、放出される。



「ゆ…ゆっぐ……えっぐ…ゆ、ゆぐうううぅぅ…ゆ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁあ゛あ゛ぁぁぁあ゛ぁぁぁぁぁあ゛あ゛ん゛!!!!!
 どうじでえええぇぇえええええ!!!かいがらがあればがでるどおぼっだのにいいいいいいぃぃい゛い゛いいい゛!!!」

この瞬間、お兄さんは今まで見せたことの無い至福に満ちた笑顔を浮かべた。
まりさの泣き顔が、お兄さんの心をすっと晴れさせる。
まりさの泣き声が、お兄さんの心にすっと染み渡る。
今この時のこの表情とこの声。これが欲しくて、お兄さんはずっと忍耐し続けていたのだ。

「ゆっぎゅうううぅぅぅん!!!どうじでえぇぇぇえぇぇ!!!どうじでごうなるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」



…だが。

「…………ふぅ」

いつまでも泣き止まないまりさを見て、お兄さんの晴れやかな表情は徐々に暗くなっていく。

何か思うところがあるのか、まりさに歩み寄って貝殻ごと優しく持ち上げた。

「なぁまりさ…もういいだろう?」
「ゆっぐ…ゆえっぐ……ゆっ?」

印象のまったく違うお兄さんの、まるで子供を諭すような語調に、まりさは泣き止んでお兄さんの顔を見上げる。
さっきまでのお兄さんとは全然違う。蔑むような視線も、もう感じなかった。
その突然の変貌に、まりさは戸惑っていた。

「復讐なんてさ、やるもんじゃないよ」
「ゆっぐ…で、でも……まりさは、おうちをとられたのがゆっくりくやしかったんだよ!!」

それが全ての根源だった。まりさが復讐しようと思ったのは、ゆっくりプレイスを奪われたのが悔しかったから。
その悔しい思いをお兄さんにも味わわせてやりたい。そんなゆっくりできない感情がもたらしたものだった。

「その気持ちはよくわかる。でもお前はゆっくりだ。ゆっくりなら、ゆっくりしなきゃダメだろう?」
「ゆっぶうぅ…!!でも、おうぢどられぢゃっだらゆっぐぢでぎないお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」

一ヶ月前。まりさたちはお兄さんによっておうちを奪われた。
散歩から帰ってきたら、おうちが消えていた。狩りから帰ってきたら、おうちが消えていた。
頑張って集めた食料も、思い出の詰まった宝物も、留守番していたであろう子供たちも、まとめてあっさりと消えたのだ。

そんな状態でゆっくりできるだろうか?…できるわけがない!!

「いや、ゆっくりできるよ」
「ゆっ!?」

お兄さんは、まりさを抱えたまま窓際に移動する。そして、まりさにも窓の外が見えるように、貝殻ごと抱えあげた。

「ほら、見てごらん」
「ゆ!みんな…!!」

まりさが見たもの。

それは、お兄さんの家の周りで幸せそうにゆっくりしている…まりさの仲間達の姿だった。

「ゆっ!!ここはれいむのあたらしいゆっくりプレイスだよ!!」

おうちを失ったものは、新たにおうちを作ってゆっくりしていた。

「ゆっ!!あたらしいたからものだよ!!ゆっくりたいせつにするよ!!」

宝物を失ったゆっくりは、新しく手に入れた思い出の品を大切そうに咥えている。

「ゆゆゆ…しんじゃったあかちゃんたちのぶんまで、たくさんゆっくりしていってね!!」
「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」

狩りの間におうちを潰されて子供を失った親ゆっくりは、新たに生まれた赤ん坊を今まで以上に可愛がっている。

おうちを奪われたことはつらかった。今まで頑張って集めたものを失うのはつらかった。家族を失うのはつらかった。
けれど、ゆっくりたちはゆっくりだった。そんなつらさを乗り越えて、今もこうしてゆっくりしているのだ。

「ほら、よく見るんだ。みんなとってもゆっくりしてるだろう?」
「ゆぅ…すごいゆっくりしてるよおおぉ……!!」

その時、まりさは自分の過ちに気づいた。
今まで自分の復讐を止めようとする仲間がいたが、それは仲間が臆病なだけだと思っていた。でも、それは違ったのだ。
復讐なんかしなくてもゆっくりできる。仲間が集まって協力すれば、ゆっくりできる。

『しかえししたら、ゆっくりできなくなるよ!!』

仲間の言葉は、正しかったのだ。間違っていたのは…自分だったのだ。

「まりさは…ゆっくりまちがってたんだね」
「そうだな。お前は復讐しなければゆっくり出来ないと思っていたようだが…別に復讐しなくてもゆっくりできる。
 それは、ああやってゆっくりしている仲間を見れば、わかるだろう?」
「ゆっぐ…まりさもゆっくりしたいよ!!みんなみたいにゆっくりしたいよ!!まりさも……ゆっくりできるかな?」

恐る恐る問いかけるまりさに、お兄さんは優しい声で答えた。

「できるよ。だから復讐なんて忘れて、これからはちゃんとゆっくりするんだぞ!」

その言葉が、今のまりさにとっては何よりも嬉しかった。
自分は間違っていた。でも、それを改めれば今からでもゆっくりできる!…その事実が何よりも嬉しかったのだ。
まりさは自ら貝殻の中から床の上へ飛び降りると、涙を振り払って満面の笑みでお兄さんを見上げた。

