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2378:ありふれた野生のお話

2013/03/05 (Tue) 08:00
終末の足音が聞こえているのに、何も出来ないやるせなさと焦燥感は、日々れいむの中で大きくなっている。
『いっそ殺してくれ』などという言葉は生を諦めた台詞だ。
れいむは好きではない。
ただ複数の要因によってじわじわと弱っていく自身の群れの事を考えるたびに、
どうせなら致命的でどうしようもないような問題が起こってくれればなんて、不謹慎な事を考えてしまう。
解決できそうで出来ない問題がいくつもあるというのは自分の無力が嫌でも分かってしまって――――辛い。
はぁと大きくため息をつくれいむ。
そんなれいむに番のぱちゅりーが声をかけた。


「れいむ……。またなやんでるのかしら?あまりおもいつめないで」

「ああ、ぱちゅりー。ありがとう、でもこれはれいむがかんがえなきゃいけないことなんだよ……」


この山の中でも特に大きな木にできた洞。
この群れでは伝統的に長が住む事になっている。
今このおうちの所有者はれいむであり、つまりれいむはこの山の群れの長なのだった。


「はぁ…………」


再びため息、れいむはぼんやりと考える。
山は決して大きくはないが狭くもない。
人里に近く、人間が入ってくる事もあるし、お山を降りた所には畑がある。
この立地条件もまた、れいむを悩ませる事情の一つだ。


「きょうもおやさいをみにいってるゆっくりがいるの……?」

「むきゅ、そうね。…………ちゃいろいきのおうちのまりさとれいむが、いってるみたいね」

「みたってしょうがないのに…………はぁ」


農業を営む者が“ゆっくり”と聞いて浮かべるイメージは、愛らしい飼ゆでも、汚れた野良でも、虐めたくなる馬鹿ゆでもなく、害虫である。
ゆっくりという生物未満がどこからか生えてきて以来、最も直接的な損害を受けたのは間違いなく農業だ。
発生当初はゆっくり対策などしていなかった畑は荒しに荒された。
柵すら設けていなかった畑はゆっくりに収穫の権利を譲り、代わりにうんうんやしーしーで土を汚した。
ビニールハウスは破られ穴だらけになり、その意味を失った。
一口でもゆっくりに齧られればそれだけで商品ではなくなる野菜達。
中途半端な柵では小さなゆっくりを通してしまうし、壊される事もあった。
農家は皆頭を悩ませ、ゆっくり達は豪華な食事に毎日ゆっくりし――――なんていうのは何十年も前の話。


「かりのほうはだいじょうぶなのかなぁ……?」

「ずっとみているってわけじゃないでしょう?……たぶん」


現在ゆっくりによる被害に苦しむ農家はゼロだと言っていい。
科学がゆっくりを追い払うのにそれほど時間はいらなかった。
ゆっくりにしか聞こえない音で、ゆっくりにしか嗅ぎ取れない臭いで、電波で――――ゆっくり避けには様々な種類がある。
今のビニールハウスの素材には当たり前のように忌避素材が使われている。
さらには畑の周りに数本立てるだけでゆっくりが近寄れなくなる棒、
外見的にもユニークな“ゆっくり案山子”など、枚挙にいとまがない。
最近はコストを抑える事が出来る、臭いでゆっくりを防ぐ商品が主流である。
確実に言えるのは、何を使ってもゆっくりから野菜を守れるという事だ。


「おやさいさんなんてたべたことないはずなのに」

「だからあじへのきたいがたくさんになって、なにがなんでもたべたいなんておもってしまうの。
 ………………にんげんさんにおねがいすることだけは、おもいとどまってくれるといいのだけど」


群れの広場を下ってすぐの比較的小さな白菜畑は、山と人里の間に唯一ある畑である。
そこは群れのゆっくりに人気の観光スポットだ。ただし注意しなければならない事が一つ。
それは近づきすぎると激しい頭痛に襲われ、やがて強烈な吐き気に動けなくなり死んでしまう事だ。
もう何匹もそこで永遠にゆっくりしてしまったから間違いない。
ぱちゅりーはそれがとてつもなくゆっくり出来ない臭いのせいだと推測しているが、原因が分かったところでどうしようもない。
恐らくは畑の四隅にあるよくわからない何かのせいだとは思うのだが、近づけない以上取り除くのは不可能だ。
さらに自分達ゆっくりが、どうやって臭いを嗅いでいるのかすらわからないのだ。
そして何も分からぬ他のゆっくりからしてみれば、呪いや悪霊が守っているようで恐ろしい。
説明の出来ない危険ほど怖いものはない。
しかし、それでもなお“おやさい”は輝いて見えるのだ。
例えば――――――れいむ達が心配している畑を見に行ったまりさ達。


「ゆっ、ぐぅ……」


群れの狩場とは反対にあるこの畑に近づいた彼等は、その恐怖を知っているので中に入ろうとはしない。
意味もなく畑周辺を歩いたり、畑の中でお野菜を食べもせずに何かをしている人間を眺めている。
境界線を超えようとすればその前に死んでしまう。
それはもちろん明確に理解している。


「ゆ、そろそろもどろうまりさ、ごはんさんのじゅんびをしないと……」

「そう、なのぜ。もどってかりをしなきゃ…………だめなのぜ……」


戻らなければいけないと言いつつ、まりさは畑から目を離すことが出来ない。
柵すらないこの畑の内部には山にはない白く美しい野菜が無数に収穫の時を待っている。
進入しようとするゆっくりを殺してしまう香りも、視線には影響しない。
離れて見る分には何の危険もないからこそ、じっくりとその柔らかそうな葉を、純白の茎を観賞する。
――――――どれほどおいしいのだろうか、どれほど幸せな味がするのだろうか。
おくちの中が涎でベトベトになり、ちょっと舌を動かしただけで端から溢れ出てしまいそうだ。
きっと山で手に入るどんな物よりも甘くて、柔らかくて、ゆっくり出来るに違いない。
食べて、みたい。一度でいい、全部とは言わない。一口だけでいいから――――――


「まりさ!」

「ゆっ!?」

「もうかえらなきゃだめだってば!まだよるのごはんさんもあつめてないんだよ?
 それに…………とられちゃうぶんもあつめなきゃ……」

「そう……なのぜ」


狩、ゆっくり出来ない、嫌なお仕事。
跳ね回って汚れてお帽子を何回も地面に落として、やっと手に入れられるのは大しておいしくもないご飯さん。
それすら十分満足できる量を探すとなると、努力だけでなく運も必要だ。
それに寒くなってきたせいで、草さんは茶色に変わって硬いものが増えた。
緑でなおかつ食られるものは日増しに減っている気がする。


「はぁ…………」


気が滅入る。
ご飯さんを探すために疲れてお腹が減るのでは意味がないじゃないか。
しかもそのご飯さんがおいしくない、甘くも苦くも辛くもない、退屈な味だ。
大して価値もないくせに、見つけ難い草さん。
そしてきっと今まで食べたどんなものよりもおいしい、目の前にあるお野菜さん。
――――もし仮にこの畑の中で狩を出来たのならば、一体どれほど幸せになれるだろうか。
お野菜さんが選び放題。
いくつでも好きなだけ味見して、気に入ったものだけを持って帰る。
そんな夢で見ることさえ困難な餡子がとろけるような妄想。


「ゆっ……?あっ!」


現実から遠く離れていた所でゆっくりしていたまりさの目の前で、畑から人間が出てきた。
まりさは実のところ人間がよく分からない。知らないのだ。
なぜだかわからないが、畑に入る事が出来るくせにお野菜さんを食べたりしない。
何かを撒いたり、何かをお野菜さんにつけたりしているのを見たことがある。
まるでおちびちゃんのお世話でもしているようだ。


「ゆ、ゆっと……」


人間がまりさの目の前を通る。
まりさに限らずこの群れのゆっくりは人間に話しかけることを長から禁止されている。
同じ事を両親から何度も注意されてきていたために、まりさは人間に対してどこか恐ろしいイメージを持っていた。
ただ、まりさは今までも何度か人間を見たことはあった。
目が合ったこともある。人間は何もしてこなかった。
それに人間に話しかけた罪で制裁されたなんて話、聞いた事がない。
そもそも人間に話しかけたことのあるゆっくりを知らないわけなのだが。


「まりさ……?ねぇ、ほんとにだいじょうぶ……?」

「ゆ、ゆんっと」


様子のおかしいまりさを妻のれいむが心配して確かめる。
まりさはれいむに答えず、棒のようなものをいじくっている人間から目を離さない。
得体の知れない人間、長の言いつけを破るのはいけない事だという事ももちろん分かっている。
そんなまりさを宝石のようなお野菜が誘惑する。
あんなにもたくさんあるのだから、もしかしたら一つくらいもらえるのではないか?と。
だってたくさんあるのだから!


「ゆっ、ゆっ!」

「まりさっ!?ちょ、ちょっと!どこいくのまりさっ!!」

「に、にんげんさん!まってねっ!!まりさのおはなしきいてねっ!」

「うん?」

「ゆえぇぇぇぇっ!?だめだよまりさぁぁぁぁぁっ!!」


まりさの声に反応して人間が振り向く。
そんな人間の足元までまりさは接近し、緊張しながら更に言葉を続けた。
誰よりも驚いたのはれいむだ。自分の夫が人間に話しかけている。
おちびちゃんでもそれが禁止されているのは知っているのに。


「にんげんさん!ま、まりさおやさいさんたべたいよ!」

「……ダメに決まってるだろ。どっかいけ」

「ゆゆぅ!?で、でもほら!あんなたくさんあるよ!いっこだけならへらないでしょぉっ!?
 ま、まりさはもうかりでつかれちゃって――――ちゅべっ!」

「ま、まりさぁああああああああああ!!ひぃいいいいいいいいいいい!!!」


一度断られそれでも食い下がったまりさは、人間の足によって薄く地面に広がった。
ぐちゃりという音から少し遅れてれいむが絶叫する。
叫んだせいで人間の注意を引いてしまったれいむは、さらに声量を上げながら山に逃げていく。


「ふん……」


まりさを潰したこの青年は、ゆっくりに対して何の感情も持っていない。
見かければ必ず潰すほど憎んでいるわけでもなければ、死にかけがいたとしても助けたりはしない。
野菜を欲しがるのはどうでもいい、どうせゆっくりが何をしても畑に入る事は出来ないのだから。
だが騒がしいのは困る、あのまま放っておけば家までついて来て野菜を要求し続けるだろう。
だから黙らせた。
柔らかくて動きの遅いゆっくりを殺すのは、言葉で納得させるよりはるかに簡単だ。
雨が降れば死体も地面に吸収されるし、最近山の動物がツマんでいるのも見たことがある。
わざわざ片付ける必要はないだろう。


「…………あほだなぁ」


木に頭をぶつけ、何度も転び、道を間違えながら逃げてくれいむを見送る。
まりさは鬱陶しかったが、そこまで腹が立ったわけでもない。邪魔だっただけだ。
あのれいむにまで何か危害を加える気はないし、ましてや群れまでついて行って駆除――――なんて考えるだけでも馬鹿らしい。
そんな事をしても山からゆっくりがいなくなる事はないし、そもそも恨んでいるわけではないのだ。
ゆっくりがいようがいまいがどちらでもいい。
時間と体力を無駄にするだけで全く得しない。


「はははっ」


ただ必死すぎるれいむの逃亡姿は面白い。
身体をぐねらせながら、やっと群れの住宅街に帰宅したれいむ。
――――夫が人間に殺されたと大声で泣きつかれ、長のれいむはまたしても深いため息をつくのだった。










群れで二番目に大きな家から出て、れいむは広場を見回す。
前長から指名されてれいむは長になった。
れいむに任されたこの群れは、昔から広場を中心におうちを作り、一番遠くても半径数十メートル以内に皆住んでいる。
ルールはたった二つ、他のゆっくりに迷惑をかけない。人間さんに関わらない。
それさえ守っていれば誰も細かい事は気にしない。
というよりも皆自分の家族の事で精一杯で、他の家の事を考えている余裕など無いのだ。
それでもれいむは長として、もうすこしまとまりのある群れにしたいのだが――――なかなかうまくいかないものだ。
助け合おうにも全員が何らかの助けを求めている状況である。
どんなに素晴らしい理想でも誰にも受け入れてもらえない。
本当に最近はため息の数が増えた。
これではまたぱちゅりーに心配されてしまう。


「……ぇーんっ!おにゃかすいちゃぁぁぁぁっ!!」

「ゆ…………」


何処かのおうちからおちびちゃんの泣き声が聞こえてくる。
この群れではおちびちゃんをいくら作ろうと自由だ。
ただし――――群れは絶対に助けない。
食料の援助は無い、たとえ飢え死にしかけたとしても、葉っぱ一枚恵みはしない。
仮に他のゆっくりに助けを求めても無視されるし、窃盗等の行為にでようものなら必ず制裁される。
いくらおちびちゃんの可愛さを訴えても例外は無い。


「ゆじぇぇぇぇんっ!!おにゃかすいちゃよぉぉぉぉっ!!」

「はぁ……」


泣き声はますます大きくなる。
援助が無い代わりに、たとえ自身のおちびちゃんを死なせてしまったとしても罰せられる事はない。
だって不可能なのだ。一匹も死なせずに成体まで育て上げるなんていうのは。
れいむだって姉妹の死を覚えている。
おちびちゃんを死なせたら制裁、なんて掟を作ってしまったとしたらこの群れに新しいおちびちゃんが生まれることはなくなるだろう。
子供を作るも産むも育てるも殺すも、自分のおうちの中だけなら自由。
それがこの群れの掟だ。


「おがぁぁぁじゃぁぁぁんっ!!にゃんでへんじしてくれないのじぇぇぇぇっ!!」


聞こえてくるおちびちゃんの泣き声は一向に収まらない。
あやすような様子も無い、泣ける間は余裕があると考えているのか、それとも諦めたか。
どちらにせよ、たとえ長であるれいむでも口を出す権利は無い。
それにそうやってゆっくり出来ずに育ったゆっくりは、逞しくそして弁えるようになる。
少なくとも所謂でいぶや、自身を中心に世界が回っていると勘違いしているまりさはこの群れにいない。


「ゆじぇぇぇぇぇぇっ!!おがーしゃんがぁぁぁっ!!へんじしちぇくりえぇにゃのじぇおどぉぉじゃぁぁ!!」


ただどんな事情があるにせよ、おちびちゃんの苦しむ声や姿はゆっくり出来ない。
何も出来ないなら、こんなにも悲しいSOSを聞き続けていても辛くなるだけだ。
れいむは声に背を向け、狩場の方へとあんよを向けた。








「ゆじぇぇぇぇぇん!おとーしゃん!!きくのじぇぇぇっ!!」

「…………ごはんはいまあげたぶんだけなのぜ、ないてもふえるわけじゃないのぜ」


長が遠ざかったおうちの中では、未だ小さな小さなまりしゃが訴えていた。
もっとも両親共に耳を貸す気はない。


「あんなのじゃたりないのじぇぇぇっ!まりしゃもっとたべちゃいのじぇぇぇっ!!」

「しったこっちゃないのぜ」


お腹を空かせた実子にかける言葉にしてはずいぶんなものだが、妻のれいむも気にする様子は無い。
泣いているのは最近三女から末っ子になったまりしゃ。
姉二人はそんなまりしゃを見ないようにしながら母親に寄り添っている。
三匹の赤ゆっくりは同じ量のご飯を与えられている。満腹にはならなくても、身体の維持には十分な量を。
ただそこはわがままな赤ゆっくり、もっと欲しいと思ったら我慢出来ない。
前回の食事の時間と全く同じやりとりを繰り返す。


「ゆじぇぇぇっ!!どうしちぇまりしゃのいうこときいてくれないのじぇぇっ!!」

「……ばかはほっておいて、いいこのおねーちゃんたちはたかいたかいしてやるのぜ」

「ゆ、よかったねおちびちゃんたち。おとーさんのところにいっておいで」

「ふじゃけるなぁぁぁっ!!ごはんしゃんだすのじぇぇぇぇっ!!!」


可哀想だとは思わない、なぜなら自分だってこうやって育てられたのだ。
だからこそ知っている。
この手の馬鹿は甘やかすと必ず付け上がり、さらにとんでもない要求をするようになると。
このおちびはダメだ。初めは勿論優しく説明してやったのに、いつまでたっても理解しない。
まりさはこのまりしゃを、他の二匹のおちびの反面教師として使う事に決めた。
他のゆっくりに迷惑をかけるとどうなるか、それを学ばせるために。


