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2393:花ゆん症

2013/03/14 (Thu) 00:00

春が訪れようとしていた。

ぽつぽつと緑を増す、さる山の麓、一本の巨大な木の根元に掘られた巣穴の中で、二匹のゆっくりが喜色をその顔に浮かべていた。

「ゆっゆーっ! おちびちゃん、おちびちゃん、ゆっくりうまれてきてね~♪」
「ゆん、れいむ、あせらなくてもおちびちゃんはゆっくりうまれてくるのぜ」

ゆっくりれいむと、ゆっくりまりさ。典型的な野生ゆっくりの番だった。
二匹はこの長い冬を乗り越え、春を迎えることの出来た、幸運なゆっくりだった。

まりさは去年の春に生まれ、満一歳を迎えようとしている、野生にしてはそこそこ長寿なゆっくり。
一方のれいむは、夏の終わりに生まれた、成体になってまだ間もない、若いゆっくりだった。
下手をすれば親と子ほどに歳の離れた二匹は、れいむはよく夫に仕え、またまりさはれいむを導いて、周囲にもまたとない出来た夫婦だと云われていた。
冬篭りから抜け出したばかりといっていい二匹の顔色がつやを保っているのも、おそらくは協力し、よく事に望んだ結果だろう。
そういう意味では、彼女達は運が良いだけではなく、そこそこに優秀なゆっくりなのかも知れなかった。

「ゆゆ! まりさ、おちびちゃんがうごいたよ!」
「ゆっ! ま、まだあわてるじかんじゃないのぜ、れいむ」

現在れいむの額には、緑色の茎が生え、そこには鈴なりに実ゆっくりがぶら下がっている。
春という繁殖の季節を迎えたことで、本能に火の点いた二匹はすっきりを行い、その結果多数の子をこうして頂くことが出来た。
別段何の不思議もなく、れいむとまりさは我が子が生まれる事を喜んでいる。
未だ春先という段階だが、それでも食料は調達できたし、何より冬篭りの備蓄はまだまだ残してあった。

そう、春というのは生の季節。
長き停滞が終わり、草木が繁茂し、実をつけ、それを食す動物達もまた盛隆を迎える。
命を繋ぎ、受け渡すのになんら過不足ない時期であった。
それはゆっくりにも適応される。

ふと、蔓の先端についた実ゆっくりが、ぶるりと震える。
云うなれば、出産の胎動であった。

「ゆっ! おちびちゃんがうまれそうだよ! まりさ!」
「わ、わかったのぜ! おぼうしをしくのぜ!」

それを見たれいむが声を出し、まりさがすばやく反応して帽子をクッション代わりに床に敷く。
そうこうしている間にも、先端の実ゆっくり――実まりさの震えは、どんどんと大きくなっていった。

「ゆっ!」
「あっ!」

ぷちり、と小さな音を立てて、実まりさは落下した。
ぽとんと帽子のフリルに着地し、小さく跳ね返る。
実まりさの目は未だ開かれておらず、小さくプルプルと震えていた。

「ゆ……」
「……」

両親は、実まりさの誕生を待っていた。
ゆっくりの誕生は、茎から落ちて完了ではない。生まれ落ち、挨拶を交わしてやっと生まれたと認識される。
だから無言で、実まりさが挨拶してくれる瞬間を待つ。
「ゆっくりしていってね」と、最高の挨拶を返したいから。

実まりさが、ゆっくりと目を開いた。
小さく息を吸い、両親に視線を合わせる。

春は生の季節だ。
ゆっくりも例外なく、春を謳歌する。
少なくとも、今まではそうだった。

だが、これからは違う。

「ゆっきゅちちちぇいっちぇ……はっびゅしょぶええぇっっ!!」

れいむとまりさの顔に、餡子の飛沫がかかる。
実まりさは、爆発した。
少なくとも両親の目から見て、そうとしか思えない、吹き飛び方だった。

もちろん、実まりさは爆発などしていない。
その正体は、ただのくしゃみだった。
脆弱な実ゆっくりの皮は、それだけの負荷に耐え切れず、簡単にはじけ飛んで、四散した。
実まりさは、生まれることすら出来ずに死んだ。

