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2426:可愛いあの子と家ゆっくり

2013/03/30 (Sat) 07:00
近頃気になっていることがある。
さみしい一人暮らし、夜中にふと目が覚めることもあるだろう。
そんなときシンと静まり返った部屋にふと耳を澄ますと、窓ガラスをなでる風の音や遠くに聞こえるボイラーの駆動音に混じって、
聞き逃してしまいそうなほどかすかにではあるが、こんな音が聞こえるのだ。

『ゆ・・・ゆ・・・』

いや、訂正しよう、これはおそらく”音”ではなく”声”だろう。
ついに我が城にもあいつらがやってきたのだ。


あいつらの名前は”家ゆっくり”という種類のゆっくり。
ゆっくりは外にでてちょっと自然が多いところや暗がりに行けば、大抵居るといって過言ではないポピュラーな生き物で、
あんなにたくさんいるのに、いまだにイマイチよくわからない生体系の謎の生き物だ。
やつらは人間でいうところの生首のような外見で、体長は成体でサッカーボールほどで、ほとんどの場合雑食、多繁殖、不衛生。
そして人間にとってこいつらの害のうちもっとも嫌がられているのが”鳴き声”だろう。
『ゆっくりしていってね!』
ゆっくりといえばこれ。
出会いがしらに「ゆっくりしていってね」から始まる大音量のうるさい鳴き声。
これは我々人間が理解できる言葉そのもので、犬猫の「わんわん」「にゃーにゃー」と違い、
何を言われても分かってしまう、そして向こうはこちらがその言葉を聞いてどう思っているかなんて考えちゃいない、
というところが非常に重要なのだ。

おっと、つい長くなってしまった、というのも俺が日ごろ奴らと出会うたびに、
「おいくそじじい!あまあまよこすのぜ!」
だの
「ゆふふっ!れいむのかわいいあかちゃんみせてあげるね!」
『ゆくちー!』
だの
一々プチイラッとさせられ続けているせいだろう。
はっきりいって俺は奴らゆっくりってやつが大大大嫌いだ。
世の中には可愛い愛らしいと野良のゆっくりに餌付けしているようなやつらもいるが後ろから頭を叩いてやりたい気分だ。

と、また脱線してしまった、今回の本題は”家ゆっくり”だ。
名前だけ見ると家に住むゆっくりっていうことは飼われているのか?と思うかもしれないがそんな生易しいものじゃない。
ようはゴキブリだ、いやゴキブリ以下のド畜生だ。
奴らの体調は大きくても2・3センチ程度、小さいものだと数ミリのものも存在する。
どこからか侵入し、家具の隙間に入り込み巣をつくり、その家にあるあらゆる食えるものを捕食する。
そして排泄物をそのままにし、2匹以上が同テリトリーにいるとまず子づくりをしてぽんぽん増える。
前述したように普通のゆっくりと同じでなき声もでかい。
数センチ程度の家ゆの放つ声も、数が増えれば普通に聞こえてこちらの神経をがりがり削ってくる。
まだ家ゆに侵入を許したことのない諸兄も想像してみてほしい。
耳を澄ませば箪笥や冷蔵庫の裏、はては通風孔、荷物の段ボールの中、etc…から
『ゆっ、ゆっ、ゆっ』
『かわいいよー、かわいいよー』
『れいむはきょうもびゆっくりなのぜー!』
『むーしゃむーしゃしあわせー!』
虫唾が走り背筋が凍り吐き気を催し精神異常者じゃなくても全身を掻き毟って死にたくなるだろう。
え?俺だけ?いやそんなはずないさ。



「と、いうわけで店員さんにホイホイすすめられて買ってきました『マジ!ユル☆サン』!!
 説明しよう!『マジ!ユル☆サン』我らがゆっくり嫌いの救世主株式会社らいゆんの誇る
 対ゆっくり用無差別殺戮兵器『ユル☆サン』をさらに進化させた究極のウェポンだ!
 これが噴き出す霧を吸い込んだ瞬間憎き家ゆどもは苦しみ嘔吐し断末魔を上げる暇もなく絶命するのだ!
 ハーーーーッハッハッハッハ!覚悟しろ畜生共!とぅぅう!!!」