「お、おとーしゃん、れ、れいみゅはがんまできゆよ!」

「えらいのぜ、おねーちゃんたちはあんなばかになっちゃだめなのぜ」

「ゆっくりりかいしちゃよ!」

「ゆじぇっ!?……おがぁぁぁぁじゃぁぁぁっっ!!おどぉぉじゃんがいじめるのじぇぇぇっ!!」

「さわらないでね、わがままいうこはれいむのおちびちゃんじゃないよ」

「ゆ、ゆ、ゆじぇあえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


父と母から拒絶されまりしゃの限りなく脆い心は簡単に折れた。
叫ぶ事は体力を使うし、少しでも注意を引こうとまりしゃは全力で暴れている。
泣き続けるまりしゃの行為は確実にエネルギーを消費し、自ら食事の量を減らしているようなものだ。


「おねがいなのじぇぇぇぇ……!ほんとにたくさんおなかすいたのじぇぇぇ……!」

「おとーしゃんありがちょ!れいみゅゆっくりできちゃよ!」

「おとーしゃんのおにゃかはきもちいいにぇ!」


両親を敵にまわしてしまっては、当然姉妹は味方してくれない。
この狭いおうちの中まりしゃは孤独だった。
もう泣いている事を叱ってもくれなくなった。
まりしゃのひっくゆっくという嗚咽も、楽しげな姉妹の声に隠される。


「ゆひんっ……ゆじぇぇ……」


暴れたせいでお帽子はずり落ちていたが家族、そしてまりしゃすら気づかない。
悲しさを精一杯演出した瞳も、誰も目を合わせてくれないのでは意味が無い。
それでも涙だけは止まらずに流れ続ける。
いずれ、消費量にたいして食事で得られるエネルギーが本当に追いつかなくなるだろう。
――――そして数日後、やはりこの一家は静かな食事を取り戻すのだった。







れいむは群れのほぼ全員が利用している狩場についた。
山は確かに豊富な恵みを与えてくれるが、ゆっくりのためだけに用意されたわけではない。
崖はゆっくりには上れないし、跳んで届かない位置にある物はどうやっても採れない。
急な斜面の途中に美味しそうな花を見つけ、転落したゆっくりは数知れない。
夢中になって進んでいて帰り道が分からなくなる事もある。
自分の背丈よりも少し高いくらいの段差を飛び降りて食料を集め、
いざ帰ろうと思った時に上れない事に気づいた時の絶望感は言葉では言い表せない。
もっとも彼らは結局戻れなかったので、他のゆっくりにそれが伝わる事はなかった。
ともかく山にはゆっくりが食べられるものがたしかに数多く自生しているが、手に入るかどうかはまた別の話なのである。
特に寒さの厳しくなる冬は。


「ゆぅ、みんなだいじょうぶかなぁ……」

「ゆっ!おさ!ゆっくりしていってね!」

「ああまりさ、ゆっくりしていってね」


狩場の奥からまりさがやって来た。
そのお帽子に狩の成果がたくさんつまっているといいなんて、真っ先に心配してしまう。


「かりのとちゅうなのかな?それとももうおわった?」

「ゆん!まりさはもうきょうのぶんはおわったのぜ!」

「そう、おつかれさまだね!……それで、その」

「だいじょうぶなのぜ!ちゃんとわたすぶんもあつめたのぜ!」

「……そっか、さすがまりさだね」


のぜぜと少しテレながら笑うまりさ。
それから一度身体を左右に振って周りを確認し、困惑顔でれいむに近づくと小声で報告した。


「…………かりばのおくでにんげんさんをみたのぜ」

「ゆぇ!?だ、だいじょうぶ?はなしかけたりしなかった?」

「ゆん、それはもちろんなのぜ!にんげんさんもまりさにはきづいてなかったみたいなのぜ!
 …………ただ、そのにんげんさんはちょっとへんだったのぜ」

「へん?」


れいむの目が細まりじわりと緊張が浮かぶ。
人間の動向はもっとも警戒すべき事柄の一つだ。
たった一人に群れを全滅させれる事も有り得るのだから、考え方によっては自然災害よりも恐ろしい。


「ゆん、なんかへんだったのぜ」

「な、なんかって?ゆっと、どうしてまりさはそのにんげんさんをへんだとおもったの?」

「みためもへんだったし…………それになにかさがしてるみたいだったのぜ。
 ともかくへんなにんげんさんだったのぜ」

「へんなにんげんさん…………」


何かを探していた変な人間さん。
それが自分達に関係が無い事ならいいのだが、そうでなかった場合はまた難しい問題が増える事になる。
次から次へともうウンザリだ。
いつの間にかかなり険しい表情をしていたらしい。
まりさが申し分けなさそうにれいむを気遣う。


「で、でもおさ!そのへんなにんげんさんはさっさとどっかにいっちゃったのぜ!
 だから、その、たぶんまりさたちにはなんもかんけいがないのぜ!」

「ゆ…………そうだねまりさ。ありがとう。
 ほかのみんなにもみかけてもぜったいちかづかないようにいってあげてね」

「ゆっくりりかいしたのぜ!じゃ、まりさはかえってさきにひろばにいってるのぜ!」

「またね、まりさ」


変な人間さんがいたというこの狩場。
皆に使用を控えるよう指示するべきだろうかと一瞬考えるが、すぐに思い直す。
ただでさえ食べ物が見つけ難いこの時期に、そんな命令は飢えて死ねと言っているようなものだ。
悩みながらももみあげを動かして、味の事はとりあえず考えずに集める。


「ふゆさんかぁ……」


冷たくて静かな冬。
寒すぎて太陽さんすらすぐいなくなってしまう。
虫さん達はみんな何処かへ消えてしまい、そこらに落ちている茶色い葉っぱはお口の中で砂に変わる。
あたたかな時期とは比べ物にならないほど狩の成果は得られない。
それなのに越冬用の食料を集めなければいけないのだ。


「ゆきさんつもらないでくれるといいのになぁ……」


雨よりも冷たく、雨よりも長く居座り、そして雨よりも地面を覆いつくすのが雪だ。
雨は降り止んでしまえば水溜りは長くても数日で消えるが、雪は長ければ数ヶ月残る事もある。
雪が積もってしまったらおうちから一歩も外に出る事は出来ない。
れいむも越冬中一面真っ白に変わった光景を見たことがある。
恐ろしかった。
あの中に一歩でも踏み出せば自分が消えてしまいそうで、すぐに目を逸らした。
呼吸が凍ってしまうようだった。
狩なんで不可能、それ以前の問題だ。出たら死ぬ、絶対だ。


「はぁ……」


――――街では越冬する必要が無い、と聞いた事がある。
夢のような話だ。
自分達のように直前までせっせと食料を貯蓄せず、その日食べる分だけ集めればいいのだ。
何よりも羨ましいのは、食事を制限しおうちのすみで震えながら、いつ終わるかも分からないサバイバルを耐え抜く必要がないという事。
つまり暖かくて、そして安定してご飯さんを用意する事が出来るのだろう。
まるで天国じゃないか。


「はねさんがあればなぁ……」


街は果てしなく遠い。
れいむのあんよではたどり着けないだろう。
それこそ教えてくれたきめぇまるのように、飛んで行くのでもなければ。


「ふぅ、もうこれくらいでいいかな」


届かぬゆっくりプレイスを夢見ていたところで現実は変わらない。
れいむは長なのだ、自分がこんなことでは皆に示しがつかない。
一応量だけは集まった。そろそろ広場に戻ろう、戻らなければ。
れいむはチラリと遥か遠く山の向こうへと、視線と虚しい憧れの思いを向け、ため息をついてからまた長の顔に戻った。








広場には既に狩を担当するゆっくりがほぼ全員集まっていた。
先ほどれいむに変な人間さんがいたと教えてくれたまりさも待機している。
彼らは集めた食料の一部を持って待っているのだ。
長であるれいむのために集まっているわけではない。
れいむも待つ側のゆっくりだ。


「ゆ!おさもおかえり!」

「ただいままりさ。……まだ?」

「ゆん、まだきて――――きたよ!」

「ゆっ!」


木々の枝葉が大きく揺れているのに、聞こえてくる音は不思議なほど小さい。
見慣れたまりさ種のお帽子、ただそれが他と違うのは小山のようなその大きさ。
それよりもさらに巨大な黄ばんだ身体をくねらせながら、徐々に近づいてくるゆっくり。
彼こそここにいるゆっくり達が待っていた存在であり、畏怖の念を込めて彼らはそのゆっくりをドスと呼ぶ。


「どす……ゆっくりしていってね」

「おさ!そしておまえたち!ちゃんとごはんさんはよういできたの!?」


帽子を入れると縦に三メートル、身体だけでも二メートル、横も姿勢によっては三メートルに届く巨体。
体当たりが主な攻撃方法であるゆっくりにとって、
希少種の特殊な力を考慮しなければ、争いでは体重は重ければ重いほど、身体は大きければ大きいほど有利になる。
それがこのドスほどの大きさにもなれば語るまでもない。
純粋な力だけを考えれば間違いなく最強のゆっくり、それがドスだ。


「ど、どす!なんどもいうけどあんまりおおきいこえはみんながこわがるからやめてね!」

「ふん!なさけないやつらだね!まぁいいよ、さっさとごはんさんをわたしてね!」

「ゆん、みんな!いっぴきずつどすにごはんさんをわたしてね!」


さて、自分を愛して止まないゆっくりが他のゆっくりとは比べ物にならない、桁外れな力を手に入れたらどうするか。
私利私欲のままにその圧倒的な力を振るうのが自然だろう。
平凡なまりさ種からある日生まれ変わったこのドスも、勿論自分がゆっくりするためだけにその力を行使した。
そこで群れのみんなの為にだとか、はたまたゆっくりという種全体の地位向上のためにだとか、そんな思考は一切浮かばなかった。
だってゆっくりなのだから。
どんなに無法を働き他を侵害したとしても絶対に裁かれず、皆は自分に従う。
そんな状況で自重するほうが不自然なのだ。だからドスの行為はある意味正しかった。


「ゆはぁぁぁっ!?ちょっと!ドスとありすにこんなものたべろっていうのぉぉぉぉっ!?
 ゆぅぅぅっ!?そっちのまりさもりょうがすくないよぉっ!?どうしてそこまでかりがへたくそなのぉぉ!?」

「……ゆくっ、ごめんなのぜどす」

「ごめんじゃないでしょぉぉっ!?つかえないまりさ!もういいよさっさとどっかいってね!」

「あ、あのねどす!もうふゆさんがちかいからあんまりごはんさんがとれないんだよ!
 くささんだってみんなたくさんがんばってあつめたものだから、かわいそうなこといわないでね!」

「おさはだまってね!おさだってそんなにかりがうまくないくせに!」


ドスはへたな希少種よりよっぽど珍しい。
はじめは、全員が群れからドスが生まれた事を喜んだ。
なんといってもドスだ。
ゆっくりしたゆっくりの極地と言っていい雄大な姿は、まさにゆっくり達の希望の象徴だった。
これでゆっくり出来る。ドスがいれば色々な事が可能になるだろう。
今まで手の届かなかった木の実や、おうちの拡張、そして外敵からの保護。
人間だってそう簡単にドスには手出し出来ないだろう、誰しもがそう考えていた。
皆がドスに見惚れているなか、れいむが長としてドスとなったまりさを祝福しようとした時、ドスは言ったのだ。

『どすはどすになったよ!これからはまいにちごはんさんをもってきてね!たくさんだよ!』

――――それからの狩は前よりずっと大変になった。 
逆らったゆっくりは他のまりさの数十倍は長いおさげで殴られた。
幸い死にはしなかったが、それはドスが同族殺しをためらったわけではなく、ただ運が良かっただけだろう。
なぜなら殴られた衝撃でそのまりさは片目が潰れ、今は妻が代わりに狩に出ている。
自分達の分とそして夫を傷つけた暴君へと献上する食料を見つける為に。


「でもねどす、これだけあればおなかいっぱいになれるでしょ?
 おねがいだからがまんしてね。れいむたちはほんとうにがんばったんだよ!」

「はぁぁぁ!?こんなんでおなかいっぱいになるわけないでしょぉぉぉっ!?
 こんなのどすがほんきになればいっしゅんでみつけられるよぉぉぉっ!!
 ほんとにつかえないやつらばっかりでどすはゆっくりできないよ!」


ドスがれいむから長の座を奪わないのは、単純に興味がないからだ。
毎日楽して食べられればそれでいい。
大層な肩書きなどがなくても皆は恐れ従う。
群れの方針だ問題への対策だなんだをどうしてわざわざ最強でゆっくりしている自分が考えなければいけないのだ。
自分にそんな暇はない。
この群れで一番大きなおうちで誰にも邪魔されずゆっくりするのだ。最愛の妻、ありすと。


「ねぇどす?そんなこといったらみながかわいそうよ。
 ほら、このくささんなんてとってもとかいはでおいしそうだわ。
 ありがとうみんな!それに………………ほんとうにごめんなさい」

「あ、ありすぅぅ!!いえからでてきちゃったのぉぉっ!?さびしかったのかなぁぁごめんねぇぇぇ!!」

「ええ、さびしくてつい……ね。ほらもうかえりましょうどす?
 こんなにたくさんおいしそうなごはんさんがあるのだから」

「ありす!…………ありがとう」


れいむが小声でありすに礼を言う。
聞こえてはいないだろうが表情で伝わったはずだ。ありすも目で謝る。
ドスの妻のこのありすは元飼いゆっくりだ。
前は人間さんと街で暮らしていたそうだが、突然人間さんのすぃーでこの山に連れてこられ捨てられたらしい。
そこらへんの事情は、ありすがあまり話たがらないのでよく知らない。
とても悲しそうな目をしてお山の入口にいたところをれいむが見つけた。
元飼いゆっくりなだけありお飾りはとっても綺麗だったが、問題はそこではない。
もともと山で生きていれば知らず知らずお飾りは傷つき、時に破れる事もあるのだ。
野生のゆっくりはそこまでお飾りに執着しない。
そうではなく、山生まれ山育ちの野生ゆっくりとは根本的に違うと思わせる何かを持っていた。
それはとても魅力的で、ありすは美しかった。
慣れない山生活に苦労はしたが不満を叫ぶような事はせず、柔らかな物腰は確かな教養を周囲に伝えていた。


「さぁかえりましょう?どす」


飼い主から聞いたというおとぎ話は、子供だけではなく大人にも好評で、ぱちゅりーでさえありすの話をいつも楽しみにしていた。
そんなありすに惚れたゆっくりは少なくなかったが、中でもゾッコンだったのがこのドスだ。
最もその時はまだ、ただのまりさに過ぎなかったが。


「わかったよありす!あいのすにかえろうね!……おまえたち!ありすのやさしさにかんしゃしてね!
 きょうはこれでがまんするけど!あしたはもっとたくさんごはんさんをあつめないとおこるよ!」

「わ、わかったよどす。ほら、ありすがまってるよ」

「ゆゆぅぅ!?ごめんねぇぇありすぅぅ!!ここはさむいからいそごうね!ありすがびょうきさんになったらたいへんだよぉぉぉ!!」

「だいじょうぶよどす、ありがとう。…………それじゃあおさ、ありすたちはかえるわ」


まりさのありすへの不器用な猛アタックは、食事の差し入れや、おうちの家具の提供など、れいむから見ても微笑ましいものだった。
毎日毎日照れながらも何かと理由をつけて、ありすに会いに行くまりさの姿は群れのちょっとした名物だった。
ありす自身もそこまで自分を気にかけてくれるまりさの愛に応え、程なく二人は番になった。
まりさの愛は確かだった。
ドスになった今もまりさはありすを愛して、愛して、愛して、愛して止まない。
盲目過ぎる愛はありすと一分一秒でも離れる事を拒否し、狩に時間を割くことを嫌った。
ただドスとなった事で必要な食事の量は跳ね上がり、
空腹と愛の狭間で悩んだ結果、ドスは群れのゆっくりに食料を提供させる事を思いついたのだ。


「ふぅ、みんなおつかれさま……。ゆっくりきをつけておうちにかえってね」

「ゆん、おさ……。どすはくささんじゃまんぞくしないのぜ……このままじゃあ……」

「むきゅ、まただれかのおめめがみえなくなっちゃうかもしれないわね」

「ぱちゅりー…………そうだね、それはとってもこまるよ」

「おつかれさままりさ。あとはぱちぇとれいむがかんがえるから、しんぱいしないでおうちでゆっくりやすんでちょうだい」

「……わかったのぜ、それじゃまたあしたなのぜ」


広場にいるのはれいむとぱちゅりーだけになったが、れいむは動こうとしない。
れいむの悩みが痛いほどわかるぱちゅりーは何も言わず、そっと隣に寄り添った。
少しだけ風が弱まったように感じる。