れいむとまりさは固まっている。何が起こったのか分かるはずもなかった。
そうしている内に、次々と実まりさの姉妹達が同じように生れ落ち、同じように挨拶しようとして、同じように爆発して死んだ。
巣穴の中に、餡子の甘い匂いが充満している。
ゆっくりの番は、ただ呆けながら、その現状を受け止めるしかなかった。

巣穴の上、巨木の梢にも、生命の息吹は感じられる。
一見してやや黄色いその花は、わずかな風にも、その多量の花粉を運ばせている。
巨木の名前――人間が種類分けたところの名称は、それは一般して、杉と呼ばれるものだった。

春。それはゆっくりにとって、死の季節に変わった。


花ゆん症


「ゆべぇっ……ゆびぃっ……もうやじゃっ……いやなんだぜぇ……」

ひぃひぃと音を上げながら、まりさは何とか木の根元の我が家へ逃げ帰ることに成功した。
急いで巣の入り口にけっかいを塞ぎ、それで何とか安心する。
抑えがたい掻痒感を覚えながら、それでも家族のためにゆっくりと這って行った。

このまりさは、住居こそ似たようだが先の番とは違う、別の夫婦ゆっくりだった。
もっとも、その苦しみは種類こそ違えど、大して変わらないようではあるが。

「ゆ゛……おぞいよ、まりざ……ごはんざん、もっできだの……?」

やはり先とは別のれいむが、まりさを迎える。
ただこの番の姿は、どうにもゆっくりしていないものであった。

まず、全体的に痩せこけていた。血色は先の番と比べると、まるで蝋人形のそれだ。
肌も荒れ果て、見るからにガサガサとした肌触りをしている。それでいて、ぼつぼつと赤色の斑点を浮かべていた。
おまけに目は血走り涙ぐみ、口の端からは絶えず涎が流れ落ちている。
つまりはこの番、同じく春を迎えたものの、それは完全に運だけに支えられた、まるで無能なゆっくりであった。

「まりざ…はやぐごはんざんをあげないど、おぢびぢゃんがじんじゃうよぉ……」

れいむが両の揉み上げで大切に抱え込んだものを、まりさに突きつける。
それは、この番にとって唯一残された、大切なおちびちゃんだった。

「ゅぎっ……! ぢっ、ぢゅっ……! ぐりゅ、ぢっい……! たじゅ、け……」

目を飛び出さんほどに剥き出し、歯を食いしばった、痙攣を繰り返す全身が赤紫色に染まったそれ。
そんな赤れいむが、必死に親への助けを乞うている。
奇跡にも等しい確立で生き残った唯一の赤ゆっくりであった赤れいむの、そんな現状を今一度見せ付けられて、まりさは真っ赤に晴らした目から既に流れていたものとは別の涙を流した。

この番は、冬篭りの眠りから覚めたと同時に発情して、その場ですっきりを行い、そして多数の子供を生むことに成功した。
だが、いざ食料を得んと巣穴の扉を退かしたと同時に、彼女らの持っていた幸運は底をついた。
外に繰り出すや否や、唐突にくしゃみをしてはじけ飛ぶ子供達。赤れいむが死ななかったのは、どん臭くて巣の外に出ていなかったという偶然に過ぎない。
そして悲劇はそれだけでは終わらなかった。
子供だけではなく、れいむとまりさにも、不可解な苦しみが襲い掛かって来たのだ。

子供達と同じように、くしゃみが止まらなくなった。それだけならまだ良いが、次第に呼吸すら苦しくなって来た。
目は赤くはれ上がり、視界が涙で滲む。ただでさえ性能の悪いゆっくりの目が、ほぼ使い物にならなくなっていた。
そして何より苦痛だったのは、全身に広がる痒みだった。

せいぜいがお下げ、揉み上げの届く範囲しか掻けないゆっくりの身で、それはもどかしくもおぞましい苦しみだった。
いくら掻いても痒みは収まらず、やがて痛みと錯覚するばかりのものになって、そこでようやくそれが自身の皮を裂く痛みだと理解する。
全身を地面にこすり付けて、悶え苦しむばかりとなった二匹はほうほうの体で巣へと戻り、そして同じように全身に掻き傷を作った赤れいむを見つけた。