薬局で商品を購入してからアゲっぱなしのテンションのまま製品を床にセットする。
ここまではよかったのだが使い方がわからず結局説明書片手に四苦八苦し、やっと起動することに成功した。
円柱状の製品から、勢いよく白い霧が噴き出していく。
「えーっと何々、人体には無害ですが使用後はなるべく換気をしてください、ね、ってか無害なのかこれ」
確かに霧のにおいをかいでもわずかに辛いようなにおいがするだけで特別気分が悪くなったりするようなことはなかったので、
俺はそのままテレビをつけてくつろぐことにする。
早めの発見早めの処理が害ゆ退治には一番重要なのだ、上機嫌の俺はビールととっておきのつまみを取り出して勝利の晩酌をすることにした。
すると…

「ぐわああああ!ぐ、ぐるぢいいいい!!」
「えっ?」
断末魔の悲鳴を上げながら家具の隙間から飛び出したのは、想像していた豆饅頭ではなく、
小さい女の子が遊ぶのに使う人形のような大きさの小人だった。
「ぢんじゃう・・・じんぢゃうよ・・・おっぉお・・・うっ・・・」
全身茶色の服に身を包み、ぽっこりと膨らんだ大きなスカートからは可愛い足がのぞいている。
顔を伏せた黄色の髪の毛の後頭部には服と同じ色の大きなリボンで、これまた大きなポニーテールが揺れていた。
苦しみでもがくように伸ばした手は、やがてゆっくりと力を失い床に下される。
「おっ、おい大丈夫か!?」
訳が分からず思わず駆け寄り、手ですくってやる。
掌の上で横たわる姿はほほの丸い小さな女の子そのもので、なぜこんな子が隙間から飛び出してきたのか全く分からない。
女の子は眉間に皺を寄せながら口をパクパクとさせる。
「な、なんだ!?どうした!?」
「くうきが・・・からいのぉ・・・どうして・・・?やま・・・わるいこと・・・して・・・」
「ちょ、ちょっとまってくれ」
どうやら女の子は『マジ!ユル☆サン』の霧にやられてしまったらしい、あまりに不憫なので急いで窓を開けて霧を外に追い出した。


しばらくすると女の子は顔色もよくなり、テーブルの上でちょこんと座って微笑んでいる。
「ありがとーおにーさん!」
「はは、どういたしまして…」
あまりに無垢な微笑みに、アレを焚いたのは俺だということは言い出せなかった。
「ところでキミは誰なんだ?」
「ゆ?やまめ?やまめはやまめだよ!」
「やまめちゃんっていうの、ふうん…やまめちゃんはえーっと、もしかして俺にしか見えない妖精さん?」
こんな小さな女の子が突然!なんて何年前のアニメみたいな話、とてもじゃないけどまともに受け止められない。
もしかしたら日ごろの疲れとかが見せた幻覚かもしれないと、一応聞いてみる。
本人に聞くのもどうかとは思うが。
「ようせいさん?なにいってるの?やまめはゆっくりだよ?」
「うっそだー!俺はやまめちゃんみたいなかわいいゆっくり見たことないぞ、ゆっくりってのはもっとこう小憎たらしくて…」
そういいながらそばに置いてあったスマートフォンで検索をかける。
『ゆっくり やまめ』検索クリック、便利な時代になったものだ。
検索マークがゆっくりと回転し、結果が表示される、何かがひっかかったらしい。
だが文字だけではよくわからないのでそのまま画像検索に移行することにした。
「・・・まぢかよ」
画面に表示されたのは、金髪ポニーテールの生首だった、それはまさに目の前のやまめちゃんそっくりの生き物だ。
「いったでしょ?やまめはやまめだよ!」
「ん~・・・ってことはなにかい、君はもしかしてゆっくりやまめで胴付きで家ゆなわけ?」
「いえゆ~?」
「家ゆっていうのは人間さんのおうちに住むちっちゃいゆっくりのことだよ、ここはお兄さんのおうちなんだけど、やまめちゃん知ってた?」
「しらなかったー!おにーさんよろしくね!」
「はいはいよろしく…」
やまめちゃんは相当マイペースなようだ、今一つ会話のキャッチボールがうまくいかない。
俺は俺のつまみに目をつけて小さな口でかぶりつき始めたやまめちゃんを後目に、携帯を続けて操作した。
『家ゆ やまめ』…どうやらやまめ種も家ゆにはごく稀に存在するらしい。
『家ゆ 胴付き』…あまり情報は引っかからない、だが愛玩用の小さな胴付きゆっくりは存在しているので、居ないということはないようだ。
『家ゆ やまめ 胴付き』…まさかの情報なし、引っかかったといってもブログや掲示板の他愛ない書き込みが主だ。
画像検索をかけてみても有益そうな画像はひっかからなかった。
「ってことはもしかして新種発見やまめっちってやつ?」
”やまめ”に反応して名前を呼ばれたとおもったのか、やまめちゃんは小首を傾げてこちらを仰ぎ見る。
一瞬勃発したかとおもった小人騒動は、一転して本来の家ゆ退治という目的の原因が目の前にいるという状況に変わってしまったようだ。
といっても正直ゆっくり嫌い、家ゆ大っ嫌いの俺をもってしても、今すぐやまめちゃんを叩き潰そうなんていう考えは起こらなかった。
愛らしい外見、ふつうのゆっくりとは違いほほがまるいという以外にはほぼ人型のそれを握りつぶしたりすれば、目覚めが悪くなることうけあいだろう。
アルコールが回って少々霞がかかった頭をぼりぼりと掻いて、ふぅとため息をついてから俺はやまめちゃんに告げた。
「ま、やまめちゃん、うちでゆっくりしてくかい」
「うん!やまめゆっくりするよ!」
こうして俺とやまめちゃんの同居生活が始まったのだ。
あとで聞いた話では俺が知らなかっただけでそれなりに長い付き合いだったらしいが…。