「ともかく…………どすをなんとかしなきゃだめだよね……」

「なんとか、ね。まんぞくしてくれそうなごはんさんをさがすのかしら?それともどすを……」

「れいむはおさだからむれをまもるためなら“そういうこと”をするかくごはあるけど……どすにはどうやってもかてないよ……」


実際にドスを殺そうと考えたことは一度や二度ではない。
若くて無鉄砲だが優秀なまりさが片目を潰された時は、本気でその方法を考えた。
分かったのはドスは殺せないだろうという事。
どんなに楽観的に考えても群れの大半は犠牲にして相打ちがやっと。
ドスは強い。すこし身体を動かしただけでれいむなど潰されてしまうだろう。
暗殺、奇襲をしようにも一撃で殺す方法が無いのだ。
群れの皆全員で棒をくわえて寝込みを襲っても、恐らく大量の体内餡に守られた中枢餡を刺し貫く事は出来ない。
相手は寝返りでこちらを全滅させられる、とてもそんな作戦は実行不可能だ。
ならばどうするか、と考えたところで名案などない。
ドスに命令されるまでもなく、草より美味しいものを常に皆探しているのだ。
それでも見つからないものをどう手に入れろというのか。


「はぁぁぁぁ…………」

「れいむ、やくにたたないぱちぇをゆるしてちょうだい」

「そんなことないよ、ぱちゅりーがこうやっていっしょになやんでくれるかられいむはがんばれるんだよ」


嘘ではない、ぱちゅりーの存在はれいむにとって一番のゆっくりだ。
ただ最近は解決できない問題が多すぎる。
どうにも出来ないまま問題だけが積み重なって光を遮るせいで、どうしても暗くなる。
ぱちゅりーに心配をかけているのはわかるが、長としてこればっかりは諦めるわけにはいかない。
だからまた、やっぱりれいむは長い長いため息をつくのだった。









「ゆぅ!やっとおうちについたね!ありすだいじょうぶ!?さむくない!?」

「ありがとうどす。あなたがやさしくすりすりしてくれるおかげであたたかいわ」


地面を掘り、枝を何本も何本も積み重ねて屋根と壁を作り、ドスが何日もかけて作り上げた群れで一番立派なおうち。
柔らかな草のベッドも、室内を暖める為に入口にお帽子を置くのもみんなみんなありすのためだ。
ありすが愛しい、好き好きでたまらない。
一日中愛を囁いたって自分の思いの序章すら語れない。


「じゃあさっそくごはんにしようねありす!このなかからすきなものをえらんでねっ!
 どすはのこったやつでいいからね!すきなだけとっていいんだよ!」

「うれしいけど……どす、やっぱりみんなにあつめてもらうのはもうやめにしましょう?
 ふゆさんがきて、かりはもっともっとたいへんになってしまうわ」

「ゆぅぅぅ!!ありすはやさしすぎるよぉぉぉ!!どすもっとありすのことすきになっちゃうよぉぉぉぉ!!
 でもねありす!ありすはせかいいちのびゆっくりだし、どすはどすだからね。
 ほかのゆっくりがごはんをあつめるのはとうぜん!なんだよ!」


数えるのも馬鹿らしいくらい何度も同じやりとりがあった。
初めてドスから、他のゆっくりに代わりに狩をさせると聞いたとき、ありすはもちろん反対したのだ。
だがドスの答えは決まってありすは優しすぎるの一言。
どんなにしつこくありすが食い下がっても、ニコニコ笑いながら惚れ直しただの、そんなありすが大好きだ、としか答えない。
いっそ『どうしてそんこというの!?』と怒鳴られた方がまだ望みがある。
どんなに他のゆっくりの苦労や、助け合いの精神、恐怖での支配の悪を説いても、返ってくるのはただ求愛の言葉だけなのだ。
ありすは少し怖くなった。
もちろんドスのことは愛している。
ただドスになってしまった事で姿だけではなく、中身も確実に変わってしまった。
ドスになる前は少々お調子者だったものの、長に敬意を払っていたし、群れのみんなにも優しかった。
それがドスになって、自分を特別だと思うようになり、他者を踏みにじっても許されると考えるようになってしまった。
ありすはそう考えている。そして――――あの事件が起こった。


「ゆゆんぅ?ありす、そんなちょっとでいいの?もしかしてどこかぐあいが……」

「もう、しんぱいしすぎよどす。
 とかいはなれでぃがおでぶちゃんになるわけにはいかないでしょ?
 それにあなたがくいしんぼうなのは、ありすがいちばんしってるのよ?」

「ゆふふっ!ありすはさいっこうのおくさんだね!どすはしあわせものだよぉぉっ!」


『ドスだからって何をしてもいいなんて間違っている!』『みんなの大事なご飯さんを奪うなんてゲスだ!』
ドスのおくちよりも小さな若いまりさは確かにそう叫んだ。
そしてドスの手によっておめめを奪われ、顔は歪に陥没し、おうちに閉じこもるようになった。
それは本来ならありすが言わなければならない台詞のはずだ。
ありすはドスの妻なのだから。
だがもう既にドスは大事な群れの仲間を傷つけてしまった。
どんなにありすが謝ったとしてもまりさの片目は治らないし、二度と妻のれいむはありすと口をきいてはくれないだろう。
全てはありすが強く制止できなかったばかりか、あまつさえ略奪されたご飯でお腹を満たし、ドスを改心させられなかったせいだ。
罪悪感を覚えていながら、それでも元は優しいまりさだからいつか思い直してくれるはずだなんて誤魔化して、手遅れになった。
今だって後悔しているつもりになって自分を慰めているだけ。
良心の呵責に耐えかね、聞き入れられないとわかっている説得をするのも自分のため。
――――ありすは、卑怯だ。


「…………こんなんだから、おねーさんはありすをすてたのよ……」

「ゆぇ?ありすなにかいってってぇえ!?ありすぅぅ!!どうしてないてるのぉぉぉぉっ!?」

「……うふふ、ごめんなさいね。どすとたべるごはんさんがおいしくて、しあわせだなーっておもって」

「あ、ありすぅうううううううう!!うれしいよぉおおおおお!!どすもないちゃうよぉぉぉぉっ!!」


そしてありすは微笑みを顔に貼り付けながら、今日も食事を終えるのだった。









翌日の朝早く、広場には群れの狩担当のゆっくりが徐々に集まっていた。
とりあえず一番に解決すべき問題は食料だ。
ドスの事もある。
皆で協力し食べ物の供給を増やさなければ冬は越せない。


「れいむ……だめだったばあいのことなんて、かんがえてたらきりがないわ」

「ゆはは、ぱちゅりーにはおみとおしなんだね」


ぱちゅりーの慰めに、あいまいに笑ってれいむは返答する。
この優しくて聡明な妻だけではなく、群れのみんなはなんの疑いもなく自分を長と呼んでくれる。
だからせめて、彼らの最低限の生活だけは保障してやりたい。


「そうね、ぱちぇはあなたのことならなんでもしっているわ。
 だから、それでもあなたがなやんでしまうこともね」

「うん……やっぱりね。れいむはみんなをしあわせにできなくても、それでもみんなにいきてほしいんだよ」

「ええそうね、だからあなたがおさにえらばれたんですものね……」


ぱちゅりーの呟きもほとんど聞こえていないれいむ。食料を増やす方法を必死で考えている。
こうなったらキノコを――――無理だ、危険が大きすぎる。
キノコは危険だと何世代も前から伝えられていた。
しかし他に迷惑さえかけなければ基本的に自由な掟は、キノコを食べる事を禁じてはいない。
そしてれいむが長になってすぐ、大量のキノコが生えている場所が見つかった事があった。
皆が戸惑うなか二匹のゆっくりが飢えに負け口にしたが、奇妙な事に結果が極端に分かれたのだ。
どう考えても同じにしか見えないキノコを食べたはずなのに、しばらくして片方は苦しんで死に、片方は翌日もケロリとしていた。
ぱちゅりーが言うにはどうも違う種類のキノコだったようだが、れいむには全く区別がつかなかった。
味は美味しいらしいのだ、毒であろうとも。
それはしあわせしあわせと一心不乱に食べていた二匹の姿が証明している。
ただその後すぐれいむがキノコを採ることを禁止したが、反対するゆっくりは皆無だった。
なぜなら同時に彼らはしっかりと目に焼き付けていたから。
皮がボロボロと崩れ落ち、痛い痛いと叫びながらそこらじゅうに抉れるほど身体を擦りつけ、どろりと餡子を吐き出した犠牲者を。


「ねぇれいむ。ちからをあわせるために、みんなにあつまってもらったのでしょう?」

「うん、そうなんだけど……ぐたいてきにみんなになにをしてもらえばいいのか……わからなくて……」

「たすけてもらいましょうよ」

「ゆぇ?」


一瞬だけおちびちゃんのような表情になったれいむが顔を上げる。
ぱちゅりーは母親のように優しく言葉を送った。


「れいむがみんなをたすけたいとおもっているのはしってるわ。
 でもみんなだってれいむを、いいえ。れいむだけじゃないわ。
 みんながみんなをたすけたいっておもってるはずよ」

「…………そう……なの……かな……?」

「あたりまえじゃない」


そういってぱちゅりーは目一杯優しく微笑む。


「だってれいむ、あなたのむれなんですもの」

「あ…………ははは…………ゆっぐっ、ゆっ」


スルスルと無意識の涙が素早くれいむの頬を伝い地面へと向かう。
じっくりとぱちゅりーの言葉をかみ締めて、そのまま食いしばる必要があった。
そうしないとこのまま泣き崩れてしまいそうだったから。
そっと頭を撫でるぱちゅりーの暖かさに、益々れいむの涙腺は緩んでいく。
五分、れいむは無言でその場に座り込んで動かなかった。
その間も何よりも大切な暖かさは寄り添ってくれていた。


「ぱちゅりー、ありがっ、どっ!」

「……むきゅ、おれいをいわれることはしてないはずだけど?」

「ゆっ、ははっ、はっ!――――ぱちゅりー」

「ええ」

「れいむ、みんなにたすけてもらうよ」


立ち上がって真っ直ぐ広場に進んでいく。
れいむに名案は無いが、代わりにこれだけ多くの仲間がいるのだ。
すっかり長になったれいむが、大きく息を吸い込み、広場の中心を割るような挨拶を響かせた。


「みんな!ゆっくりおはよう!」

「お、おはようおさ!きょうはげんきだね!」


少し戸惑った挨拶が返ってくる。
遅れてぱちゅりーが挨拶し、集まってくれた礼を述べる。
とはいえ全員が集められた理由には心当たりがある。
昨日のドスの様子や、最近の食卓事情を考えればおちびちゃんですら今年の越冬がどうなるか分かる。
重要なのは長が自分達に何をさせるのか、だ。


「みんな!さいきんかりでとれるごはんさんがすくないっていうのは…………れいむがいうまでもないよね」

「……………」


皆一様に目を伏せる。
それが彼らにとって最も直視したくない問題だったから。


「だからきょうはね!みんなでいっしょにかりにいこうとおもうよ!」

「ゆ……?」

「お、おさ!それはどういうことなのぜ!?」


すっとぱちゅりーがれいむの横に立つ。
少し混乱していた皆がぱちゅりにー注目する。


「むきゅ、いつもはみなばらばらにかりをしているわよね?」

「う、うん。それは……そうなのぜ」

「だからね、いまからみんなで、いっしょに、おなじばしょを、かりしようとおもうの」

「みんなでいっしょに……」


広場がざわめく。
夫婦で狩をすることすら珍しいのに、こんな大勢で狩をするなんてどういう事なんだろうか。
動揺を見回してれいむが続ける。


「もうみんながばらばらじゃだめなんだよ!みんできょうりょくしないと、だれかがしんじゃうんだよっ!!
 だからみんな…………!れいむを………………れいむをたすけてください」

「おっ、おさ!?」

「れいむ……」



れいむが深く深く頭を下げる。
広場にいるゆっくりが全員目を疑った。
成体ゆっくり、それも長が地面を髪の毛で掃く様に懇願している。


「お、おさ!やめてね!みんなでかりばにいくんでしょ!?そ、それくらいならみんなだいじょうぶだよね?」

「ゆ、ゆん!そうなのぜ!で、でもだからってごはんさんはみつかるのぜ……?」

「わかんないけど、でもためしてみたいんだよ」

「きょうはもちろんこのままぱちぇもいくわ。だからだいじょうぶ。きっと、ちからをあわせればゆっくりできるわ」


そしてまた彼らは気づいた。
ぱちゅりーがここまで積極的に話しているのを見るのは初めてだ。
おちびちゃんの頃から物知りで、れいむを影で支えている事は皆が知っているが、
あまり外では見かけないし、間違っても率先して他を引っ張るタイプではない。
そんなぱちゅりーまで同行すると言っているのだから、ここで異を唱えるものがいようはずもなかった。


「それじゃぁ、みんないこう!」

「ゆん!」

「わかったのぜおさ」


そうして群れが誕生して以来恐らく初、十数匹という集団での狩が実現したのだった。











結果としてれいむとぱちゅりーの提案は正解だったといっていいだろう。
少し高い位置にある葉や木の実も、どこからか協力して足場を運んでくれば手が届いた。
また大勢ならば道が確立していない場所へも進んでいける。
単独だと見慣れない道を進み、帰れなくなるのが怖いが、これだけいれば迷う事はない。
それでもぱちゅりーの指示に従い、足元を確認しながら慎重に進んでいく。


「ゆっ、お、おさ!まりさはこっちのほうにきたことはないのぜ!」

「まりさもないのぜ!」

「ちぇんもだよー!こっちにはまだたくさんのごはんさんがありそうだよー!」

「うん、そうだね!でもみんな!だれかいっぴきでもけがしたらそこでひきかえすからね!ゆっくりちゅういしてね!」

「ゆっくりりかいしたのぜ!」


すこし開けた場所に出たのでここを基点にして周囲の安全を確保する。
少しの段差が隠れているだけで命取りだ。
れいむは手付かずの緑の葉よりも先に、危険を取り除く事を優先させる。
ただ頼もしい一家の大黒柱達は、早くこの場所で狩をしたくてたまらないようだ。
それでも抜け駆けするゆっくりがいないのは、れいむとぱちゅりーがどんなに群れの事を想っているかが、
その一挙一動に顕著に現れているからだろう。
普段から狩をしているわけでもなく、また種としてどうしても体力の低いぱちゅりーが、一言も弱音を吐かずに的確に指示を出している。
れいむは誰よりも動き回り、誰よりも周囲を警戒し、そして誰よりも食料を望んでいた。
その二匹を差し置いて勝手な行動をとるようなゆっくりは、この群れにはいない。


「ゆ!あなさんとかはないみたいだね!じゃぁみんな!ゆっくりたべられるものをさがしてね!
 なんどもいうけどぜったいはなれちゃだめだよ!それにあしもとのかくにんだけはぜったいにわすれないでね!」

「ゆっくりりかいしたのぜ!」

「すごいよー!ここにはまだまだたくさんくささんがあったんだねー!」

「むきゅ、ちぇん!はしっちゃだめよ!」


れいむとぱちゅりーはさすがに疲労を自覚した。
ここまで怪我ゆんが出なくて本当に良かった。
群れでも一番の働き手達がここにいるのだ。
彼らは群れの生命線だ。もしもの事があってはならないと、ずっと気を張り詰めている。
もちろんそれはまだ緩めてはいない。
ただリスクを負った価値はあったようだ。あちこちから嬉しそうな声が聞こえてくる。


「ゆゆっ!このはっぱ!おちびがだいすきなのぜ!ほら!こっちにもあるのぜ!」

「ひさしぶりにおぼうしがぱんぱんなんだねー!わかるよー」


考えてみれば、致命的な事故でも起こればまとめて死んでしまう危険はあるが、
通常時なら一匹で行動するよりもよっぽど安全ではないか。
これからは定期的にまとまって狩をしてもいいかもしれない。
毎回うまくいくとはもちろん思っていないが、悪い考えではないと思う。


「まずはここをあたらしいかりばにするために、みちさんをしっかりせいびしないといけないわ」

「ゆ、そのとおりだねぱちゅりー。めじるしとかもおいたほうがいいよね」

「おさ、おさ!たくさんあつまったのぜ!これならどすにもたくさんわたせるのぜ!」

「うん、みんなががんばってくれたおかげだよ」

「これからはまいにちみんなでかりがしたいんだねー」

「そうね、ぱちぇたちもそうかんがえていたところよ」


れいむの連れてきたゆっくり達は、久しぶりの膨れたお飾りの感触に顔を綻ばせていた。
彼らの笑顔を見るのも久しぶりなら、自分が解決策や対策といった心配事以外を考えていたのも久しぶりだ。
これからの事、今回のような狩場がさらに見つかるかもしれないという少しの希望。
犠牲者がほとんど出ない越冬も、夢ではないのかもしれない。


「むきゅ、さぁみんなきょうはもうかえりましょう。すこしでもくらくなるまえにむれにかえりたいわ!」

「かえるときもきをぬかないでね!」

「ゆん!」


れいむの注意もあまり緊張感を取り戻せなかった。
それほど久々の大漁は嬉しい成果だった。
それがわからないでもないので、せめてれいむだけは警戒を怠らないようにする。
ただぱちゅりーが心配だ。
今日は確実にゆん生で一番運動した日になるだろう。
さすがに口数も減っている。
そんなれいむの視線に気づいたぱちゅりーが、目元の疲労を隠せないながらも不器用に笑う。