二匹が何とか理解したのは、巣の中に閉じこもっていると、苦しみが比較的ましになるという事であった。
ただそれでは食料は得られず、腹は空くばかり。
空腹に耐えながらおよそ一日を過ごし、そして赤れいむの窮状に気がついて、二匹――正確には比較的症状の軽かったまりさが、何とか耐えて狩りへと赴いたのであった。

「まりざっ! はやぐごはんざんだじでねぇっ!」
「うるさいのぜ! いまだすのぜっ!」

全身を掻き毟りたい欲求を抑えて、まりさは帽子を外し、その中のものをぶちまける。
無能ではあっても、この季節に相応しく、赤ゆっくりでも食べられるものはそれなりにあった。

「……っぐぎぃ!! ぎゅべびぇびゃびゃびゃびゃ!!!」
「ゆぅっ!?」
「お、おちびちゃん!?」

問題は、無思慮に帽子の中のものを撒き散らしたことにあった。
巣穴の中、一応は隔離されているであろう空間に、何かが舞う。
それはゆっくりの目には認識できない、小さな小さな、花粉だった。

途端、赤れいむは苦しみ始める。
小さな体をじたばたとよじり、小さな揉み上げは自分の体を掴み、そのまま引き裂き始めていた。
目と口からは涙と泡を流し、痙攣は非ゆっくち症のそれに近い。
誰が見ても、これは死ぬ。そう確信できる光景だった。

「やべでぇ! おちびぢゃああん!!」
「どうじだんだぜぇ!? どうじでぐるじんでるんだぜぇ!?」
「ぎゅびびびびび!! ぶぶぶぶぶ!! ぎょごおおおぉぉぉっ!!」

おたおたと慌てふためく両親をよそに、赤れいむは自身の解剖を行おうとしていた。
揉み上げで自分の皮ごと餡子を掻き切り、振り払う。そんなことを何度も続けていた。
やがて、中枢餡を少し掻いたのであろう、赤れいむの動きは途端に緩慢になり、そして次のひと掻きで完全に動きは停止した。
断末魔の表情は、チアノーゼによるどす黒い顔色の、苦痛と絶望に歪んでいた。

「……よぐぼおおおぉぉぉっ!!」
「……ゆがああああぁぁぁっ!!」

やがてまりさとれいむはどちらともなく子を殺した責任を擦り付け合い、取っ組み合いの殺し合いを始めた。
そうして巣穴から飛び出して、やがて掻痒に耐え切れず、互いに傷を掻き毟り始めた。
しばらく時間が経った後、そこにあったのは、不気味に蠕動する二山の餡子の塊だった。
樹上から花粉が降りかかるたびに、それら二つはびくりと震え、くぐもった声を漏らしながら、お互いを傷つけていた。



ゆっくり達の身に降って湧いた災難の原因は、それはつまり花粉症であった。
おそらくはアレルギーと無縁の饅頭が、なぜそのような性質を持ったのかは誰にも分からない。
だが事実としてその性質は、突如として、急速に拡散していた。
ゆっくりの脆弱な身体能力と比較すれば、まるで恐ろしい流行り病のように。

また別の番――三組目のれいむとまりさと、その子供達が、巣穴の中で地面に臥していた。
彼女達もまた、一・二組目と似た環境に住む、花粉症に罹ったゆっくり達であった。

最初の番は、おそらく――彼女達からすれば酷く的外れだが――幸運にも、花粉に反応したのは絶命した実ゆっくりたちだけで済んだ。
二組目は、全員が花粉にアレルギー症状を示し、その結果全滅した。
だがそれも、最悪というほどではない。彼女達の苦痛は、割合短く済んだからだ。