さて同居生活と一口にいったところで、今までのように自由に家のスペースを貸し出すということは難しい相談だ。
やまめちゃんだって生き物だ、外見は頬の丸い美少女だとしても、食事をとれば糞もする。
彼女曰く”うんうん”らしいが、それはそれ、たとえ仮に本人が場所を決めていたとしても床にされて気分のいいものではない。
俺は押し入れにつっこんであった、はるか昔のもう何に使ったかすら覚えていない小さな虫かごを、やまめちゃんのお家にしてあげることにした。
所詮ペットと言ってしまえばそこまでだが、そこはある程度意思疎通の図れるゆっくり、
彼女の意向をなるべく聞き入れる形でそこを生活スペースにしてもらうことにしよう。
「ゆぅ・・・せませまだよー」
何もない虫かごの中に入り、端から端まで歩いて透明な壁に手をつき頬をむにゅうと押し当てるやまめちゃん。
「ま、そこは我慢してくれ、いい子にしてくれたらもう少し大きなおうちを買ってあげるから」
「ほんと?たのしみ!」
やまめちゃんは壁の向こうの俺に向かって、にぱっと微笑みを投げかける。
虫かごの中の小さな少女という光景は、見様によってはなかなか背徳的な雰囲気だ。
「やまめちゃん、なにかほしいものはあるかい?」
「ん~、べっどさんがほしいよ!」
欲しい物がベッドとは、なかなかハイカラな生き物だと思わず苦笑してしまう。
「ベッドねぇ」
人形用の小さなベッドなんてものがあるわけではない、どうしたものかと考えていると、やまめちゃんはかごの壁をぺしぺしと叩いて俺を呼んだ。
「なんだい」
「やまめのべっどさんあるよ、とってきてもいい?ここからだして!」
一瞬、逃げるための口実か?などと思ったが、無邪気な顔を見ると邪推でしかないかという気がして、
俺は素直にかごから出してしばし自由にしてやることにする。
するとやまめちゃんは迷いなく家具の隙間に体を滑らせ、なにやらごそごそと音を立てながら戻ってきた。
「おかえり・・・って、げげっ!」
「べっどさ~ん!」
誇らしげな笑みを浮かべながら何かを引きずってきたやまめちゃん。
俺はそれをみて思わず声をあげてしまった。
それはよくよく見るといつか失くしたはずの俺の靴下で、小さな手がつかむ靴下の口からは、
何に使ったかわからないようなティッシュの残骸が顔をのぞかせていた。
「うわあああああ」
おそらく靴下の形状からするとそれと同じティッシュか何かが中にも詰まっているのだろう、
小動物の寝床らしいといえばらしいが、とても中を見る気にはなれず、俺は素早くそれを奪ってゴミ箱にボッシュートする。
「やまめのべっどさんがぁーー!!どうしてひどいことするのぉ!?」
「あーあーあーきこえなーい」
家に寄生する勝手な同居人ということは分かってはいたつもりだったが、
やはり根本的な考え方のミゾは埋められそうもないな…などとセンチな気分になってしまった、ぶっちゃけ引いた。
ぷりぷりと怒るやまめちゃんを無視して、俺は次の休みには絶対家具裏を徹底的に掃除してやろうと心に誓う。