「おにいさん!!ゆっくりおしえてくれてありがとう!!これでまりさはゆっくりできるよ!!」
「いや、いいんだ。やっと気づいてくれて、お兄さんも嬉しいよ」
「まりさはゆっくりはんせいしたよ!!やっぱりしかえしなんてしちゃいけなかったんだよ!!ゆっくりりかいしたよ!!」

そんなまりさをお兄さんはそっと手のひらに乗せて、優しく頭を撫でてやる。

「そうかそうか、もう復讐はしないんだな」
「ゆゆん!!もうしかえしなんてしないよ!!ゆっくりはんせいしたから、これからはゆっくり
















































「いまさら反省したところで、遅いんだけどね」

「ゆっ!!??」

そう言って、まりさの頭をがっしりと掴むお兄さん。

悲鳴を上げる暇も無かった。何もかもが、遅すぎた。

お兄さんは、まりさを透明な箱の中に押し込むと蓋を閉じ、鍵をかけて開けられなくしてしまったのだ。

「どうして!?どうしてこんなことをするの!?ゆっくりさせてね!!ここじゃゆっくりできないよ!!」

跳びはねることも、抜け出すことも、向きを変えることも出来ないまりさ。

唯一許されるのは、言葉を発することのみ。どんなに息苦しくても、そこから逃れることは出来ない。

箱を抱えたお兄さんは、それを窓際の棚の上に置いた。

向きを整え、まりさから外のゆっくりがしっかりと見えるようにする。

「お兄さんはもう行くよ。そこから仲間達がゆっくりするのを見ながら、死ぬまでゆっくりしていってね!!」

あまりにも展開が速すぎて、何が起こっているのか把握できなかった。

あれ?どうしてまりさは箱の中にいるの?どうして箱から出られないの?

どうして皆は外でゆっくりしてるのに、まりさはここにいるの?

どうしてまりさは動けないの?動けないとゆっくりできないよ!!まりさだって、みんなとゆっくりしたいよ!!

ねぇ!!ゆっくりできるんだよね!!ゆっくりできるんでしょ!?ゆっくりしていいんだよね!?

まりさはゆっくり反省したよ!!だからいいでしょ!?ゆっくりさせて!!ゆっくりさせてよ!!

どうして!?どうしてまりさだけゆっくりできないの!?まりさもゆっくりしたい!!お願いだからゆっくりさせてよ!!

みんなゆっくりしてるよ!?まりさもゆっくりさせて!!みんなとゆっくりさせて!!もっとゆっくりしたいよ!!

ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!

ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!

ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!

ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくり!!



「もうやだ!!ごごがらだぢで!!!まりざはおぞどでゆっぐりじだいよおおおおおおおおおおおおおお!!!!
 おにいざん!!いるんでじょ!!まりざをだじで!!!おぞどでゆっぐりざぜでええええぇえええええ!!!!」

その叫びを、外の仲間達は聞いてくれない。もちろん、出て行ったお兄さんも聞いてくれない。

まりさは、お兄さんが家の外に行ってしまったことすら気づいていない。

傷はまだ治っていないが、箱に密着しているため餡子が漏れていかない。だから、すぐに死に至ることもない。

ゆっくりと死が迫ってくるのを待ちながら、まりさは外を眺め続けるしかないのだ。

「みんな……どうして……どうしていっしょに…ゆっくりさせてくれないの?」

自慢のおうちでゆっくりしているゆっくりれいむ。

宝物を大切そうにおうちに持ち帰ったゆっくりまりさ。

たくさんの赤ん坊に囲まれて、幸せそうな親ゆっくり。

誰も、まりさの叫びを聞いてくれない。誰も、まりさを助けてくれない。

誰も……まりさに気づいてくれない。

「もうしかえしするなんていわないから……はんせいしたから…まりさをゆっくりさせてよぉ………」

外でゆっくりしているゆっくりは、もうまりさが他の場所でゆっくりしていると思い込んでいる。

だから誰も心配していないし、誰も助けに来ない。

最高にゆっくりしている仲間達の姿を見て……

まりさは何日後に訪れるか分からない死を、ゆっくりと待ち続けることとなったのだ。






「ゆっぐりざぜでよおおおおお゛お゛お゛おおおおおおおお゛お゛おおおお゛お゛おお゛おお゛お゛おお!!!!」






まりさは、ちゃんと反省した。

だから、ゆっくりする権利がある。

二度と開くことのない、箱の中で。




(終)



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コメント

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2012/07/26 00:39 | # [ 編集 ]
968:

ありすの中身ってカスタードじゃなかったっけ?

2012/07/26 01:52 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
970:

一瞬貝殻ごと潰せばいいのにと思った・・・でも、一応あえて貝殻ごと潰してないんだよね

2012/07/26 09:40 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
971:

ちょいちょいゆっくりへの悪意滲み出てるところがいいね

2012/07/26 13:31 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
1436:

わろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

2012/09/10 14:55 | 名無しさん #mTQRquZs URL [ 編集 ]

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