「ふふっ、しんぱいしないで。うまくいったあとのくたくたなら、ぜんぜんかんげいよ?」

「ぱちゅりー…………きょうはほんとうにありがとう。
 ぱちゅりーがはげましてくれたから、れいむはみんなをつれてくるけっしんができたんだよ」

「むっきゅ、れいむはしらないかもしれないけれど、ぱちぇはこのむれのおさのつまなのよ?
 むれのためにがんばるのはあたりまえだわ」

「ゆっはっは、もちろんいちどもわすれたことないよ!」

「うふふ」


れいむこの誰よりも優しくて賢いぱちゅりーと結婚できた事を改めて幸せに思う。
彼女がいる限り長でいられる、信じてくれるならいつまでも自信をなくさずにいられる。
無意識にれいむはもみあげをぱちゅりーのそれに絡めていた。
ぱちゅりーは一瞬驚いた顔をしたが、そのまま拒まない。
群れに帰宅する直前、他のゆっくりから指摘されるまで二匹の髪の毛は繋がれていた。











広場にどっぷりと構えるドスの目の前には、昨日の数倍の量の食料が盛られていた。
横にいるありすも驚いている。


「これだけあればどすもおなかいっぱいになれるよね?」

「ゆぐっ、ま、まぁそうだね!おまえたちにはしてはがんばったとおもうよ!」

「すごいわ!…………れいむ!そしてみんな!ほんとうに……ありがとう……!!」

「ゆゆっ!?あ、ありす!どすだってほんきになればこれくらいすぐあつめられるんだよ!」


ドスの焦った顔が面白い。
いつも脅すかいばるかしかしないドスの滑稽な様子に、周りのゆっくり達は心の中で笑う。
ありすがれいむ達を褒めたのが、よっぽど悔しかったのだろう。


「ええ、そうね。どすはとってもかりじょうずですものね」

「あ、ありすぅ!とってもゆっくりしてるよぉぉ……」


ぐねぐねとその巨体を揺らすドスを見て、ホッと息をつくれいむ。
新たな狩場はまだそれなりに潤沢だ。
それもいつまで続くか分からないが。


「ゆっ!ああ、そういえばおさ!」

「ゆん?ど、どうしたのどす?」

「さっき、どすのおといれのちかくでおかしなにんげんさんをみたよ!」

「――――――ゆぇ?」


れいむの内部が凍りついたように冷却される。体内餡がジクジクと不安な感触を伝えてくる。
しっかりと聞き取れたのだが、間違いであってくれと願いながられいむが聞き返した。


「へ、へんなにんげんさん!?ねぇどす!へんなにんげんさんにあったのっ!?」

「ゆ、ゆん!そうだよ、どすがうんうんしてるところをみてたんだよ!しつれいなにんげんさんだよね!」

「えっ!?みつかっちゃったのっ!?」


れいむがグワッとドスに詰め寄る。
ドスのトイレは群れから少し離れた所にある。
トイレといってもただ決まった場所に排泄しているだけで、手が加えられているわけではない。
ドスは大きくそして大食いだ。となればもちろん出す量も通常のゆっくりとは比べ物にならない。
量が多ければ当然臭いもそれに比例して強くなる。
だからドスは毎回悪臭が届かない位置までいってから排泄するのだ。
群れの仲間のためというよりも、自分が不快だからだろうが。


「ゆ、ゆっと、な、なんなのおさ!おおきなこえを――――」

「いいからっ!そのにんげんさんはなにかいってたっ!?ねぇっ!」

「な、なんにもいってないよっ!!すぐにどっかにいっちゃったよっ!
 そ、それににんげんさんはどすよりぜんぜんちいさかったよ?
 そんなにこわがらなくてもだいじょうぶだよ!」

「だめにきまってるでしょっ!!」

「ゆ、ゆぐっ!!」


れいむのあまりの剣幕にさすがのドスも多少怯む。
一応人間に関わってしまった事への罪悪感はあるらしい。
ただれいむはそれどころではない。


「ど、どうしようぱちゅりー……!」

「ええ、すこしこまったわね……」


人間にドスの存在が知しられてしまった。彼らはドスをどう認識するのだろうか。
どうでもいいと無視してくれるならいいが、少しでも脅威に思ったのならマズイ事になる。
鬱陶しい程度の評価ならまだしも、大勢で駆除に来るほど危険視したのなら――――群れは終わりだ。


「ねぇどす?にんげんさんになにかしたわけじゃないのよね?」

「だからにんげんさんはさっさとどっかにいっちゃったんだよっ!どすはなんにもしてないっていってるでしょ!」

「どす、おちついて!おさとぱちゅりーにきょうりょくしてあげてちょうだい」

「ゆぐぅ……ありすがそういうなら……」

「いいえ、にんげんさんになにもしてないならそれでいいの……」


過去にこのような前例はもちろんない、そもそも群れにドスがいたなんて話は聞いた事がない。
だからどうすればいいのか分からない。
ただ、人間は山のゆっくりにはほとんど無関心だ。
今までも野菜に近づき潰されたゆっくりがいるが、山にまで入って駆除しようとする人間はいなかった。
ただドスとなると――――――


「そんなことよりもおさ!」

「そんなことってどす…………これはたいへんなことなんだよ!?」

「それはおさのしごとでしょ!それよりもどすのえっとうようのしょくりょうはどれくらいあつまってるの?」

「――――ゆは?」

「え……?」


れいむだけなくぱちゅりー、そしてありすも驚いてドスを見上げる。


「な、なにいって、え?」


毎日ドスに収めなければいけない食料の調達だけでも重すぎる負担なのだ。
しかも越冬用の食料ともなれば、今まで渡していた量の比ではない。
一日分から単純に考えて、通常の家族が用意している量の5倍は必要だろう。
――――――それを自分達に集めろというのか。
さすがにそこまで要求されるとは思っていなかった。
毎日大量に渡していたのだ。てっきりそこから越冬用の食料を貯蓄していると思っていたのに。


「ま、まってどす!えっとうようのごはんならおうちにあるじゃないの!
 もらったごはんさんからあまったものを、ちゃんとのこしてあるわ!しっているでしょう?」

「ゆっ!ありすはしっかりもののおくさんだからね!もちろんしってるよ!」


ありすが慌ててドスを止める。
しっかりとありすは越冬の準備をしていたようで、れいむは少し安著する。
ただありすが思っている以上に、ドスはありすを異常なほど愛していたのだ。


「だけどあれだけじゃまいにちおなかいっぱいにはならないでしょ!
 どすはありすにつらいおもいをしてほしくないよ!
 だからおさ!もっとむれのやつらにごはんさんをもってくるようにめいれいしてね!」

「だ、だいじょうぶよどす!ありすはあれでもじゅうぶんだし、それにすこしくらいがまんできるわ!」

「ゆっ、だめだよありす!ゆっくりしてるありすはがまんなんてしなくていいんだよ!」


満面の笑みをありすに向けるドス。
ありすが何を言ってもそれはありすへのドスの評価を上げるだけで、ドスの考えを変えることは出来ない。
全くいつもと同じだ。
もう永遠に変わらないのかもしれない。


「む、むりだよどすっ!きょうだってみんなはとってもがんばってくれたんだよっ!!
 えっとうようのしょくりょうなんて、とてもあつめらいよっ!」

「はぁぁぁぁっ!?なにいってるのおさぁぁっ!!
 どすがたりないっていってるんだからあつめるのはとうぜんでしょぉっ!?」

「お、おねがいだよどすー!ちぇんたちはもうげんかいなんだよー!
 これいじょうごはんさんをわたさなきゃいけないなら、ちぇんたちはえっとうできないよー!」

「そうなのぜ、だ、だからいつものりょうでがまんしてほしいのぜ!」


耐え切れずにまわりのゆっくり達もドスへ不満を放つ。
当然だ、命がかかっているのだから。
夫婦愛は結構だがそれでこちらの生活を脅かされてはたまらない。
しかしもちろんそんな苦情でドスが考え直すはずもなかった。


「だったらもっとがんばればいいでしょぉぉぉっ!?どすがおまえたちのおうちでかりをしてもいいんだよぉぉっ!?」

「ゆひっ!そ、それはだめなのぜぇっ!おうちのしょくりょうはわたせないのぜぇっ!」

「じゃぁはやくえっとうようのしょくりょうをもってこいっ!!さっさとかりにいけぇぇっ!!」

「――――いいかげんにするのぜっ!!」


ドスに負けないほどの剣幕で叫んだのは、いつのまにそこにいたのか、片目をドスに奪われたまりさだった。
硬直するゆっくり達の間を通り、ドスを睨みつけながら近づいて行く。


「そんなにたべたきゃじぶんでかりをすればいいのぜっ!
 どすのくせにじぶんのぶんすらよういできないのぜ!?
 おまえみたいなゆっくりしてな――――――ゆべげっぇ!」

「――――ゆっ、ゆわあああああああああああああ!!」

「え……ど……す……?うそ……よね……」


悲鳴が広場を飛び回る。
ドスの大きなあんよのしたには、全てを奪われたまりさがいる。
あまりの事にれいむも呆然と立ち尽くし、混乱は収まらない。


「なまいきなんだよぉぉっ!!よわいくせにぃぃぃ!!さいきょうのどすにさからうなぁぁぁぁっ!!」

「ど……す…………」


力を誇示するドスの横で顔を伏せ、じわじわと溢れてくる涙を止めずにありすは泣いた。
決定的な亀裂がありすの心に入った。
あの優しかったまりさが、群れの仲間を殺した。
こんな風に誰かを踏みにじってまでゆっくりしようとする性格では決してなかったのに。
原因はありすだ、ドスだって何度もありすのためだと言っていた。
それなのにありすは止められなかった。機会はいくらでもあったのに。
そしてついに殺してしまった、殺させてしまった。


「ありすっ!!どすはつまをかなしませるようなまねはぜったいしないよ!
 だからえっとうのしんぱいなんてしないでねっ!」


悪影響しか与えないような存在を妻と呼べるのだろうか。
誑かし、堕落させる。これではまるでおとぎ話に出てくる悪い魔女ではないか。
主人公を操って悪事を働かせる魔女、今のありすそのものだ。


「あ、ありすぅぅっ!?どうしてないてるのぉぉぉぉっ!?」

「……ゆっぐ、もう、もうやめましょう!ひっぐ、これじゃぁ、これじゃまるで……」

「やさしいにもげんどがあるよありすぅぅぅ!ありすとどすはとくべつなんだよっ!?
 だからほんとはもっともっとゆっくりしていいんだよぉぉっ!?だから、えっと、なかないでありすぅぅぅ!!」


怒りの表情から一転、どすはおろおろと限界まで身体を曲げてありすを覗き込む。
やはりありすの提案は何一つとしてドスの考えを変えられない。
もうありすは何も返さず、ただ悲しむ。


「お、おまえらのせいでありすがないちゃっただろぉぉっ!?
 ゆぐぅぅ!もうどすたちはかえるよっ!!あしたからはちゃんとえっとうようのごはんをよういしてねっ!!
 …………ありす、ゆっくりかえろうね?おうちにかえればゆっくりできるからね?」

「……あっ、どすっ!まてっ!」


呆けていたれいむが慌てて呼び止めるも、ドスは振り返らず、広場から嵐が去った。
後に残ったのは不安げに長を見つめるゆっくり達と、それに答えることの出来ないれいむとぱちゅりー。
殺されたまりさの妻のれいむが死体の側にいるのだが、恐ろしいほど無表情だ。
もしかしたら片目を無くしてから狩が出来なくなった夫を、疎ましく思っていたのかもしれない。
ただもちろんその事に触れるゆっくりはなく、無言でれいむが去ってしまった後には孤独な死体は放置された。
風が強く吹き、冷たさが本格的な冬の到来がまもなくであると山に住む者に警告する。
れいむは強く、もみあげで地面を殴った。

















「…………」


量だけ見れば豪華な食事中もれいむとぱちゅりーの間にほとんど会話はなかった。
れいむの頭の中では、今さっき起こったドスのゆっくり殺しの瞬間が繰り返し再生されている。
パキチャキと歯が立てる音だけがしばらく響き、そしてやっとれいむがしゃべった。


「…………もう、にげるしかないのかな」

「それは……このばしょをすてるってことかしら?」

「ゆん……みんなをつれて、さ」


ドスの目を盗んでこの場所を脱出することだけなら難しくない。
ドスは食料を受け取る時以外はほとんどおうちから出てこない。
それにその大きなおうちも少し離れた場所にある。
こっそりと群れの皆を集めれば、気づかれる事はないだろう。


「むっきゅ、ぱちぇがしてきしたほうがいいのかしら?」

「ゆははっ、ゆん、そうだね。どこにもいくばしょなんてないよね」

「そうね。すこし…………むずかしいわね」


アテもないのに逃げようと呼びかけても、賛同してくれるゆっくりは少ないだろう。
それにせっかく貯めた越冬用の食料を輸送する手段も無い。
とても現実的な計画ではない。ドスよりもこの現実と長の責任から逃げたいれいむの愚痴だった。


「でももうほかにできることなんてないよ。どすのえっとうようのしょくりょうなんてあつめられるわけないよ……」

「そうね、わたしたちだけであつめるのはむり……ね。
 それこそ……にんげんさんにきょうりょくでもしてもらわないとむりね」

「にんげんさん…………か。おやさいさんがもらえればなぁ…………」

「むっきゅ、そうね。それならいままでためたごはんさんをどすにぜんぶあげてもいいわね」

「ゆはははは」


れいむが薄く笑う。
人間さんに頼ろうなんて考えるなんてかなり追い込まれているなぁ、なんてどこか他人事のように思う。
どんなに困っている事を説明したとしても助けてはくれない。
そんなこと分かりきっているのに。
いっその事お願いに言って、一思いに潰されたいくらいだ。
こうやって悩んでいるだけで、多くの命を預かっている重圧によって先に潰されてしまいそうだから。


「ねぇれいむ。もう……ぱちぇはどすをどうにかするしかないとおもうわ」

「…………ころすってことだね」

「…………」


ぱちゅりーが無言で頷く。その目には深い決意が宿っている。
ドス殺し、何度も何度もれいむは悩み、結局決行することはなかった。
仮にも群れの一員を殺す事への戸惑いなどという感情が原因なのではない。
ドスは許されぬ罪を犯した。群れの一員を感情任せに踏み潰したのだ。
群れの掟も他ゆんに危害を加えたものへの制裁を許している。
死刑は重過ぎる罰ではない。問題はドスをどうやって処刑すればいいのかという点だ。


「どすは、つよいよね」

「むっきゅ、とってもたくさんつよいわね」

「ゆん、きのこのどくとかはきくのかなぁ…………?」

「どうかしら。ただあまりふかくじつなてはつかえないわ」


そもそもどのキノコが毒を持っているのか、ぱちゅりーでも判断出来ないのだ。
それが分かるのならキノコは群れの食卓にもっと頻繁に並んでいる。


「もう、みんなでたたかうしかないのかな」

「れいむ、それは…………」

「わかってるよ、たくさんしんじゃうかもしれないって。
 でもためたごはんさんをわたしたら、たくさんのかぞくがえっとうできなくなっちゃう。
 だからって、わたさなかったらどっちみちたたかうことになっちゃうよ……」

「そう、ね。このままじゃちかいうちにどすはあばれるでしょうから、ね」


れいむは決意しかけているが、それでもぱちゅりーは迷っていた。
ドスの強さの源である異常なまでの身体の大きさは、そのまま鎧となって一番の急所である中枢餡を守る。
医者の真似事をする事もあるぱちゅりーは人間が決めた呼び名は知らなくても、その急所が身体の中心にある事を知っている。
あの巨体の中心まで貫けるほどの長さと強度をもった枝が用意できたとしても、一匹で扱うのは厳しいだろう。
数匹で協力するとなると素早い動きは出来ない。
動きを止めたところに皆で枝を押し込む事になるが、どうやってそこまで追い込めばいいというのだろうか。
結局全員で立ち向かうことになる。
いっそこのまま夜襲でも――――――


「しつれいするわね、おさ、ぱちゅりー」

「あ、ありす!どうして!」

「……いらっしゃいありす、たぶんくるとはおもっていたわ」


驚くれいむと静かにうなずくぱちゅりーの視線の先には、緊張したありすが立っていた。
ゆっくりと家の中へ入り、二匹の目の前に座る。


「――――どすのはなしをしていたのよね」

「ゆっ!そう……だよ……」

「せいかくにはどすをころすほうほうをかんがえていたのよ、ありす」

「ぱ、ぱちゅりー!」

「そう、やっぱり……もうだめなのね。
 …………ごめんなさい、あたりまえね。どすはとりかえしのつかないことを……してしまったんですものね」


まるで隠そうとしないぱちゅりーの発言にも、拍子抜けするほどありすは冷静だった。
れいむはてっきり泣きながら考え直すように懇願してくると思ったのだが。
ここへ来た時点で、彼女自身何か覚悟を決めてきたようだ。