すっかり機嫌を損ねてしまったやまめちゃんを捕まえてかごに戻す。
俺の使い古しの靴下(使用済みティッシュ入り)が相当お気に入りだったのか、半べそかいてすらいる。
仕方ないので俺は洗って干してある新しめの靴下を提供してやることにした。
「いいの!?」
「ああいいよ、汚いのより千倍マシ」
できるだけ元の状態を再現してやったほうがいいかと思い、ティッシュを数枚与えると、
やまめちゃんは嬉々としてそれを受け取り、小さな両手を使って器用にまるめたり折ったりして靴下の中に巣を作っていく。
しばらくすると突然勢いをつけてずぼりと頭から靴下にダイブし、足だけを残して埋まってそのまま微動だにしなくなった。
たっぷり数十秒その状態を維持してから、もぞもぞと後ずさりで這い出てくる。
「あ、ノーパンなんだ・・・」
いかんいかん何を見ているんだ俺は………。
「んふぅ~、とってもゆっくりできるよ!」
夢中になって作業してほんのり赤みを帯びた頬に、無造作に突っ込んだせいで乱れた髪の毛や衣服がちょっぴりエロっぽかった。
新しいねぐらは思いのほか快適だったらしい。

その後も有り合わせのもので、ご飯用スペースやらおトイレやらを設置していく。
といっても俺は彼女が欲しいといったものを与えるだけだったり、こういうのどう?と提案する程度で、
実質的な内装づくりは全てやまめちゃんが行っていった。
そこらへんは種族が違っても女の子、といったところなのだろう。
一通り作業が終わり、虫かごの中がまさに我が城というような状態になったところで、
やまめちゃんはこちらを向いて誇らしげに胸を張って言い放った。
「ここをやまめのゆっくりぷれいすにするよ!」
全身をつかった作業でとっちらかった髪の毛や、汚れのついた頬もそのままに、
実に嬉しそうにお家宣言をするやまめちゃん。
ついついこっちも微笑ましい気分にさせられてしまう。
「ふふっ、どうぞゆっくりしていってね」
「おにーさんもゆっくりしていってね!」



ゴキブリか家ゆか、と言われているほどの嫌われ者退治を行ったところの今回の騒動。
これにて一件落着!
…と、そうそううまくは行かないのが世の常である。
ちょっと変わったペットを手に入れたぞ、という程度で終わったと思いすっかり気を抜いてしまった俺。
不幸やアクシデントっていうやつはこういう気持ちの隙間を、わざわざ狙いすましてやってくるものなのだ…。





俺とやまめちゃんが出会ってから数日後の夜。
『ゆ・・・ゆ・・・』
大音量というわけではないが耳につくあの声が、俺を眠りの淵からひっぱりだした。
「うぅ~ん・・・やまめちゃんうるさいぞぅ・・・」
結局俺が悩まされていた家ゆ騒動の原因はやまめちゃんだったので、あとはやまめちゃんが静かにしてくれればいいだけだ。
だけどここ数日思い出したかのようにやまめちゃんが夜泣きを初めてしまった。
俺は明日ことは注意してやるぞと思いながら、もぞもぞと布団をかぶって頭を覆い隠し再び深い眠りにつく。

だが、次の日の朝、靴下ベッドに下半身を突っ込みながら、
餌として与えていたピーナッツを齧るやまめちゃんに詰め寄った俺は、違和感を覚えることになる。
「ゆ?やまめはずっとおねむだったよ?」
「ずっとって、夜中も?」
「よなかってまっくらなとき?」
「そうそう、真っ暗な、俺が寝てるとき」
「おにーさんがねてるならやまめもねてるよ?」
「でもほら、夜中に起きてちょっとお歌を歌ってみたくなったりとか」
「なあにそれ?まっくらならやまめはねて、あかるくなったらやまめはおきるよ」
「そ、そう・・・」
あまりに無邪気な反応に、どうせやまめちゃんが犯人だろう、いやそうに違いないと思っていた俺は、かるい罪悪感さえ抱いてしまう。
でもやまめちゃんじゃないとしたら一体…考えられるとしたら選択肢は一つ、いやでも…。
そんな思いを抱えながら、俺は会社へと出勤するのだった。