「ぜひ……ぜひ……」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」
「………」

短く済まなかった者たちがここに居た。
このれいむとまりさ、そして子供達は、杉林の中に住居を構えた、野生ゆっくりの群れの一家族だった。

れいむとまりさは、冬篭りの終わる少し前にすっきりを行っていた。
それ自体は、別に珍しいことではない。この番はそれなりに食料も備蓄していたし、本格的な春の訪れまで家族で食い繋ぐには充分と言ってよかった。
だが、巣の入り口のけっかいを退けた途端、れいむとまりさは苦しみのた打ち回って、巣の中に転がり戻った。
外では大量のスギ花粉が、それこそ視界を黄色く染めるほどに巻き上げられていたからだった。

れいむが実ゆっくりを潰してしまわなかったのは、幸運に過ぎない。
ただそれは、本当に幸運であったのかどうか。
茎から切り離された赤ゆっくり達は、仰臥したきり動かない両親達を見て泣いた。
そして間もなく、親と同じように倒れて動かなくなった。

「ぜひっ、ぜひっ」
「ゅ……」
「かひーっ、こひゅーっ」

アナフィラキシーショック。
多量の花粉を吸い込んだことによる、免疫による過剰反応。
本来免疫など無い筈のゆっくりが、それに苦しんでいた。

まず第一に、単純に失神した。その間にも巣穴の外から花粉は舞い込んでおり、夫婦と子供達に降りかかっていく。
次に目を覚ましたときには、呼吸困難からくる激痛と、また同時に発症した非ゆっくち症が、餡子を締め付けた。
こうなってしまっては、もう本ゆん達に体の自由は利かない。
以後は体機能の低下と共に、ゆっくりできない苦痛を延々と味わうことになってしまった。

巣穴の外では、同じように倒れている群れのゆっくり達がそこかしこで見受けられた。
彼女達は、れいむとまりさ達よりかは幸せだろう。
何故ならば、そう遠くないうちに彼女達の体は雨に溶け崩されるからだ。
春は比較的天気の変わりやすい季節。幸運にも雨ざらしの環境に身を置くゆっくりは、一週間以内に死ねる。

れいむとまりさ達は、そういう意味でも不幸だった。
生存状況は比較的良好。おうちは雨から身を守ってしまう。
最早身動きすら叶わない一家は、硬直した体で動くこともなく、無駄なエネルギーロスなく苦痛を一身に受け続ける。
死ぬときは、現在の苦痛に極限の飢えを加え、緩慢な最期を迎えることになる。

「ぜひっ」

この苦痛から逃れる方法は、他者からの物理的な殺傷を以って他にない。
野生動物か、虐待鬼威惨か、あるいはこの状況を理解してくれる心優しいゆっくりの慈悲を借りる以外にない。
だから、れいむとまりさ、そして未だ生まれたのかどうかすら疑わしい子供達は。
失神と覚醒、発狂と復活を繰り返しながら、その度に残った正常な精神で「殺して、殺して」と、誰かに祈るしかなかった。



山のどこか、森のどこかでは、こうした野生ゆっくりの惨状が繰り広げられていた。
そして、街では。

「ゆ゛っ……ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」

日の光すら届かぬ、入り組んだ路地裏の奥。
そこでは一匹の野良れいむが、白目を剥いて末期の痙攣を繰り返していた。
そんな状況が、其処にも、彼処にも。

当然の話だが、野良ゆっくりが野生ゆっくりよりよい状況にある事なんていうのは滅多にない。
大抵の場合、野良ゆっくりは野生ゆっくりに輪をかけて悲惨な状況にいるものだ。
そして今回も、ご多分に洩れず、野良ゆっくりは悲惨の極みにあった。

街の中、風を遮ることができる至る所、時には流れる排水溝の中にさえ、野良ゆっくりは逃げ込んでいた。
野良ゆっくりにとって雨風を凌ぐおうちなど、早々あるものではない。
結果として、野良ゆっくり達は風に流れ運ばれる花粉に悶え苦しみ、それを避けられる場所に殺到していた。

「ゆぎ…じぬ…じぬぅ……でぼ……あんなのよりは……まじだ…よ……」

排水溝の中で水に体を半分削り取られたまりさが、そっと呟いた。
まりさの番であるれいむは、まりさの見ている目の前で狂死した。
いつもの狩りと称して、道路に出てきたれいむとまりさは、花粉を遮る術を知らなかったのだ。