「よくありすだけでこれたね」

「ええ、おさたちにあやまってくるっていったら、どすはなんかいもひきとめてきたけれど、さいごにはなっとくしてくれたわ。
 やっぱりさすがに――――ころしてしまったことはきにしているみたい」

「でもどすはきっとしょくりょうをよういしなかったらおこるわ。
 たくさんあばれて、そしてまただれかがしんでしまうでしょうね」

「どすはありすのはなしをたくさんきいてくれるけれど、いちばんたいせつなことはきいてくれないの。
 たぶん、ありすがなにもしらなかったころのままだとおもっているの。
 ありすはもうむれのゆっくりなのに…………まだじぶんではなにもできない、すてゆっくりだとおもっているのよ」


濁った目で笑うありすは、儚くそしてやはり美しかった。
ありすにはありすの苦悩があった事は確かだろう。
しかし、今はそんな事よりもなぜありすがここへ来たのかが問題だ。
ただ謝罪に来ただけならここで聞いた事は忘れて、ドスの機嫌を損ねぬうちに帰ってもらえばいい。
もし自分達を止めに来たというのなら、それは受け入れられない。
――――最悪、ありすを盾にしてもドスを倒す。
れいむとぱちゅりーはもうそこまで覚悟しているのだから。


「それでありすは…………なにしにきたの?」

「ありすだってみんなからさらにしょくりょうをうばうことが、どれほどざんこくなのかくらいわかるわ。
 ただ、それはどすだけじゃなくて、きょうまでとめられなかったありすにもせきにんがあるの……」

「いまはもう、そんなことはどうでもいいのよありす。
 ……だいじなのはいま、ぱちぇたちはどすをころそうとしているってことよ」

「わかってるわぱちゅりー、そんなこと……わかっているにきまってるじゃない……!」


これ以上、ドスが誰かを傷つける姿には耐えられない。
ドスが怒鳴り散らすたびに、一番深く傷がつくのは思い出の中の、優しかったまりさの姿だから。
いつか自分を責め続ける夜を越えられなくなった時、ありすはドスに決定的な言葉を叩きつける。
ドスは信じられないと嘆き、嘘だと否定し、それでも戻らないありすを最後には殺してしまうだろう。
そうなればもうドスの凶行は止まらない。さらに過激になり、怒りの矛先を群れの全員に向ける。
ありすが恐れる最悪のバットエンドだ。自分が死ぬ事はかまわない。
ドスがこうなった責任、その罰だというのなら受け入れる。
しかしせめて群れだけは守りたい。捨てられた自分を生かしてくれた群れを。
だからありすはここへ来た。


「…………きょうりょくしてくれるってことでいいんだね。どすをころすことに」

「ええ。ほんとうに…………ほかにてがないのなら」

「むきゅ、とつぜんにんげんさんがおやさいをたくさんきふしてくれたりしたら、どすとたたかうひつようはないわね」


冗談を言うときに“むきゅ”と一呼吸置くぱちゅりーのクセが、起こるはずのない奇跡だと教える。
それでもその奇跡にすがりたくなるほどありすは迷っている。
当然だ、愛しているのだドスを。愛していなければここまで心を痛めていない。
ただのまりさだったころに惹かれた優しさを覚えていなかったら、とっくにドスとの関係は崩壊している。
確かにその夫は変わってしまった。
他者を暴力と恐怖で支配するようになったが、それでもおうちの中では昔と変わらないすこし照れ屋な夫なのだ。
しかしこれ以上ありすが躊躇えば犠牲者は増えるばかり。


「ゆっくりかんがえなさい、ありす」

「…………ええ」


――――三匹の会議は長引いた。
やっとありすがおうちに戻った時には、ちょうど心配したドスが迎えに行くために出てきたところだった。
目が合いドスの嬉しそうな表情を見た瞬間、ありすは感情の激震に叫びだしそうになった。
裏切っているという罪の意識、群れのためだなんて言い訳を並べる卑怯な自分への怒り、そしてドスへの愛情。
それらを内部に押し留め、笑ってみせるありすは確かに魔女と呼ぶにふさわしい姿だった。










次の日の昼、群れの外れの、畑へと続く道の上にありすとれいむとぱちゅりーの三匹は立っていた。
寝不足が顔にありありと浮かんでいる。太陽に照らされた彼らの表情はそれでも暗かった。


「それじゃぁ、ほんとにいいんだねありす?」

「ええ、これだけはありすにやらせてほしいの」

「さいごにもういちどだけいうわね。
 ぱちぇはあなたが、にんげんさんにころされてしまうとおもうわ」

「わかっているわ」


これからありすは人間にお願いしにいくのだ。
もちろん人間にお願いを叶えてもらえたゆっくりなど、未だ一匹も存在しない。
全てがお願いした時点でその生命を終わらせている。
自殺行為と表現するよりも、単純に自殺なのだ。
群れの問題を常に憂慮してきたれいむとぱちゅりーは、なおさらそれを知っている。
だがもう止めない。これはもう決まった事なのだ。何よりありすが自分を生かせてくれと頼んだのだから。


「ありすがみんなのなかでいちばんにんげんさんとおはなししたことがあるし、あのはたけのにんげんさんのかおもおぼえているわ。
 …………それに、ありすなんてしんでしまっても……」

「ありす……それいじょういうとおこるわよ?」

「れいむはありすがしんだらかなしいよ!だからそんなこといわないでね!」

「ありがとう……ごめんなさい、わがままいってしまって」


しばし無言で見つめ合う。
これがこの世で最後の会話になるかもしれない。
危険性は多少違っても、三匹が今日命をかける事は変わらない。
ありすは頭の違和感を消すように身体を振ると、極めて明るく別れを告げた。


「それじゃ、おさにぱちゅりー!ありすはいってくるわね!」

「ありす!……むりそうだとおもったらにげてもいいからね!」

「ゆふふ、ありがとうおさ!だいじょうぶ、きっとうまくやるわ」


ありすは死ぬ気だ。少なくとも死にたいと思っている。
そうでなければ、こんな役目に志願するはずがない。
れいむもぱちゅりーもそれはよく分かっている。
だがそれを指摘したとしても、いつものように悲しく笑って誤魔化すだけだろう。


「ありす……くれぐれもきをつけて」

「ありがとうぱちゅりー、あなたもおさもきをつけてね」


そういってありすは山を下って行った。
れいむとぱちゅりーはその姿が見えなくなるまで見送る。
風で揺れる木々の葉は、もう後戻りは出来ない彼らに手を振っているかのようだった。








「た、たいへんだよぉぉぉぉぉ!!どすぅぅぅぅ!!」

「ゆぇっ!?な、なにっ!?」


ありすに誘われたお昼寝からドスが目を覚ますと、となりに愛しい伴侶の姿が無かった。
また長の家にでも行っているのだろうかと思い、ムクムクと不快感が膨れた。
自分も出向いて長に少し文句でも言ってやろうと思っていた所に、突然異常なほど焦ったまりさが飛び込んできたのだ。


「なんなのっ!?どすたちのいえに――――」

「あ、ありすがっ!に、にんげんさんに!おやさいをもらいにいってころされちゃったってっ!
 おさがっ!!だからどすをよんできてっていわれてっ!!あ、ありすがぁぁっ!!」

「――――――は?ゆ、はぁああああああああああ!?」


頭の中が一気にクリアになった。
バクンバクンと中枢餡が小さな爆発を繰り返す。
ありすが人間に殺された?長が呼んでいる?
視界がぐるぐると回る。


「いまおさたちとみんなで!ありすの、し、したいをはこんでるのぜ!!
 はやくっ!!こっちだよぉぉぉぉっ!!」

「ゆっ、ちょっとまっでっ!ゆぐぅっ!!うぐぐぐぐぐぐぐぅぅぅ!!」


まりさがおさげで方向を示し、そのまま跳ねて行く。
慌てて混乱したままにドスも急ぐ。
全ての動きが遅く感じる、周りが色を失う。
激しい緊張と恐怖で呼吸が細く速くなる。
違う、間違いに決まっている、ありすが死ぬわけがない。
ありすは特別な存在なんだ、人間なんかが殺せるはずはない。


「ゆっ!どすっ!!あ、ありすがっ!」

「どけぇぇっ!!」


何かを説明しようとする長の姿は全く認識されなかった。
ドスの形相に驚いたゆっくり達が飛び退った中心、そこに全意識が集中していたから。
ぐちゃぐちゃになった餡子の塊と、それに混じった金の髪。
そしてその上にある―――――見間違えるはずのない世界一美しい、ありすのお飾り。


「うぞだああああああああああああああああああ!!!!!!!」


ありすのお飾りをおさげで握り締め、麓まで響くほどの声でドスは号泣した。
どんなに否定しても死臭がその否定をさらに否定する。
死を肯定する臭いに包まれ、滝のような涙はさらに勢いを増す。


「なんでっ!!どうじでありずがあああああああっっ!!いやだぁあああああああ!!」


暴れ狂うドスの身体に周りのゆっくりがはねられそうになり、慌てて距離を取る。
転がるドスは生まれたばかりのおちびちゃんのように、理性なく叫び泣き続ける。
ありすが死んだ、死んでしまった。もう二度と会えない。


「ゆぼぉおおおおおおおおおおお!!!あでぃずぅうううううううううう!!」


何か言いかけていたれいむも、諦めて下がる。
お帽子が潰れようと木にぶつかろうとドスは止まらなかった。
たっぷり十分ほどそれは続き、数回地面に額を叩き付け、しゃっくりのような泣き方に変化する。
そこにれいむがこの悲劇の原因を語る。


「どす!ありすはね!さいきんいらいらしていたどすのためにおやさいさんをもらいにいったんだよ!
 おやさいがあれば!きっとどすもみんなからごはんをとらないでくれるって!
 だからありすは!にんげんさんのところへっ!!」

「ひっぐ……どすのだめに……?おやざいざん……?
 な、なんでぇぇぇぇっ!?ごはんなんて、だって、ありずぅうううううううううう!!」

「それなのにありすがすこしおねがいしただけで!にんげんは……ありすを……ありすをころしちゃったんだよっ!!
 それだけじゃなくて、れいむたちにっ!ありすのしたいをぉぉっ!!なげてきたっんっだ、よぉぉぉぉっ!!」

「ふ、ふっざげるなぁああああああああああああ!!ごろじでやるぅうううう!!ごろじでやるううううううううううう!!」


怒りが、今にも中から皮を破裂させるほどの怒りが、抑えられない。
頭がガンガンとうるさい、狂ってしまいそうだ。
ありすをそんな、そんなアリよりもちっぽけな理由で殺した人間。
今すぐに踏み潰して粉々のぐちゃぐちゃにしてやる!うんうんと混ぜてトイレに捨ててやる!


「どごにいるんだぞのにんげんはぁぁぁっ!?ごろずぅううううううう!!ぜっだいどずがころずぅぅぅ!!」

「ちかくのはたけさんだよっ!!たぶんまだそこにいるよぉぉぉっ!!」

「ゆがぁあああああああああああああ!!!」


聞くや否や全力で畑まで進んでいく。
転がるような勢いで山を下るドスの目は真っ赤に血走り、噛み締めすぎた歯がギチギチと音を立てていた。
狂ってしまいそうな憤怒が責め立てる、殺せ、ありすの仇を討てと。
早く、今すぐ、今!


「ゆっだああああああああああああああ!!!」


畑が見えたが、中に人間はいない。
このまま突進して完全にぶち壊してやる。
そして出てきた人間はすぐには殺さない、後悔に後悔させ、痛めつくした後で、さらに痛めつけるのだ!


「ゆごぉおおおおおおおおおお!!!」


木々の間を抜けきり、それでも勢いを殺さないドス。


「ゆぅおぉらぁぁぁぁぁ――――ぶべぇぇぇっ!?」


畑へのラストスパートに踏ん張ったその怒りに煮えたぎる身体を、未だかつてない衝撃と痛みが襲った。
バチン!と水面を板で思いっきり殴りつけるような音が木々の間を通り抜け、一瞬遅れてドスの痛みで構成された悲鳴が後を追った。


「いっだぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!あああああああああああああ!!」

「……ほんとにきやがった」


一メートル弱のシャベルを使った完全な不意打ちフルスウィングは、ドスの怒りをに打ち砕き、全てを激痛で上書きした。
全身が発声器官となったかのようなドスの痛叫は、ビリビリと空気を揺らし山の鳥達を驚かせる。
青年は目を見開きおよそ一ヶ月分の尿を噴出させるドスにゆっくりと近づくと、
シャベルを振り上げ無防備なあんよに思いっきり突き刺し、縦に割った。


「あぎぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


ドスの絶叫はまったく意に介さず、そのままシャベルをぐりぐりと動かし、あんよを破壊する。
そのたびにドスの奏でる音色は変わるが、その本質は何も変わらない。文字通り身を裂かれる痛みだ。
あんよをズタズタにされてしまっては、逃げる事もできない。
だがそもそも完全に痛みに侵された思考回路は、自分が何をされているかすら把握できていない。
ただただ痛覚の処理に没頭し、多くの処理しきれないものが口から音となって飛び出していく。
――――――これがドスと人間のごく普通の力関係だった。


「っぎぃぎぎぃぎっぐぐっぐぐぐぎぎぎぎぎぎぃぃぃ!!」


全身が痛覚神経であり、なおかつ痛みに非常に弱いゆっくりにとって、
身体が大きくなる事は弱点がそのまま大きくなるのと同じなのだ。
どんなに中枢餡を守ろうと、堪えきれない痛みを受ければ、こうして発狂寸前でもがくのではまるで意味がない。
確かにか弱いゆっくりが相手なら巨大な身体は絶対的なアドバンテージだ。
ただどんなに大きくなっても痛がりは直らない。
だからこうしてあんよを奪い、暴れる事が出来なくしてしまえば通常のゆっくりと変わらない。


「ぎゃぐっ!!ひぎぐぅぃぃっ!!あぎぎぎぃぃっ!!ゆぎぃぃぃ!!」


さらに言えば、強大な身体はもともと少ない機動力を完全に奪う。
ゆっくりは自信の身長程度まで跳ねる事ができるが、ドスになるとそうはいかない。
ジャンプ力は同じく通常のゆっくりの身長ほどしかなく、またそう何度も跳ねられるわけでもない。
巨大な身体を運用するにはそれなりのエネルギーが必要なのだ。
だから普段の移動はずーりずーりと足を浮かさない方法を選ぶ。
当然スピードは出ない。巨大なかたつむりが這っているようなものなのだから。
その体重は確かに危険だが、人間が相手では気絶でもしていないいかぎり押し潰すのは難しい。


「やめべえええええぎゃああああああああああ!!ざざないぐぇぇえぇぇぇぇ!!いぎゃいぃいいいいい!!!」


とっくに致命傷と言っていいほどドスの身体は切り開かれている。
もうまともにもがく事さえ出来ないが、悲鳴だけは勢いを失わずにシャベルの動きに合わせて飛び出てくる。


「ぎぎゅっ!ぐぎぃいいいい!!やべぎっぇぇえぇぇぇぇっ!!」


人間からすれば――――弱いのだ、ドスは。
動きは遅く、素手で力いっぱい殴ればすぐに戦意を喪失する。
子供が遭遇したら確かに危険かもしれないが、そもそも子供が遭遇しても安全な野生動物のほうが圧倒的に少ない。
熊や猪や野犬のほうが、二メートルを超えるドスよりもよっぽど危険なのだ。
都市伝説や映画では、ドスはしばしばさながら神話の怪物のように扱われるが、現実はそうではない。
フィクションの中のドスは熱光線を放ち、時には姿を消し、驚異的な跳躍力を発揮する。
そのようなドスが存在したという記録はないし、少なくとも今青年に削られているドスにそんな力は無い。


「なんげぇぇぇぇっ!!なんでごんなごぉどぉぉぉっ!!おばえがっぁあああっ!!
 どずのありずをぎぃいだいぃいいいいいい!!があああああああああああああ!!」

「しぶてぇな」


半狂乱になって叫んでいたドスがやっと自分をシャベルで殴打する青年の存在に気づいた。
ありすを殺した人間を認識し怒りが復活するが、即座に激しい痛みに叩き潰される。
なぜこんな目にあわなければいけないのか分からない。
悪いのは誰がどう考えても人間の方だ。愛しいありすを残虐に殺した。
正義はドスにある。そんな簡単な事すらわからないというのか。