帰宅後、いつものように部屋着に着替え、やまめちゃんの餌やフン置き場をチェックして、ぼんやりと過ごしていると、
やまめちゃんが虫かごの壁をティッシュで拭き掃除しながら、俺に話しかけてきた。
「ねーねーおにーさん」
「なんだいやまめちゃん」
「さっきそこでれいむをみたよ」
「はっ!?え、れいむってゆっくりの?」
「そだよ、おにーさんがいってた”いえゆ”ってやつだとおもうよ」
「ま・・・まじか、そうか、やっぱり・・・」
前にユルサンを炊いた時に、出てきたやまめちゃん以外居ないとすっかり思い込んでいた。
というよりも、仮にいたとしてもあれ以来しばらく平和な日々が続いたので、
あの時やまめちゃん以外は全て死滅していたと思っていた、思いたかったのだ。
考えても見れば、侵入経路と住み着きやすい状態さえあれば、害獣っていうやつはそうそういなくなるものではない。
たかが一回程度駆逐したところで、所詮それは気休めに過ぎなかったのだ。
「お、おのれ家ゆっくり・・・」
絶対に許さない!絶対にだ!
俺がメラメラと黒い闘志を燃やしていると、やまめちゃんがクスクスと笑って俺に声をかける。
「おにーさんって、ほんといえゆがきらいなんだね」
「ああ、だいっきらいだ!」
「おもしろいねおにーさん、ねえねえ、やまめがいえゆやっつけてあげようか?」
「へ?」
「だして~」
「あ、おう」
小さな手でぺしぺしとプラスチックの壁を叩くやまめちゃん。
俺は突然のことに思わずすんなりとやまめちゃんを出してやってしまう。
「じゃあいってくるね、ちょうどあまあまがたべたかったんだ~」
「い、いってらっしゃい」
やまめちゃんは軽く俺に手をふって、大きなスカートとポニーテールをゆらゆらと揺らしながら、
家具の隙間に向かってパタパタと走っていく、そして器用に身を滑らせて家具の隙間に入って行ってしまった。
「ん?どういうこと?」
俺はやまめちゃんが走って行った方向を見つめながら呆然としてしまう。
やまめちゃんの言った、『俺は家ゆが嫌い』『家ゆをやっつける』そして『あまあまが食べたい』が、今一つ俺の中でつながらない。
彼女は一体なにをしたかったのだろうと考え出したとき、俺の耳にクソうるさい不快な声が飛び込んできた。
「うわああああああああああああああああ!」
「やまめだあああああ!!!」
「おちびちゃんにげてえええええ!!!」
「やまめちゃんだぞ~」
「うるっせ・・・」
思わず俺は耳をふさいでしまう、それでも聞こえる叫び声。
どこか聞き覚えのあるうるさくムカつく悲鳴、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのものだろう。
「いやだぜええ!しにたくないのぜ!しにたくゆ”っ!!!」
「まりざあああああ!やめでねごないでねれいむだけはたすけゆ”っ!!!」
「ゆっくちにげりゅよっ!」「ゆっくちこないでにぇ!」「ゆんやああおうちきゃえりゅうう!!」
「おとなしくしろぉ~」
緊迫感と絶望感あふれる叫び声に混じって、間延びしたやまめちゃんの声が聞こえるのが、かなりシュールだった。
にゅっ、ぷるんっ!
効果音にするとそんな感じだろうか、けれどこれを見た俺は思わず鳥肌ものの映像が目の前で繰り広げられる。
やまめちゃんが入っていった隙間とは反対側の小さな隙間から、大きさ一センチ前後くらいだろうか、