比較的耐性のあったまりさの目の前で、れいむは非ゆっくち症とその他もろもろを発症し、生ける屍と化した。
白目を剥き、口から蟹のように泡を吐いて小刻みに震えるれいむを見て、まりさもまた恐慌一歩手前の状態にあった。
何があったのかは分からないが、このままではまずい。
そう警告を鳴らした本能に従って、れいむを見捨て、そのまま逃げてきたのだ。

逃げる途中で、まりさ自身も発狂しそうなほどの苦しみを経験していた。
逃げついた路地裏で、大量のゆっくりの死骸と、狂いそうなほどの死臭を嗅いでしまい、中身を吐き散らしながら逃げ回った。
突然襲い掛かる呼吸困難の苦しみ、全身を襲う耐え難い掻痒感。
ふと見てみれば、跳ねるまりさのすぐ近くで、別のまりさが気持ち良さそうに自身の顔をアスファルトで摩り下ろしているところを見てしまった。
そうしてまりさは絶叫し、再び逃げ、そしてたどり着いたのが排水溝というわけだ。

(ふつうに……ふつうに、しぬよ……)

まりさの精神は壊れかけていた。
見てはならぬ同胞の狂態を見続けてしまった結果、所謂溶けて死ぬという「ゆっくりしてない」状態をすら、まりさの精神は許容していた。
今日見てきた仲間の死に様は、異様過ぎた。何が起きたのかも分からぬまま、大勢死んだ。
自分は嫌だ。あんな死に方はしたくない。死んでしまうならば、もっと普通の、自分でも知っている死に方がいい。
それならば、まだ納得して逝ける。
苦痛も痒みを紛らわして、ちょうど良いかもしれない。
そういう心境の中で、まりさは死んでいった。
野良ゆっくりのほぼ全てが、このような状況と大差なく、あるいはもっと悲惨な死に方で死んでいった。



「ゆぎぃ……ぜひっ、けひっ、かひゅーっ、こひゅーっ」

一匹の野良れいむが、ぐったりとした我が子を二匹、揉み上げで掴みながら、公園の端を這い進んでいく。
子れいむ、子まりさ共々、死んだような、れいむ自身もそれに近い容態で、必死に前を目指して這いずり進む。
れいむの視線の先、目指すところには、ベンチに座ってジュースを飲む男が、奇妙なものを見るような目でこちらを見ていた。

「ゆっ…けひゅーっ、おにい、かひっ、ざん」
「……どうしたのお前」

これは一種の奇跡だった。
今日日野良ゆっくり、しかも人間に絡むような固体を長生きさせておくほど、人間は甘くない。
男がつい話しかけてしまったのは、近日見かけることのなかったゆっくりが、あまりにも必死な形相でこちらに近付いてきたからだった。

「たひゅ、げほぉ、え゛ぇほっ、たしゅけ、で、くだひゃ、ひゅーっ、い」
「……なんかずいぶん辛そうだけど、どうしたんだソレ」
「わがんな、ひっ、ひゅー、でず」

れいむはぽつりぽつりと話し始めた。
自分は野良ゆっくりであること。
この“びょうき”のこと、そしてそれにいつの間にか罹っていたこと。
そしてそれは街の野良ゆっくりのほぼすべても同様で、その為に今はものすごい数の死者が出ていること。
このままではおちびちゃんが死んでしまう、だから一か八か、人間さんの慈悲に縋ってきたことを話した。

「ふーん……おまえのツガイはどうしたんだ?」
「ゆ゛っ……まりひゃ……」

れいむの番であるまりさは、既にこの世に居ない。
子れいむと子まりさが“びょうき”になって、それから間もなくまりさもおかしくなってしまった。
全身が痒い、とわめき散らし、そうする内に木の枝で目を抉り、喉を裂いて、最後には中枢餡を貫いて死んでしまった。
そうして自殺を図る野良ゆっくりは、今や街の裏側に溢れていた。

「へぇー……お前ら姿が見えないと思ったら、そんなところで死んでたんだねぇ。結構頭使うようになったのか?
 あ、でも死ぬのなら街を汚さないでほしいなぁ。人間が見てないっつっても、虫とか湧いたら困るんだよねぇ。ちゃんと掃除してくれよ?」
「ゆ゛っ………」