「あぎぃぃぃぃっ!!やべろぉぉぉぉっ!!ひぐぃいいいっ!!
 わるいのはぐぞにんげんのほうだろぉぉぉぉぉっ!?なのになんでどずにごんなごとずるのぉおおおっ!!」


流石に疲れたのか青年の乱打が止む。
体中にある裂け目から餡子が漏れているが、ドスはまだ生きている。
新たな痛みを突き刺されなくなったため、思考力が少しだけ回復する。
ただズタズタの身体は動こうと意識するたびに、それが不可能であることを痛みで伝える。


「どずはぜいぎなんだよぉぉぉ!!ぞのどずをどうじでぇぇおごぉおおおおおおおっ!!
 やべっ!!あばあああっっ!!はがぁあぁぁっぁあっ!どずのはがぁあぁぁぁぁぁっ!!」


これだけ刺し裂いてもまだ意識のあるドスに、うんざりした様子で青年はシャベルを再び振りかぶると、
そのまま柄の部分でドスの顔面を殴りつける。
鋭い先端で掘りぬいていた時の感触とは違い、軽い粉砕感と発泡スチロールを殴るような抵抗感が伝わってくる。
立て続けに四発打ち込み、醜く歪んだ顔を陥没させる。


「いっしょっ!」

「ぼおごごぉおおおおおおぉぉぉっ……!!……おごぉ……かっ、かかっへぇ……」


トドメとばかりに上半身を振り子のようにしならせて叩き込んだ一撃は、ドスの奥深くまで食い込んだ。
くひんくひんと痙攣するドス、ドロリと最も大きく裂けたあんよからしーしー混じりの体内餡が流出する。
静かになったドスを前に青年は呼吸を整えると、シャベルを放った。
これだけ大きいとなると後始末しないわけにはいかない。
面倒だが自分の畑なのだから仕方がない。何人かに手伝いを頼もうと考えながら青年は村へと帰っていく。


「ぉがぁぁ……あぃぃぃ…………」


後に残されたボロボロのドスは、それでもまだ意識があった。
箇所ではなく一つの大きな痛みの発信源になった身体は、まるで動かせない。
目が、目が見えない。明暗まで曖昧な瞳はスクリーンを失ってしまっている。
自分が今どんな姿になっているのか想像するのが恐ろしい。
あんよはまだついているだろうか。顔は、ドスのお顔はどうなっている?
おめめはちゃんと二つあるか?見えない、何も見えない。


「ごわいぃぃぃ……ごわいよぉぉ…………!」


何も出来ず自身の恐ろしい想像に震えるドス。
そんな彼に声をかけたのは、先ほどの人間ではなく。
――――群れの長、れいむだった。


「どす…………まだれいむのおはなしはきこえるのかな?きこえてたらおへんじしてほしいよ」

「ゆっ……!?お、おざぁ?おざなのぉ…………?」


見えない目をそれでも声のほうに向けようと、どすが身体をかたむけるが、途端に激しい痛みが生まれる。
長だけではなく複数の気配を感じる。
そういえば、彼らは今まで何処にいたのだろうか。


「なんで……なんでどずをだずげながっだっ……!ありずのかたきがいたんだぞぉっ!!」

「それはね、どす。――――――わたしたちがにんげんさんをよんだからなの」

「――――え?」


ぱちゅりーの言葉はしっかり聞き取れたが、意味がよく分からない。
人間を呼んだ?なぜ?そしてどうやって?


「どすがきのうまりさをころしたときにね。れいむはおさとしてどすのせいさいをけっていしたんだよ」

「は……?な……ふ、ざけるなぁ……!!どすはどすなんだぞぉぉ……げふっ!」


興奮したせいで身体に力が入ってしまい、裂け目から流れ出る餡子の勢いが少し強まり、口の端からも漏れた。
ドスに逆らったゆっくりを殺しただけで、ドスを制裁しようとするなんて。許せない。


「もちろんすなおにうけいれるわけないって、ぱちぇたちはしっていたの。
 だからね、ぱちぇたちはどすをにんげんさんにせいさいしてもらおうとおもったのよ」

「にんげんに…………じゃぁ、だったら、さっきのにんげんがいたのも…………」

「…………そうだよ。れいむとぱちゅりーと――――そしてありすがよんだんだよ」

「ゆ…………え、ありす……?よんだ……?」


なぜここでありすの名前が出てくるのだろうか。
いよいよ訳が分からなくなったドスに、二匹は全てを語り始める。


「ありすがにんげんさんにおやさいをもらいにいったっていうのはね。
 ――――――うそなの」

「――――――は?」


あまりにも予想外だったぱちゅりーの言葉に、完全に素の生まれたばかりのおちびのような声を出してしまうドス。
れいむが続ける。


「どすがありすのしたいだとかんちがいしたのはね。きのうどすがころしたまりさなんだよ?」

「な、え……?まり……さ?」

「おかざりはありすのものよ。でもね、したいはちがうの。
 ドス、あなたがつぶしたまりさのうえにおかざりをのせることを、ありすはゆるしてくれたわ。
 おもったとおり、あなたはおかざりにしかおめめがいかなかったみたいね。
 むっきゅ、あなたのありすはいつからなかみがあんこになったのかしら」

「なにを…………え……?ありすじゃ……なかった……?」


ぱちゅりーの言うとおり、死体そのものをよく確かめたわけではない。
妻が死んだといわれて混乱している状況で、お飾りつきの死体など見せられたのだから無理はない。
騙されたことに対する怒りよりも、ありすの事が気になって仕方がなかった。


「あ、ありすはいきているのぉぉっ!?ゆげほっ!!ありずはどこいるのぉぉぉぉっ!!」

「ここにいるわよ」

「ゆ……え……?」


ドスの大好きな透き通った声が聞こえる。
聞き間違えるはずも無く、死んだはずの愛する妻の声だった。
この目が見えないのが恨めしい、どうにかしてありすの姿を確認したい。
ドスからは見えないのだが、れいむとぱちゅりーが一歩下がる。


「ありすはね。あのにんげんさんにおねがいしにいってたのよ」

「ありす……?ありすっ!?ありすなんだねっ!!
 ありすぅぅぅぅっ!!よがったよぉぉぉぉぉっ!!いきてたんだねぇぇぇえっっ!!」

「まず、もうすぐどすがはたけさんをあらしにきます、っておしえたわ」

「――――――ゆへ?」


今ありすは何と言った?
そもそもなぜありすはドスを心配してくれない。
まるで長やぱちゅりーと協力して、ドスを騙したみたいじゃないか。
それだけじゃなくて、まるで、まるでドスを――――――


「ちがうよね……?ありすはだまそうとなんてしてないよね……?だってどすはありすを……!」

「――――そしておねがいしたの。“どすをせいさいしてください”って」

「う、うぞだぁあああああああああああああ!!!」
 なんでっ!?なんでありずがどすをころぞうとするのぉぉぉぉぉっ!?」


決定的な一言がついにありすの口から放たれた。
明確な裏切りだった。愛していた、何よりも愛していたというのに。
悲しみなのか怒りなのか分からない感情が、ドスを駆り立てる。
涙が止まらない。なぜ、どうしてありすがドスを殺す必要があるんだ。


「どすはありすのためにぃぃっ!!たくさんがんばったんだよぉぉぉっ!?
 ぜんぶっ!ぜんぶありすのためなのにぃぃぃっ!!ありずぅぅうううううっ!!」

「ごめんなさい。……ほんとうに」

「ゆがぁっぁぁぁぁぁっ!!ありずぅぅ!!こだえろぉぉぉぉぉぉっ!!
 ゆっげっほっ!!なんでどすをうらぎったんだぁぁああああああ!!!」


ありすが視線を逸らそうとするも、頭を振って思い直しドスを再び見つめる。
ドスの目は光を失ったようだ。
心配するよりも先に、姿を見られなくてよかったと安著する自分に気づいてしまって、自己嫌悪が吐き気を呼ぶ。


「ありずぅぅぅっ!!どこだぁぁぁぁっ!!ありずぅぅぅ!!」

「…………ど……す、あ、りすは……」


何より答えろと言われても、声が震えてしまってうまく言葉を紡げない。
謝罪は裏切った事実に対してあまりにも無力で意味を成さなかった。
ドスの暴挙、数々の許されない行為は群れの誰もが知っている。
しかしありすにだけはそれを責める権利は無い。
ドスが奪ったご飯を食べ、罪悪感を日々誤魔化し、ドスを止めなかった。
止めようと思っていたとか、話を聞いてくれなかったなんてただの言い訳だ。
止めなかったのだ、夫の暴走を。


「ありすは、ありすはね」

「ゆっげぼえぇぇっ!!……ふぐぅー……ゆぐぅー……!!」


そして裏切った。ドスではない、夫を売ったのだ。
自身への糾弾でありすの精神はピシピシと亀裂が走り、罪を数えるたびにボロボロと崩れた。
ドスとの記憶が崩れ落ち、群れでの生活が剥がれ落ち、蘇るのは飼い主のお姉さんに聞かせてもらったおとぎ話。


「……まじょなの、ドス。あはは、そうよ、ありすはわるいまじょだったの。
 だれかをだましてわらう、こわいこわいまじょなのよ」

「…………わがらないよ……げっほっ!!ありすがなにをいってるのかわからないよぉぉぉぉぉぉっ……!」


いよいよドスの死が訪れる。
長もぱちゅりーもそして群れの誰もが、黙り込み、じっと最期を待っている。


「ごめんなさい――――――まりさ」

「あり……す…………こぽっ………」


ありすの言葉、そしてドスの動きが止まる。
生きていたとしてももう聞こえていないだろう。
ありすが静かに唇を噛み千切って耐える、まるで泣く事すら罪であると言うように。
その横でドスの終わりを確認したれいむが叫ぶ。


「みんなっ!!どすをよくみてねっ!!これがっ!これがにんげんさんのつよさだよっ!!」

「…………」

「あんなにつよかったどすがっ!!たったひとりのにんげんさんにまけちゃうんだよっ!!」


暴君が倒れたというのに、喜ぶものは皆無だった。
ありすに気を使っているわけではない。ドスを哀れんでいるわけではない。
人間という現実を知ってしまったのだ。
ドスは最強のゆっくり、たくさんのゆっくりが束になっても勝てない圧倒的な力の象徴。
それが、こうも一方的にやられてしまうものなのか。


「ゆぐっ……ゆっぐっ……ゆぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


気づけば一匹、そしてまた一匹と涙を流していた。
涙は伝染し、正体の分からない悲しみが彼らを濡らす。
ドスを倒してもらうために全員で芝居した。
人間には勝てないことは知っていた。
望み通りの結果なはずなのに、どうして涙が止まらないのだろう。


「ひっぐゆっぇぇぇぇぇぇ!!ゆぇぇぇぇぇっ!!」


涙を流し続ける彼らのもとへ農作業用一輪車を押した青年が到着する。
ドスを一方的に蹂躙する様子を特等席で見せられていたゆっくり達に緊張が走る。
長としての責任感かられいむが皆をかばう様に前に出る。
ぱちゅりーもそれに続く。青年が気づいた。


「ん?お前等は何してんだ?」

「ゆっぐっ、に、にんげんさん!どすを…………ゆぐっ、やっつけてくれてありごとうございまじだっ!!」

「みんなもおれいをいうのよっ!あたまをぺこりってさげなさいっ!」

「ありがどうございまじだっっ!!」

「おぉう」


数十匹のゆっくりから礼を言われた青年は驚き、それから少しだけ笑ってああ、とだけ答えた。
直接交渉してきたありすの虚ろな様子は多少引っかかるが、わざわざその理由を訊ねるようなことはしない。
青年としてはドスが来るという情報が真実だったので、一時的にだがこのゆっくり達に好印象を抱いている。
そんな事を考えながらも青年はザクザクとドスの身体を切り分け、ドスの残骸を一輪車へと積んでいく。


「ぅ…………」


グロテスクな光景にも群れのゆっくりは目を逸らさない。
魂の抜けたような表情で、少年の作業をじっと見つめている。
悪臭が絡み付いてくるが、それでもあれがドスだなんて信じられない。
ドスが死んだ。最強最大のゆっくりがあっけなく人間に殺された。
最大の問題が解決したはずなのに、最期の希望がたたれたような絶望感。
それはれいむ、そして聡明なぱちゅりーであってもその感情の理由を探せないでいた。


「よいっしょ…………」


ガラガラと音を立て、満杯になった一輪車を適当なところまで運んでいく青年。
それでもまだまだドスの遺体は残っている。
風に煽られる主を失ったお帽子。長い金髪が踊る。
死に顔は痛みによる苦悶ではなく、底の見えない絶望がはっきりと描かれていた。
無敵を誇示していたのに全く抵抗出来ないままに虐げられ、
それが過ちだったと悔いる事すら許されず取り返しのつかない身体にされたドス。
全ての力を失い初めて心の底から助けを求めた瞬間、生きる動機に裏切られた心は、きっと正視に耐えない傷口を晒していただろう。


「…………あ、ありす」

「だめよ、れいむ。だめ」


何か少しでも慰めをとれいむが声をかけたが、すぐにぱちゅりーがそれを咎めた。
どんな言葉も今のありすには届かない。
治療薬はもちろんナイフにもならず、ありすを素通りするだろう。
凍ってしまった表情で、夫の亡骸の方を向いている。


「お、おざ、もうかえるのぜ……!ゆっぐ、これいじょうっ、どずのことをみてられないのぜ」

「ちぇんも、もうかえるよー。ここにいると…………たくさんかなしいんだねー」

「……そうだね。もう、もどろうか」


言われるまでれいむの頭の中に“帰る”という選択肢が無かった事に気づく。
なぜかこの場を離れてはいけない気がしていたのだ。だがもう目的は達した、そのはずだ。
皆を振り返り、れいむが号令をかける。


「ゆっ!…………それじゃぁみんなっ!むれにもどろうね!」

「あー待った待った!お前等ちょっと待て!」

「ゆゆっ!?に、にんげんさんっ!?」


いつの間にか戻ってきていた青年に止められ、焦るれいむ。
帰してくれないという事はまさか、まさか――――


「ほれ、これやるよ。お前等で持ってかえれ」

「ゆ、え?」


青年が一輪車をひっくり返すと、ドサドサっと様々な野菜が地面に転がった。
かなりの量がある。
状況が全く理解できずに固まるれいむに代わってぱちゅりーがたずねた。


「こ、これはおやさいですよね?に、にんげんさん、これをぱちぇたちにくれるんでか?」

「ああ、これだけありゃ冬は十分すぎる、とまではいかなくても足しにはなるだろ?」

「で、でもどうしてっ!お、おやさいさんにてをだすとにんげんさんは、その、た、たくさんおこるわ!」

「おお、その通りだ。やっぱお前等そこそこ頭いいんだな」


青年が嬉しそうに笑う。ゆっくりから見ても裏表の無い、ただ純粋な笑顔だった。
だから余計に分からない。なぜお野菜をくれるのだろうか。


「もちろん畑に入るのは許さない。お前の言うとおりだ」

「は、はい」

「ただ、これは礼だ、わかるか?お礼な。そこの馬鹿が山から出てくるのを教えてくれただろ?
 もしかしたら、アイツにはゆっくり避け効かなかったかもしれねーからな」

「お、おれい……。えっと、ぱちぇたちがにんげんさんのやくにたったってことでいいの……かしら」

「あーそういう事。だから今回だけ特別食べさせてやるって意味。
 これもまぁ売れないっつってもわかんねーだろうけど、いらないヤツだから遠慮すんな。
 ただもちろんこれからもお前等が畑に近づくと死んじまう事は変わらないから気をつけろよ?」

「ゆ、ゆぅ……」


ぱちゅりーがれいむを横目で見る。
れいむはずいぶん困った顔をしている、それはぱちゅりーも同じだろう。
お野菜が貰えるのは当然嬉しいが、無警戒に喜ぶには目の前の人間の恐ろしさを知りすぎてしまった。
ただ何かしらの悪意をもたれているとしても、お野菜をわざわざ自分達に渡す理由はないようにも思える。
何より、人間の機嫌を損ねる事だけはしたくない。
れいむがまたドスの餡子を回収している青年に、おずおずと礼を言う。


「に、にんげんさん。ありがとうございます!ゆっくりおやさいさんをいただきます!」

「おう」

「お、おさ……、いいのぜ?こ、これ……」

「ゆ、ゆん、そうだねみんな!おやさいさんをもってかえってね!」


小さな歓声が上がる。現実で何度も遠巻きに凝視し、夢にまで見たお野菜。
それが手に入る。家族に食べさせてあげられる。
それでも染み付いた恐怖があるのか、皆のろのろとおさげやもみあげを伸ばし、一つ一つ丁寧に頭や口内に運ぶ。
ただ一匹、ありすだけは手をつけず、そんな皆を視界に納めている。