とにかく小さな家ゆっくり達が顔を出し、飛び出してきた。
おそらくさっき聞こえた悲鳴から察するに、子れいむと子まりさなのだろう。
一匹、二匹、三匹…十数匹が次々飛び出しては蜘蛛の子を散らすようにでたらめに走り去っていく。
吐き気と軽い眩暈に襲われながらふと我に返り、手近にあった雑誌を丸めて応戦しようとしたところで、
別の隙間からやまめちゃんが颯爽と飛び出す。
「あっはははははーー!!」
妙にテンションの上がったやまめちゃんが、普段ののんびりとしたイメージとは真逆の俊敏な動きで一匹また一匹と、
逃げ惑うゆっくり達をとらえていく。
あるものはつかんで投げ飛ばされ、あるものは脳天を踏みつぶされ、動きを止めていく。
やまめちゃんはあっという間に奴らを全員仕留め、一か所に固めてその上にまたがった。
「いやじゃ・・・いやじゃよぅ・・・」「たしゅけてね、れいみゅをたしゅけてね・・・」「ゆぴぃぃぃぃ・・・」
まだ息のある子ゆ達の命乞いや鳴き声がスカートの中から聞こえてくる。
「んっあっぁ・・・」
それらを無視して、何故かやまめちゃんは突然恍惚とした表情を浮かべ、ぷるぷると震え出した。
「ふぅ・・・」
うっとりと息を吐いてからその場をどいたやまめちゃん、やまめちゃんがいた場所には、子ゆ達と入れ替わって白い塊が置いてあった。
「おにーさん、これたべていーい?」
「え、それ食べるの?」
「うん!」
「べつにいいけど・・・」
「やった~」
俺の答えに、やまめちゃんは両手を挙げてひらひらとさせ、喜びを全身で表す。
いい運動になったのか、頬は紅潮し、実に満足そうだった。
「おかたづけしてくるね」
やまめちゃんはそういうと、最初に入っていった隙間に再び潜り、さっきと同じような白い塊をいくつも運び出してくる。
「ふう、これでおわりー、ねえねえおにーさん、これおうちにいれてくれない?」
集め終わった白い塊を指して、やまめちゃんは俺におねがいをする。
「別にいいけど、ってなんだこりゃ」
白い塊を触った俺は、なんだかネバつく感触に思わず顔をしかめてしまう。
「なあやまめちゃん、これなにさ」
「いえゆだよ?」
「まじで」
「まじだよ?」
やまめちゃんは手近にあった塊の一つに手を差し込み、ぶちぶちと音と立てて割り開く。
すると中から、うつろな目をして息絶えているれいむが顔をだした。
「げっ、キモ」
「おいしいよ?」
やまめちゃんはれいむの顔の一部を手でちぎると、そのまま口に運び、笑顔になった。
「あまあま~しあわせ~」
「よ、よかったね・・・」
バイオレンスなその光景に、思わず胸やけしてしまう。
「おにーさんもたべる?」
「遠慮します、ところでその白いのはなんなのさ」
「ねばねばさん?」
「ねばねばさんっていうの?これ、これはなんなの」
「ねばねばさんは、ねばねばさんだよ、みててね」
そういうとやまめちゃんは俺に背を向けて、おもむろにスカートをまくりあげ、軽く足を開いた。
まるくて可愛いおしりが俺の目に映る。
「んっ・・・あっ!」
悩ましげな声を上げてやまめちゃんが力むと、おしりの間から白い糸状のものが勢いよく床に降り注ぐ。
「これが・・・ねばねばさんだよ・・・」
頬を紅潮させたやまめちゃんは、スカートを下して床にたまった糸をすくい、俺に差し出した。
たしかにそれはさっき見た塊のように白くてねばねばしていて、まるで蜘蛛の糸のようなものだった。