何気なく言った男の言葉が、れいむの心を抉る。
覚悟はしていたが、やはり人間にとって、ゆっくりの存在などそんなものなのだ。
ゆっくりできない言葉に餡子の奥が軋む。
れいむは、それを努めて無視し、地面に顔を擦り付けた。

「おでがいじばずっ! おぢびぢゃんをっ! かひゅーっ、おぢびぢゃんをだずげであげでぐだざいぃ!
 れいぶはどうなっでぼいいでず! ぜひーっ、だがら! ぜべで、おぢびぢゃんだげでぼぉ!!」
「あん?」

男の冷ややかな視線が突き刺さる。れいむは背中にじっとりと汗が吹き出るのを感じた。
過去、これで幾度の野良ゆっくりが殺されてきたことか。それはれいむも凡そのところを知っていた。
だが、それで諦めれば、本当におちびちゃんが死んでしまう。
その為ならば、れいむは自分の命を差し出しても惜しくはないと思っていた。

「………」
「おでがいじまず! おでがいじまずっ! ぜひゅっ、かひゅっ、おでがっ、かひっ、じまずっ!」

男の沈黙は続く。
れいむには頼み続けるしか策はなかった。それ以外の何も、野良ゆっくりの身には用意できないのだ。

「……あー、そうだな」
「ゆっ!?」

れいむが顔を上げた。男の顔を見上げる。
男の表情は、まんざらでもないという顔色になっていた。

「飼いゆっくりにしろとかじゃなけりゃ、聞いてやっても良いぞ? 手元にちょうどオレンジジュースあるし、治すくらいならできるだろ」
「はっ……はいぃ!! ありがどうございばずぅ! ありがどうございばずううぅぅ!!!」

れいむは叩頭した。
体の中の餡子が、じんわりと熱を帯びていた。

「最近お前ら見かけなくて寂しかったからなぁ……偶にはこういう事してもバチは当たらんだろ」
「はいっ! はいぃ! じゅうぶんでずぅ! ありがっ、かひっ! ございばずううぅ!!」

言いながら男は、子れいむと子まりさにオレンジジュースを振りかけていた。
死んだようにピクリともしなかった二匹が、ピクリと震える。
それを見たとき、れいむは嬉しすぎて死んでしまうんじゃないだろうかとさえ思った。

「……ゅっ……」
「ゆっく……ち……」
「おちびちゃああん!! おちびちゃっ、おちびちゃああああ、げふっ、ごほっ!!」
「大丈夫か、お前」

感極まったれいむの前で、少しずつ二匹の子ゆっくりが生気を取り戻していく。
乾ききった肌に潤いが戻り、死相と見紛うばかりの表情が、徐々に戻っていった。

「ぉ……おかーしゃ……」
「れい…みゅ……ゆっくち……」
「おちびちゃあああん!! よがっだよおおぉぉ!!」

やがて弱弱しくではあるが、動き出した子ゆっくり達を見てれいむが歓喜の涙を流す。
そうして男に向き直り、再び地面に顔を擦り付けた。

「ありがどうございばずううぅ!! ごのごおんはいっじょうわずればぜええん!!!」
「暇だったからやっただけだ。別に感謝しろとか思ってねーよ」
「ぞれでぼっ! ぞれでぼありがどうございばずうううぅ!!」
「ゆ…おかーしゃん、このにんげんしゃ、だぁれ?」
「ゆっくちできりゅひと?」
「ゆっ、そうだよ! このにんげんさんはおちびちゃんをたすけてくれたんだよ! いっしょにおれいをいおうね!」

春の陽気に相応しい、暖かい空気が男とれいむ達の間に湧き上がっていた。
横一列に並んだゆっくりの家族が、深々と頭を下げて男に礼を言う。

「おにーしゃ、ありがちょー!」
「たちゅけてくれて、ありがとーございましゅ!」
「れいむ、おにいさんにあえてよがっだよぉ!! ほんどうにありがどうございばず!」
「いや、いいって」