「さぁみんなおやさいをはこんでね!ここにいないみんなにも、ちゃんとわけなきゃいけないからひろばにもっていってね!」

「むっきゅ、いますぐにでもたべたいでしょうけど、どすのくさいくさいがあるからむりでしょうね」


ドスの死骸を運んだ一輪車に入れられていたため、多少なりとも死臭が移っているが誰も嫌がらない。
夢中で広場へ運んでいく。
それでもこっそり隠したりするようなゆっくりはいない。
そんなことをして群れから孤立してしまう事が怖いのだ。
彼らは学んだ。協力する事の大切さを。
皆と一緒がいい。皆と同じ事をしていれば間違いはないし、自信を持って行動できる。


「ゆっ、ゆっ!ゆっ、ゆっ!」

「みんな!さかさんをのぼるときはしんちょうにね!ころびそうになったらおやさいさんをすててもいいからね!」

「ゆっくりりかいしたのぜ!ゆっ!ゆっ!」


少なくとも軽くは無い野菜を持って坂道を往復するのは大変な重労働だが、それでも文句は出ない。
何せ運んでいるものは誰もが認める宝なのだ。
野菜の存在を知って見に来た妻や子供達に注目されると、誇らしげな気持ちにもなる。
何より報酬として分け与えられる事が約束されているのだ。
そこに疑いをもつゆっくりがいない程度にはれいむは長として信頼されている。


「ゆん!それじゃあみんなあつまってね!」


全てを広場に運びきった頃にはあたりは暗くなり始めていた。
夕暮れはなく、急速に光を失っていく森の中でれいむの指示で野菜が分配されていく。


「おちびちゃんがいるかぞくには、ひとつだけおおくわたすわ!
 ただおちびちゃんのかずはかんけいないわよ!にひきでもさんびきでもたくさんでもいっこふやすだけよ!」

「ゆっ、りょうかいだよー!」


ぱちゅりーの分配方法にも異議は出ない。というよりみんなもう野菜に夢中で細かい事を気にする余裕はないようだ。
にこにことれいむに礼を言い、野菜を受け取っていく。
分配を終えるとれいむは全員を労った。


「きょうはみんなおつかれさま!…………ゆん、わかってる。
 いろいろいいたいことはあるだろうけど、きょうはおうちでゆっくりやすんでね!
 ただ、あしたはまたひろばにあつまってね!…………みんなでこれからのことをはなそうね!」

「ゆっくりりかいしたのぜ!おさもぱちゅりーもおつかれさまなのぜ!」


小さなおちびたちの笑い声が響く。
こんなにも多くのゆっくりの笑顔が揃うのはいつ以来だろう。思い出せない。
そんな姿を見送れるのは純粋に嬉しい、れいむはそう思った。


「だれかのしあわせなすがたをみて、うれしいとおもえるのはれいむ、しあわせなことよ」

「……ゆん、そうだねぱちゅりー」


ぱちゅりーに強く頷く。
ただ唯一気になるのは独り皆の輪から外れ、無言でいるありすだ。
少し迷ったが、れいむが近づいて行く。
今度はぱちゅりーも止めなかった。


「ありす……、その」

「ああ、おさ。おやさいさんならいらないわ。おうちにはまだ、みんなからもらったしょくりょうが、たっぷりあるの」

「そうじゃなくて…………きょうは、ゆっと、あ、ありがとう!
 ありすのおかげでみんなが!むれのみんながすくわれ――――――」

「やめて!……おねがいれいむ、おれいなんていわないでちょうだい。
 ありすは…………おっとを、まりさをころしたのよ」

「ゆん!?…………ご、ごめん」


それっきりありすは俯いてしまった。
それでもれいむは何とかして慰めたいと、必死に頭や記憶をがさがさと探して言葉を見つけようとするが、結局何も出てこない。
いつのまにかぱちゅりーが側に立っていた。


「ありす、こんやはぱちぇたちのおうちにこないかしら?」

「……ぱちゅりー」

「むきゅ、べつになにするってわけでもないのだけど。
 こんやのごはんさんはとってもごうかだから、できればおともだちをしょうたいしたいのよ」

「うふふ…………そうね、それはとってもとかいはなでぃなーね。
 ただ、ごめんなさい。こんやだけはひとりでいたいのよ。
 だいじょうぶ、あしたのしゅうかいにはちゃんといくから、しんぱいしないで」

「そう…………」


それ以上はもうれいむもぱちゅりーも何も言わなかった。
微笑んだままありすがそれじゃあと別れを告げ、おうちへと帰っていく。
見送った後、二匹も帰宅する。今日は本当に長い一日だった。
おうちに倒れこむように入っていく。


「ふぅー、もうれいむくたくただよ」

「そうね。ぱちぇもこのあいだついていったかりよりつかれたわ」

「ゆはは、ぱちゅりーもこれからはうんどうしたほうがいいのかもね」

「むっきゅ、しつれいね。ぱちぇはいつでもずのうろうどうしているわ」


二匹で笑う。
そういえばこうやって冗談を飛ばしあって笑うのもずいぶん久しぶりな気がする。


「…………なんとかえっとうできそうだよね、ぱちゅりー」

「そうね。あたらしいかりばのおかげで、とれるごはんさんもふえるわ。
 それにもう………………かりのせいかをとられちゃうしんぱいもないの。
 だいじょうぶ、みんなではるさんをむかえられるわ」

「うん、そうだよね。ゆはは、ぱちゅりーがそういってくれるとれいむもほっとするよ」


そっともみあげ同士が繋がる。
体温を共有するかのように寄り添い、互いを暖める。


「もう、いいかな」

「ゆん?」

「おさだからってがまんしてきたけど……はるになったら、あたらしいかぞくがほしいな」

「む、むきゅ、れいむ」


珍しく、ぱちゅりーが照れる。
そんな妻の様子が面白く、そしてなにより愛しくてれいむがぱちゅりーを一層強くもみあげで抱く。


「そんなにたくさんのおちびちゃんじゃなくていいんだよ。ぱちゅりーみたいにかしこいおちびちゃんいっぴきでも」

「そうね、れいむみたいにだれよりもやさしいおちびちゃんがほしいわ」


くすくすくすとぱちゅりーが笑って、穏やかな空気がおうちをつつむ。
今夜は不安や悩みに邪魔されず、久々にぐっすり眠れそうだ。
まだ全ての問題が解決されたわけでは無いが、とりあえず大きな危機は回避した。
そう思っていいだろう。


「おやすみぱちゅりー」

「おやすみなさい、れいむ」


葉を積み重ねただけのベッドにもぐりこむ二匹。
夢の世界はあっさりと夫婦を招きいれ、夜は更けていく。
冬はもうすでに山を覆っていたが、それでも暖かな夜だった。



















狩を終えた群れの働き手達は広場に集まっていた。
これまではドスに成果の半分以上を奪われる、最も嫌われた時間だったがもうそんな心配は要らない。
しばらくするとおうちの中にいた妻や子供達も出てきた。
今日は越冬前の大事な集会という事で、なるべく群れの全員に出席して欲しいと長は言っていた。
ドスの妻だったありすも現れる。
あの日の直後は落ち込んでいたが、最近では話しかければ以前の社交性を少しだけ見せてくれる。
ただやはりその笑顔は以前より影が差し、またあまり他ゆんの前にも出てこなくなった。


「みんな!きょうはむりいってあつまってもらってごめんね!」

「おさ!ゆっくりしていってね!」


お決まりの挨拶も今日は数が多い。
おちび達の舌足らずな声も混ざっている。


「いよいよえっとうがちかいね!このまえもかくにんしたからみんなごはんのよういはじゅうぶんだよね!
 もちろん、えっとうをかいしするひはじゆうだよ!きょうからだっていいし、もっとたくさんごはんさんをあつめてからでもいいよ!
 ただゆきさんがきたらもうおうちからでちゃだめたからね!これはれいむがいうまでもないよね!」

「ゆっ!おさたちはいつからえっとうするのー?」

「ゆん!れいむたちはなるべくおくらせるよ!もしそうだんしたいこととかあったらいつでもきてね!」

「さすがおさなのぜ!」


茶化すように言うまりさ。
れいむも述べたが越冬用の食料は十分にあり、この間人間からもらった野菜をまだ残している家庭も多い。
野生ゆっくりには珍しく余裕があるのだ。


「みんながわらってくれるのはれいむもうれしいけど、でもえっとうをあまくみるのだけはやめてね!
 すこしくらいぜいたくしてもとか、ましてやおちびちゃんをつくるのはだめだよ!
 もちろん…………つくったとしてもせいさいなんてないよ。ただれいむはやめてほしいとおもうよ!」

「ゆっくりりかいしたんだねー!さすがにこのじきにおちびつくってもくろうするだけなんだよー!」

「ちぇんのいうとおりだよ!」

「そうだね!みんながちゃんとかんがえてくれていてうれしいよ!」


れいむがしっかりと笑顔を見せる。
今年の越冬は成体ゆっくりの犠牲者ゼロも難しくないかもしれない。
おちびちゃんは減ってしまうかもしれないが、それでも大半が春には立派に成長した姿を見せてくれるだろう。


「むきゅん、ぱちゅりーからもちゅういさせてもらうわね。
 おふとんや、いりぐちをふさぐようのくささんのじゅんびはだいじょうぶかしら?
 あるとなしではあたたかさが、たくさんちがうわ!くささんでおうちをいっぱいにしなさい!」

「ゆっきゅりりかいちましたー!」

「むきゅ、とってもいいおへんじよおちびちゃん」

「あははは!」


場に笑いが広がり、木々ががさがさと揺れる。枝が軋む音を気にするものはいない。


「ほかのおちびちゃんも、おとーさんとおかーさんのいうことをちゃんときいてね!」

「ゆっきゅりー!」

「おさ!はるさんがきてあったかくなったら、またみんなでいっしょにかりをしたいのぜ!」

「ゆん!そうだね!そのためにもふゆさんのあいだはがんばってねみんな!」

「わかるよー!えーっと、さいきょうのちぇんにかかればらくしょうなんだねー!」

「ゆははははは!!」

「ゆきゅりー!ゆっきゅりー!」


軽いジョークにも大げさに笑う大人達。
つられて子供達もきゃひきゃひと笑う。
冗談の意味も分かっていないが、両親の周りを小さなあんよで跳ね回る。
――――――そんな幼い存在を突然の乱入者がヌッと掴みあげた。


「ゆゆっ!?おちょらをとんでるみちゃいっ!」

「――――――ゆへ?」


一体いつ現れたのだろうか。一瞬でその場に生えたとしか表現できない。
広場の真ん中にいきなり飛び込んできた。


「へ、へんなにんげんざんだぁああああああああああああっ!!」

「う、わ、ひぃぃぃぃぃっ……!!」


あまりの事に固まっていたゆっくり達も、先陣を切って悲鳴をあげたまりさによって動き出した。
見慣れない異様な人間に思わず距離を取るゆっくり達。
ただ実の子を掴まれている両親は腰にしがみついて訴えた。


「お、おねがいじまずっ!!まりざのおちびちゃんをがえじでくだざい!!」

「れいむにぞっくりのおぢびぢゃんなんです!だっだいっぴぎのぉぉっ!」

「ま、まちなざぃっ!そいつは――――」

「ゆっ?おきゃーしゃんとおとーしゃゆびぎゃああああああああああああああああ!!!」


ゾブリと無造作に、何の感情もなく手に持つ赤ゆっくりを齧り切った。


「あ、あっ?あああああああああああああああああああああ!!」

「なにじでええええええっ!?なんでにんげんざんがゆっぐりをたべるのぉおおおおおおおお!!」

「やめなさいっ!!みんなにげなさいっ!!そいつはにんげんさんじゃないわっ!!」

「え?ゆっ!?もうひとりき、やべでええええええええ!!つかまないだいいだいいだいぃいいいっ!!」


全身は茶色い体毛に覆われ、顔はまるで怒っているかのように真っ赤。
姿は確かに人間に似ているが、成体でも人間の半分以下の身長で、人間よりも鋭い犬歯を持つ。
――――猿、と呼ばれている。


「ゆわぁぁぁぁぁっ!!に、にげるのぜおちびっ!!こっちにっ!ゆええぇぇぇっ!?
 なんでごっちにもいるのぉおおおおおおおおおおお!?」

「ゆびぃぃぃぃぃっ!!やめぢぇ――――ぎゅがっ!ぎょ……こっ……」

「ぎぎゃあぁぁぁぁっ!!いぎゃっ!ひっばらなっいでっ!がみのげざんがぁぁぁぁぁっ!!


あっという間に集会は乱入してきた猿の群れによって大混乱になった。
猿達は赤ゆっくりを優先的に狙い、素早く捕獲すると何のためらいもなく口に運ぶ。
手先を起用に使いながら角度を変え、表面を削るように食い破る。
また成体ゆっくりの場合は頭部を数十キロの握力で掴まれ、近くの木まで引きづられていく。


「あ……ああ……あああ……!」

「そいつらはさるよっ!!にんげんさんじゃないの!
 おねがいなんてしてもむだよっ!!にげなさぃっ!!はやぐっ!!」

「さ……る……?」


あまりにも衝撃的で唐突すぎて、れいむの意識が現実から一段階外れ、奇妙な事に異常なほど冷静だった。
何なんだこれは?
ぱちゅりーの悲鳴のような指示、こんな状況なのに何故かハッキリと聞き取っていた。
人間ではない、“さる”とぱちゅりーが呼ぶ彼らは人間なんかよりずっと素早く動き、群れの皆を追い回している。
――――なぜ今になって出てくる?
猿なんて一度も見たことが無い。
ぱちゅりーだって恐らく両親から教えてもらったか、もしくは生まれつき記憶していかのどちらかだろう。
いや、違うか。
まりさからも“へんなにんげんさん”の報告はあったし、ドスも見たと言っていた。
奥の山から群れの近くまで移ってきてはいたのだろう。
しかしそのときも襲われてはいない。犠牲になったゆっくりは一匹もいなかったのだ。


「れいむっ!?どうしたのれいむっ!!しっかりしなさいっ!!あなたはおさでしょうっ!れいむっ!!」

「ゆん……ああ……ゆん……」


なぜ今ゆっくりを襲うのだ?何故食べる?
もしや越冬用の食料のためだとでも言うのか。ただそれならもっと早く襲ってきてもいいはずだ。
狩場にまで来ていたのだから、それこそあのまりさが見つけた日にでも。
なぜ、どうして今なんだ――――――


「れいむっ!!」

「いだっ!!……ぱちゅりー?」

「じっかりっ!じなざいっ!!あなだのむれがおぞわれてるのよっ!」


ぱちゅりーにもみあげで強く殴られ、れいむが現実に戻ってくる。
そして目の前の地獄の光景が目に飛び込んでくる。


「あ、ああああ、ああああああああああああああ!!!」


一匹のゆっくりに複数の猿が群がり、奪い合うようにして体をバラバラに引き裂く。
おちびちゃん達も木の上へと攫われ、上から絶叫が降り注ぐ。
成体ゆっくりすらも引きずりながら木を登る猿達。


「や、やめろぉおおおおおおおおおおおお!!れいむのっ!!でいぶのむれだぞぉおおおおおおおおお!!」


激情に支配されてれいむが咆哮する。
大切な群れのみんなが蹂躙されている。
そしてありすの悲鳴が響いた。


「きゃあああああああああああ!!こないでぇぇぇぇぇっ!!いやあああああああああ!!」

「あ、ありすぅっ!!!やめろっていってるでしょぉおおおおおおお!!ありすにさわるなぁぁっ!!
 おねがいだからぁぁっぁぁぁぁっ!!みんなをはなしてよぉおおおおおおおおおっ!!」


必死で逃げるありすだが、相手が悪すぎる。
瞬く間に追い詰められる。


「いやぁ……!!ちかづかないでぇ……!」

「まっでっ!まっでねっ!!れいむたちおやさいをもってるんだよぉぉぉっ!!
 ぜんぶあげるからぁぁっ!!ぜんぶっ!!れいむのごはんさんもあげるよぉぉぉっ!!
 だからみんなはたべないでぇええええええええええ!!」

「いやああああああああああ!!かみさんがぬけちゃうぅううううう!!がああああああああ!!」


れいむが泣きながら訴えても猿達は狩を止めない。
無茶苦茶に髪の毛を引っ張られるありすが泣き叫ぶ。


「いっだああああああああああ!!たすけてぇぇぇっ!!
 まりさぁぁあああああああ!!ありすをたすけてぇえええええええええ!!」

「ありすをはなせぇぇぇっ!!!!ぐっぞぉおおおおおおおお!!!」


ありすの言う通り本当にドスがいてくれたら!
ドスなら猿達にも対抗できるだろう。猿はドスと比べれば相当小さい。
本気のぷくーをしてもらえば、いくら猿だって怖がって――――――
そう、怖いはずなのだ、猿だってドスは。