全ての塊を片付け終わってやまめちゃんをかごに戻すと、やまめちゃんは収穫物を自らの餌箱のそばに置いて、実に満足そうだ。
「ねえねえやまめちゃん、また家ゆが出たら退治してくれる?」
俺が思いきって相談すると、やまめちゃんは俺に笑顔でピースサインを送った。
「まっかせてー!いままでもそうだったんだよ?」
その後聞いた話では、今までうちに住んでいたやまめちゃんは、発生した家ゆを駆逐して食糧にして生活していたらしい。
俺はあの日家ゆを退治するつもりでユルサンを炊いて、やまめちゃんを捕獲した。
それが結果として家ゆの繁栄をもたらすことになってしまっていたとは、なんとも本末転倒な話である。


その日俺は、虫かごはそのまま家として利用してもらうことにして、
やまめちゃんが自由に箱から出入りすることができるようにかごを改造してやった。
やまめちゃんはきれい好きで、たとえ自由に外に出ることができたとしても、糞尿をまき散らかしたりはしなかったし、
おうちの虫かごを気に入ってくれていて、普段はそこ居て俺に愛くるしい姿を楽しませてくれる。
そしてなんと、頼めば今まで家ゆ達が残していったうんうんや、その他生活汚れを隙間に潜って綺麗にしてくれたりもしたのだ。
まさにやまめちゃんさまさまである。
全てが上手くいき、これからが順風満帆に進むと思っていた…。





ある日俺が帰宅すると、部屋の隅にやまめちゃんが立っていた。
けれどそのやまめちゃんは、俺が毎日見ていたものよりもずっと体が小さく、
俺と目があった瞬間に肩をビクリとさせ、どこかよそよそしい。
疑問に思った俺はやまめちゃんのかごの中の靴下のベッドをつつくと、靴下がもぞもぞと動き、やまめちゃんが顔を出す。
「あれ?いたんだ」
「ゆ?おにーさんおかえりー」
やまめちゃんは眠っていたのか、むにむにと目をこすって大きなあくびをする。
俺がさっき目撃した小さなやまめちゃんは、再びそこを見るとすでにいなくなってしまっていた。
「ん~??変だな」
「どうしたの?」
「いやね、さっきそこに小さいやまめちゃんがいた気がしたんだよ、疲れてるのかな・・・」
「!!?うそ!おにーさんそれほんとう!?」
俺のつぶやきに、やまめちゃんは珍しく声を張り上げて食いついてくる。
「あー、見間違いじゃなきゃ、たぶん」
俺がそういうと、やまめちゃんは突然そわそわとして、居ても立っても居られないという様子になってしまった。
「どうしたのさ」
「あのね、ずーっとまえにね、ゆめでままがいってたの」
「夢で、ママ?」
「うん、ままはやまめになんでもおしえてくれてね、かりのしかたや、
 ひとりでいきていくほうほうも、ぜんぶままからおしえてもらったの」
「そうなのか」
そういえば聞いたことがある、ゆっくりは最低限必要な知識や記憶の一部を、親からそのまま受け継ぐことができるのだそうだ。
やまめちゃんが言っているのは、きっとそういうことなんだろう。
神妙な面持ちで語るやまめちゃんに、俺は思わずかしこまって聞き入ってしまう。
「それでね、ままが、ひとりでいきてていつかおとなになったら、やまめをさがしにいきなさいって、
 それかいつかやまめをべつのやまめがむかえにきたら、ついていきなさいって、いってたの」
「え、それって・・・」
やまめちゃんはどこかさみしそうに眼を伏せた。
「ごめんなさい、やまめ、いかなきゃ・・・」
「ま、待ってくれよ、突然すぎるって」
そう、あまりに突然のことだ、俺はやまめちゃんのことを気にいっていたし、これからもずっとうまくやっていけるって信じていた。
「夢のことなんて、もしかしたら本当じゃないかもしれないじゃないか、もっとここでゆっくりしていきなよ」
思わず必死になって引き留めようとする俺、しかしやまめちゃんは顔を上げてはくれなかった。
「おにーさんには、いっぱいいっぱいありがとうってきもちでいっぱいだよ、でもままのいうことはきかないといけないの・・・」
「そうか・・・」
全身の力が抜けてしまったように、その場で呆然と立ち尽くしてしまった。
やまめちゃんの表情は俺からは見えない、やまめちゃんも心苦しいのか、重たい空気が二人の間に横たわっていた。
「さっき見たやまめは、あっちにいたよ、今追いかければ会えるかもよ、いきな」
そんな空気に耐えられなくなって、俺はできる限り明るい声を出したつもりでやまめちゃんを促す。
けれど自分でもわかってしまうほどに、こみ上げる何かが俺の声を少しずつ鼻にかかったような声にしていく。
「ごめんなさい、もしもちがったら、かならずすぐにもどってくるから!」
やまめちゃんは結局俺のほうを見ないまま、俯いた状態で俺の指差す方向に駆け出していった。
これでいい、これでいいんだ、俺は何度も自分に言い聞かせる。
今振り向かれたら、もしかしたら閉じ込めてでも引き留めてしまうかもしれない、そんな予感さえしていた。