子れいむと子まりさが笑った。
れいむも、泣きながら笑った。
男も、どこか嬉しげに、それを受けた。
れいむは今、生まれて最も「ゆっくり」を感じていた。

そして、一陣の風が吹いた。

「へーちょ」
「ゆっく……ぶひゅ! えひゅ! えぶしょ! えびゅっ! ぶびょぉ! ぼおぉぉっ!!」
「くちんっ!! ぐしょんっ!! ぐびょっ! ぐぼぉっ!! ぶぼおおおぉぉぉっ!!」
「ゆっ……ゆううううぅぅぅっ!!?」

男の能天気なくしゃみを他所に、子れいむと子まりさは、凄まじい勢いで己が中身を吹き出し始めた。
突然のことに、れいむの餡子は付いていかない。
和気藹々とした雰囲気が一転し、地獄絵図が展開されていた。

「おにいざっ、おぢびぢゃんをだず…げひっ!? かひゅーっ! げっ、ぜひっ! ぜひっ!」
「ぶぼおおおぉ!! ぶっぼおおぉぉっ!! ぼおおぉぉ!!」
「ごぼっ!! ぎゅぼぼぼっぼっ!! ごぼぶぼおおっ!!」
「へーちょ、へーちょ、へーちょ」

男に頼ろうとしたれいむも、突然の呼吸困難に転げまわる。
そうしているうちに、子れいむと子まりさは、どんどん餡子を吐き出していった。

「ごっぼおおおおおおおぉぉぉっ!!」
「べびょおおおおぉぉぉぉっ!!」

ひときわ大きい音を立てて、子れいむと子まりさが叫ぶ。
二匹の口から吐き出されたそれは、およそ皮の中にすべて詰まっていたであろう、餡子の塊だった。
べちゃりと汚い音を立てて、二つの餡塊が放射状に広がる。
残ったものは、ぺらぺらになった二匹の子ゆっくりのデスマスクだけだった。

「ゆ、ゆ……ぜひっ、ぜひーっ、ぜひっ」
「………あー」

そして、公園を静寂が包む。
れいむのかすれた呼吸音だけしか聞こえないようになった頃、沈思していた男が、唐突に口を開いた。

「お前ら……もしかして、花粉症だったのか?」
「……か、ふん、しょう?」

何それ。
れいむはそう言いたかった。しかし口に出すことは叶わなかった。
それは息苦しさのせいもあるし、そして何より、れいむの心を絶望が包んでいたせいであった。
鼻を少しこすった男は、続ける。

「あー、花粉てのがあってな、花から…今の季節は杉から出る奴。そいつを吸い込むと、くしゃみしたくなったり、目が痒くなったりするんだ」
「ぜひっ、ぜひっ」

れいむはもう返事することすらしなかった。
ただ洩れ出るままに、己の口からひゅーひゅーと音がするな、と思っていた。
男の説明は、れいむにとって理解を超えていたし、理解しようとする気すら起きなかった。
だって、そんなことをしても、何の意味もないから。

「つーかお前ら、ほんっっっ…とーに弱いのな。流石に花粉症で死んだりしねえよ、普通。
 俺も結構お前ら虐待するけど…と言うか実は俺、虐待お兄さんだけど。そんな事今まで知らなかったわ」
「ぜひっ」

呆けているれいむに向かって、男は好き放題に言い放つ。
聞いていないだろうな、と男は思っていた。れいむは二つのデスマスクを見つめたまま、動かない。

「……偶に優しくしてみたらこれだよ。やっぱ俺、愛でるの向いてないのかなぁ……まぁいっか。
 れいむ、気を落とすなよ。おちびちゃんはまた作ればいいってゆっくりは言うじゃないか。次があるって。頑張れよ」
「ぜひっ」

れいむは反応しない。男は潮時かな、と思った。こうなったゆっくりはもう、駄目だ。
ベンチから腰を上げる。

「それにさ、いちいち気にしててもきりが無いよ。はっきり言ってお前ら、一年中死にまくってるしさ。
 梅雨とか夏とか冬とか、とにかく死ぬじゃん。だから春になって死んでもぜんぜん問題ねえよ、きっと。
 これからもどんどん生まれて、そんで死んでくれよ。そのほうが俺も楽しいからな」
「ゆ゛っ」