「ま、まさかどどすがしんじゃったからなの?どすがしんじゃったから、さるがむれに……?」

「ゆきゃあああああああ!まりざぁぁああああ!!まりざああああああああ!」


結局それが答えだった。
巨大なドスは、野生動物を警戒させるには十分な迫力があったのだ。
ましてや猿にとっても見慣れない存在である。
毎日広場に現れていたドスは、意図せず群れの門番となっていたのだ。
しかし猿はゆっくりの味を知っていた。
何せ埋葬の習慣がない群れでは、死体を少し離れた所へ運び、後の処理を雨に期待するのだから。
群れにとって不幸だったのはそれを猿が口に入れ、そして気に入った事だろうか。
――――――そしてドスは死んだ。猿に対する防護策は撤去されたのだ。
他ならぬ群れのゆっくり達によって。


「そ、そんなの……そんなのあんまりだよっ!!
 だってどすをたおさなきゃむれはっ!!ゆぐっ!?
 ゆがぁあああああああ!!ありすをはなせっていってるだろぉおおおおお!!」

「ぐぎゃががああああああっ!!あぎぎぎぎぃぃっ!!」


群れで一番美しかったありすの顔は、猿の手によって眼球を抉り取られ、
髪の毛もごっそりと抜かれ、最早顔としての機能のほとんどを奪われていた。
それでも猿は容赦しない。
殺す事ではなく食べる事が目的であるため、猿自身が満足しない限りありすは解放されない。
狂痛を叩きつけられるありすのボロボロの精神は、あの日からずっと続けてきたドスへの謝罪を唱えていた。
ごめんなさい、ありすが全部悪かったの、ありすが愚かだったの。ごめんなさい、ごめんなさい――――


「かっ、こここここっ!……………」


中枢餡がほじくり出された事によって、ありすは罪から解放された。
ただあの世というものがあり、ドスと再会出来たしても。
そこで許されるかどうかはまた別の話だ。


「!ありずぅ!ありずぅううううううううう!!」


吠えるれいむだがしかし、体当たりという行動に出れないほど恐怖している事を自覚できていない。
自分の怯えをしらないので、ありすを救う最善の行動を取っているつもりになり、
結果ありすの悲惨な最期をまざまざと見せ付けられる事になった。
そして――――――とうとうぱちゅりーも捕まった。


「きゃっ!いきゃあああああああああああ!!:」

「ゆぐっ!?ぱちゅりーっ!?」


ガバッと振り返れば、今まさにぱちゅりーが木の上へと連れ去られようとしている所だった。
反射的にれいむのあんよは跳ねていた。
引き抜かれる勢いで髪を掴まれているぱちゅりーの姿を見た瞬間、
恐怖に押さえつけられていたあんよが、怒りを燃料に激しく稼動した。


「かえぜぇえええええええええっっ!!れいむのぱちゅりーをかえぜぇぇぇぇっ!!」

「ゆぐががっ、れ、れいむだめっ!!にげなざいぃぃっ!!」

「ぱちゅりーっ!!ぱちゅりぃぃいいいいいいいいい!!」


跳ねる、ここまで確かな殺意を抱くのは初めてだ。
ぱちゅりーを掴むあのゲスを跳ね飛ばして殺してやる!


「れいむぐっ!だめなのっ!こいつらはことばなんてわからないわっ!!だからにげてぇぇっ!!
 ゆぎゃああああああああああ!!」

「ゆがあああああああああああ!!じねぇえええええええええっっ!!」


一切の躊躇い無く、れいむは捨て身で突進したが、ベジュッと木の幹に弾かれた。
既に猿は叫ぶれいむから逃れる為に、ぱちゅりーを口にくわえながら木を登っている。
決して軽くは無い衝撃と痛みがあるはずだが、れいむは鬼の形相で猿を追うために木に身体をガシガシと押し付ける。
ただどんなにもみあげに力を込めても、それだけで身体を支える事は叶わない。
それでもれいむは必死に声を絞り出して威嚇し続ける。


「ゆぎぎいぎああああああああああああ!!あああああああああああ!!」

「くぃいいいいいいいいいいい!!やめろああああああああああああああ!」


枝の根元に下ろされたぱちゅりーは、その身に喰らいつかれる。
その悲鳴に理性はなく、到底耐えられない激痛が無慈悲に押し寄せていた。
そして番が食われていく様子を見せられるれいむ。
食い込む汚れた歯までハッキリ見えてしまうほど近いのに、決して手が届かない。
世界一愛している妻を救えない。
ポタポタとぱちゅりーの白い血液がれいむの顔を濡らす。
猛獣のようなれいむの絶叫が木を駆け上る。


「ごろずぅううううううううう!!うごぉおおおおおおおおおおっ!!ごろづぅううううううううううう!!」

「ぎぐぐぎっぎぃぃぃぃ!!あがあああああああががあああああああ!!」


ビクンとビクンとぱちゅりーが食い荒らされるたびに、命を撒き散らす。
強くれいむがもみあげで目の前の壁を殴る。
猿はもう注意すら向けない。うるさいしたのヤツはここまで来る事が出来ないと理解したから。
果実よりも甘い極上のご馳走を咀嚼する事に夢中だ。


「おりでごぃいいいいいいいい!!おぢろっ!おぢろぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「がっ……かっ!ごぉ……っ!……っ、……」

「ぱぢゅりぃいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!」


ぱちゅりーの大部分が猿の体内に消え、ひらりと主を失ったお飾りが落ちてきた。
べっとりとクリームがはね散っている。
死んだ、ぱちゅりーが殺された。頼りない自分を支え続けてくれたぱちゅりーが――――


「キイィイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!」


もみあげで頭を掻き毟る。
気づけば頭上でぱちゅりーを貪っていた猿がいなくなっていた。
だが後ろではまだ生きながら食べられる群れの仲間が、激痛を叫んでいる。
あらゆる方向から助けを求める悲鳴が聞こえてくる。


「がああああああああああああああ!!あがあああああああああああああ!!」


れいむは白目を向きながら、近くにいる猿に向かって無差別に飛び掛った。
そこに長としての意識は無い。歯をむき出しにし、殺意だけに従っている。
皮肉な事にその姿は逆に猿を怯ませ、遠ざけた。
猿は恐怖するものに対しては強気にでるが、今のれいむのように大声で向かってこられると逆に怯む。
そんなれいむをわざわざ狙わなくても、もっと弱そうで鈍い餌は大量にあるのだ。
追い払うほどの効果はなくても、自衛には十分というなんとも中途半端な力。
それでは守れない。


「じねぇええええええ!!じねえええええええええええええ!!」


もちろんそんな事はれいむに分からないし、知らない。
ただ直近の猿を追い回す。
全力を絞り続けた身体は吐き気で限界を教えるが、嘔吐しながら跳ね回る。
徐々に死臭に包まれていく広場で、れいむは暴れ続けた。

――――――そしてその日、れいむの群れは崩壊したのだった。



















気がつくと、れいむは木に突っ込むように倒れこんでいた。
のろのろと身体を起こすと、既に猿達の姿は無かった。そして仲間の姿も。
ほんの微かに聞こえてくる声にならない呻きが、まだ生きているものがいることを伝えるが、
はたしてどれが生きているのかまるで分からない。
顔半分が欠損しているまりさだろうか、あんよがまるまる喰い千切られているちぇんだろか。


「…………」


激しい怒りや深い悲しみと絶望に矛盾しない無感情。表現しきれるような言葉は存在しない。
一瞬だった。とても簡単だった。あっさりしていた。
一枚の葉っぱが落ちるようにあっけなく、れいむの全ては奪われた。


「…………」


どうしてだとか、なぜかなんてもう考えない。だって全部無くなってしまったんだから。
何一つ残っていないのに、自分の命だけが残っている。


「……ゆっく」


もともとれいむ達の群れは危ういバランスの上に存在していたのだ。
ドスは確かに猿を抑えていた。
だが、かといって殺さなければ食料の大半を奪われ、全滅はしないまでも今年の越冬は過去に無いほど悲惨な結果になっていただろう。
あの青年がいつか畑に近づくゆっくりに嫌気がさせば、一番近くて目に付くれいむの群れは潰されていたかもしれない。


「ひっぐ、ゆっぐぅ」


決してれいむは何かを間違えたわけではない。
群れのゆっくり達もそれは同じだ。ただ生きる為に努力しただけ。


「ひっぐぅぅ!ゆぇぇぇえぇぇ………」


しかし、ドスという存在を取り除いた事で不安定なバランスは一気に崩壊した。
結果全てがぐちゃぐちゃになり、れいむの群れは壊滅。
ゆっくりという餌をあらかた食べつくした猿たちは、次は畑を荒すかもしれない。
しかしもう、れいむには何もかも関係が無い。意味が無いのだ。


「ゆぇぇぇえぇぁぁぇぇぇぇぇっ!!ゆぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


一匹で住むには広いおうちのなか、おちびのように泣きじゃくるれいむ。
おうちは無事で食料は十分すぎるほどある。このまま越冬する事に何の問題も無い。
だが冬を越えて春を迎えたところで何がある?冬の間れいむは何を守ればいい?
れいむは、群れの、何だったんだっけ?
風が冷たくひゅうと笑い、越冬開始のタイムリミットが近いと告げていた。
れいむの孤独な越冬が始まる。

ゆっくりいじめSS・イラスト ※残虐描写注意!コメント(37)トラックバック(0)|

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コメント

4903:

読みごたえのある力作だった

2013/03/05 13:22 | 珍ぽこ羽目太郎 #- URL [ 編集 ]
4904:

自然界は厳しいな
このゆっくり達はせいぶつとして認められる
みじめな最期だったがしっかりと生きていた

2013/03/05 13:25 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4905:

救いの無い結末が素晴らしい

2013/03/05 14:11 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4906:

餡庫でのポイントが高いだけある。

2013/03/05 14:18 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4907:

ハッピーエンドじゃなくてよかった
やはりゆっくりは悲惨な目に合わないとね!

2013/03/05 14:29 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4908:

中々見ることの出来ないいい作品だった
ゲス赤ゆっくりから自然の制裁まで、しっかりと話が作られていて最後まで一気に読み通せたわ

2013/03/05 14:43 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4909:

人間に認められたまともなれいむなんて
奇跡ともいえる存在だったのに。
腐るほどいるでいぶなんぞ何兆匹死のうが全然知ったこっちゃないが、
番のぱちゅとかまで死んだのは惜しいことしたな。

・・・なんて思ったら、れいむだけは生き残ったのか。

2013/03/05 15:35 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4911:

れいむ種が長とか奇跡に近いよなwww
ゲス制裁展開を読んでても群BADENDしか頭をよぎらなかったし、その通りの展開だったのでワラタ
でもおはなしさんはとっても面白くてすっきりーできたよっ!!

2013/03/05 18:21 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4912:

すごく面白かったわ~すっきりー!!

2013/03/05 19:18 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4914:

有能なれいむはすっきりできるね!
話はよかった。ゆっくりにやるものは塵で充分

2013/03/05 20:50 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4916:

うーんとても面白い
野生ゆっくりの模様とか面白かったな
絵に起こした物も見てみたい

2013/03/05 21:25 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4917:

凄く面白かった
ドスの描写(希望の象徴のはずが実際はただの暴君、ゆっくりに対しては強いけど人間にとっては弱点だらけ)がリアルだと思った。
最後にしても確かに野生の生き物がゆっくりみたいな美味しい獲物を見逃すはずがないっていう点でリアルで良いと思った。

2013/03/05 22:15 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4918:

ドス以外全員金バッジ級の善良さと賢さって
奇跡的な群れだな
まあそうでない奴が死んでいっただけだろうけど

2013/03/06 00:24 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4920:

面白い、長ったらしいやつは飽きやすいけどこれは飽きずに読める

2013/03/06 01:11 | 名無し #- URL [ 編集 ]
4922:

まれにみる優秀な群れだけど、
所詮はゆっくり、野生動物は問答無用なのよね

2013/03/06 06:08 | 名無しさん #ZXOsPrGI URL [ 編集 ]
4923:

ドス以外は優秀だな。
ドスがもう少し賢かったら死ななくてすんだかもね。

2013/03/06 08:00 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4928:

味の為の虐待と保存を猿が知るのも時間の問題だな
来年は是非とも苦しんで全滅して欲しい

2013/03/06 13:27 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4929:

設定がすごく煮詰めてあって、
それぞれのキャラクターの行動もきちんと
理由付けされててすごく読みごたえがあった。
時間をかけて練り上げられた名作だと思う。

あえて欲を言うなら、ドスに潰された片目まりさと
その妻のれいむの出番がもう少し欲しかったかも。


2013/03/06 13:39 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4930:

冗長。ひたすら冗長。

2013/03/06 14:01 | 名無しさん #X.Av9vec URL [ 編集 ]
4932:

ゆっくりSSの中で一番力作だな。
虐待や制裁、自然の制裁など、
いろいろな物がこの一作に詰められているといっても過言ではないな。

2013/03/06 15:49 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4933:

ストーリーが凄いね
よく練られている

2013/03/06 16:44 | あ #- URL [ 編集 ]
4936:

長さが気にならないほどぐいぐい引き込まれる良作だった
それなりの知能と分別のあるゆっくりでも自然の脅威には勝てないのか
ゆっくりがいかに脆弱な存在であるか改めて感じた
無常だなあ

2013/03/06 23:12 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4939:

最初のまりちゃ仲間外れんとこよかったw

2013/03/07 00:14 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
4951:

とても面白かったです。
ただ虐待するのももちろんすっきりー!するんですが、こういう野生種の悲哀を描いた作品はそれよりさらに読み応えがあるかと思います。
是非またこういった作品を読みたいですね。

2013/03/07 12:40 | 名無しさん #mQop/nM. URL [ 編集 ]
4963:

この長れいむ、実質何もやってねーじゃねーか
なんでこんな無能が長になったんだ?

2013/03/07 23:17 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5024:

4963さん、この霊夢は十分有能だよ。自分の事じゃなく村の事を考えて行動したし村のゆっくり達もみんな奇跡と言っていいほど有能の集まりだったよ、ただドス、てめぇはだめだ

2013/03/10 13:35 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5064:

虐待アンチが対虐待派に対抗するために考えられたのがドスなんだろうが
実際は人間との力量差はこんなもんだよな
踏み潰しにしても体当たりにしても巨大になりすぎた巨体が邪魔で回避してくれと言ってるようなもんだし
この作品ではフィクションという事になってるがドススパークとやらも
触媒が必要な上に結構なチャージ時間がいるたまやはり余裕で回避なり阻止される
その鈍重さゆえに重装甲なのかといえばそういうわけでもない饅頭肌
人間に勝てる要素など一つもなかった

2013/03/12 00:52 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5191:

いくら暴君だったとしても、気付かない所で役に立ってたんだな…。
どうあがいても絶望。ゆっくりに生まれた時点で、もう全てが終わってたのかもな。

2013/03/18 05:07 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5398:

猿が出てきたところから付け焼刃の用で変だし猿がうざかった。死ねよks

2013/03/25 00:51 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5529:

良いSSでした。
自然界の厳しさをうまく表現していました。
ただこの優秀なゆっくり達には生き残ってほしかったです。
ゆっくりに対して久しぶりに情がわきましたw

2013/03/30 01:53 | あまのじゃく #- URL [ 編集 ]
8180:

最高にゆっくりできたよ!

2013/06/26 13:51 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
8387:

凄い力作だった!
色んな要素を詰め込んでいるけど、しっかり構成されているから矛盾もないし飽きも来ない。

れいむが長なのも斬新でよかった。
ゆっくりを素直に可哀想だと思えたし、読破した後は清々しさも感じた。
作者さんありがとう!

2013/07/01 00:08 | 名無し #- URL [ 編集 ]
9039:

ゆっくりは食物連鎖の最下層だからしょうがないよね
ドスがゲスだった時点で群れの破滅は確定してたわけだ

2013/07/18 02:12 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
9910:

群れは優秀、長は長としての役割を全うし、唯一救えないのはドスのみ…猿か、自然界では人間視点で見ると好感の持てるこの群れも淘汰されるのか…悲しいな。
ゲスがいないゆっくりの死亡描写ほど辛いものはない。

2013/08/09 11:51 | 穏健派鬼威山 #- URL [ 編集 ]
10030:

最悪の害獣はゆっくりかなぁらと思ってたけど、そういえば猿がいたな。
そう考えると、猿だの鹿だのそっちのけで饅頭に構ってる農家ってなんか不自然だな。

2013/08/11 19:52 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
11022:

ゆうっのうなゆっくりはすきだからむれのかいっめつえんでぃんぐさんはちょっとつらかったよ!
でもおもしろかったよ!

2013/09/11 12:41 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
12704:

素晴らしいssを読ませてもらった
変な人間が猿だったってーのは出てくるまで解んなかったわ
あと猿の捕食シーンがバイオを思い出させる

2013/12/07 02:33 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]

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