最後にれいむは少しだけ、反応を返した。
だが、それだけだった。れいむはわが子の皮と餡子を見つめたきり、動かなかった。
やっぱり壊れちまったゆっくりはいまいち楽しくないな、と男は思った。

男は歩き出した。振り向くことはしなかった。あのれいむは、そうきっと遠くないうちに死ぬだろう。
そして何よりも、新しい発見に胸が躍っていた。

花粉症か。
去年までは見なかったな。まーたゆっくりが思い込みの力で変な死に方見つけたのか。
これはまた新しい遊びが増えたかもな。
自然さんは本当にゆっくりを虐めるのが得意だねぇ。

結局のところ、男の焦点はそこに帰結した。
個人による虐待よりも、自然環境に翻弄されるゆっくりを、男は好んだ。
まったく大規模に、雑多に、そして容赦なくゆっくりを締め上げる四季折々の自然現象。
そういうものを観察することこそが、男にとってのゆっくりの接し方だった。

要するに、春だからと言って、ゆっくりが「ゆっくり」する事など有り得なかった。
ゆっくりは四季を問わずに、その命を散らす。
ゆっくりにとっては春夏秋冬、その全てが、死の季節だった。
それが今年になって、より顕著になったと言うだけ。
男にとっては願ったり叶ったりと言ったところだった。

男が去る。公園には、もうれいむ一匹しかいない。
誰も通らぬ公園に、ぜひぜひという、かすれた呼吸音だけが響き渡っていた。

また今年も、ゆっくり達は面白おかしく死んでいってくれるだろう。


おわり

ゆっくりいじめSS・イラスト ※残虐描写注意!コメント(17)トラックバック(0)|

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コメント

5097:

いいなこれ
全体的に面白いわ

2013/03/14 07:16 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5098:

自然に愛されず、排除されゆく宿命の通常種。

2013/03/14 11:10 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5100:

>まーたゆっくりが思い込みの力で変な死に方見つけたのか
不覚にも爆笑したwwwwww
ホントゆっくりはひでぇナマモノだなw

2013/03/14 12:13 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5102:

全ての生き物だけでなく、自然からも嫌われたか。

あと、おにいさんは大阪か?

2013/03/14 13:56 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5104:

脆弱すぎるwww

2013/03/14 18:25 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5107:

まーたゆっくりが思い込みの力で変な死に方見つけたのか

笑うとこなんだろうが寒気がした
本当に気持ち悪い物体だなこいつらは

2013/03/14 21:45 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5113:

花粉症とか生ぬるいネタだなーと甘く見て読み始めたら壮絶で吹いたw
ざまぁ!wwwwww

2013/03/15 14:16 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5115:

おさとうゆっくりが混じってるな

2013/03/15 20:29 | ちり #- URL [ 編集 ]
5118:

自分の身体が弾け飛ぶ程のエネルギーがどこから出てくるんだろう…考えるだけ無駄か

2013/03/16 02:21 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5121:

文章上手で誤字脱字も無くネタも新鮮で大変ゆっくりできました

2013/03/16 02:54 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5140:

黄砂でも死にそうだな

2013/03/16 20:06 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5165:

やはり自然災害ネタはかなりゆっくりできるな

2013/03/17 12:13 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5194:

花粉症は治らないしな。例え一年間生き残ったとしても、また春が来れば壮絶な苦しみが…。
いかん、目が痒くなって来た。

2013/03/18 06:10 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5196:

花粉症でない自分は幸せ者なんだな

2013/03/18 09:57 |   #- URL [ 編集 ]
5206:

確かにゆ虐SSなんだけど、今まさに花粉症のおにいさんの心までえぐるので最後まで読めなかったのぜ(震え声)

2013/03/18 14:08 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5278:

PM2.5とかでゆっくりが死ぬ時が来るかもねwwwww

2013/03/21 23:52 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
8758:

花粉症って花粉に化学物質がついてなるもんなんだぜ

2013/07/11 18:52 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]

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