やまめちゃんは滑り込むように家具の隙間に入っていき、結局その日俺のもとに戻ってくることはなかった。






「ただいま」
部屋の中にむなしく響く声、返ってくる音はせいぜいボイラーの駆動音くらい。
温かみのない部屋と、意識すると耳にこびりつく単調な音の波、一人なのだということを認識させられる。
やまめちゃんと過ごしたほんの短い時間、指折り数えられる程度の日数の中に、
こんなに未練が残ることがあるなんて思ってもいなかった。
あれから数週間が立った。
やまめちゃんが去って行った次の日、俺は部屋を掃除し、家具の裏に小さな穴を発見する。
忌々しい家ゆはあの穴から侵入していたのだろう、
けれど俺はやまめちゃんとの繋がりを消してしまう気がして、その穴をふさぐことはできなかった。
俺が与えたやまめちゃんの虫かごのお家は、今もそのままに置いてある。
もちろん適度に餌箱の中身を新しくして、手入れをしている、
そんなことが意味のないことなのかもしれないことは、十分わかっているつもりだ。

着替えを済ましてテレビをつけ、コンビニで買ってきた飯を食う。
何を考えるわけでもなくぼんやりとしていると、部屋の隅で小さな物音がした。
「まさか!」
思わず声を上げる、居てもたってもいられなかった。
「なんだ・・・」
立ち上がり音のする方向を見やるとすぐに落胆が俺を襲う。
「ゆっ!ゆっ!しあわせー!」
遠くからでも聞こえる声は、耳につく不快な声。
まん丸の体に、ぎょろぎょろと動く大きな目から涙なんか流して飯を貪る家ゆの姿がそこにあった。
まだあいつは気づいていない、そこにあるのは俺がやまめちゃんと別れて少ししてから買ってきた、
『アニキ印の家ゆっくりホイホイチャーハン』だ。
何故チャーハンなのかはよくわからないが、これは簡単に言えば家ゆ用のネズミ取り。
つまりのうのうと食事をしているあいつはすでに檻の中、かったるいが後で処分することにしよう。
やまめちゃんがいなくなってから、壁に開いた穴を修理することもなかったせいで、
たびたび家ゆの被害にあうようになってしまった。
けれどユルサンを炊くことはできない、運よくあの時のように出会えたらいいものの、
万一この家のどこかや穴の向こうに住んでいるかもしれないやまめちゃんを、
殺してしまうような危険を冒すことはできなかった。
「ゆゆっ!?うんうんでるよ!うーんうーん!」
「チッ・・・」
飯を食ったらクソを出す、生物として当たり前といえば当たり前の行動なのだが、
どうしてゆっくりっていうやつは見ていてこんなにも不快なのか。
実はやまめちゃんは家ゆっくりなんかじゃなくて妖精で、俺の妄想が生み出した架空の存在だったのではないだろうか。
この目の前で丸いケツをゆがめてクソをひりだしている饅頭と、
やまめちゃんが同類であるという事実よりは、そっちのほうがマシなような気がしてきた。
「あーあ、めんどくせ」
苛立ちともやもやで胃がムカムカとしてきた、俺は晩酌用に買ってきたビールをあおってティッシュを数枚引き出す、これがクソ饅頭の棺桶になる。
「ゆふー、まんっぞくっしたよ!おうちかえる!・・・ゆんやあ!どうしてでられないのお!?」
あの間抜けは小さな身体を檻の細かい網目に食い込ませて、今度は絶望の涙を流している、どうやらやっと自分の置かれた状況に気付いたらしい。
いや、正確に言うとまだ出られない箱の中に閉じ込められたという程度の認識だ、
おそらくこの後自分が何のためらいもなく殺されるなんて思ってもいないだろう。
俺はその現実を思い知らせてやるため、あくまで事務的に箱を開け、ティッシュでくるんでそいつを圧殺し、ゴミ箱に捨てた。
なんてことはない、単なる害虫駆除だ、一寸の虫にも五分の魂というが、
人間様には自分たちの衛生的に悪いだの不快であるという殺すべき十分な理由がある。
だけど決して晴れた気分ではない、一匹見たら十匹五十匹、こんな無益な一方的な殺戮とストレスとの戦争が続くのかと思うと辟易してしまう。
再び罠として活用するために、先ほど哀れな家ゆをとらえた檻を利用可能な状態に持っていく。
これが案外と難しい、餌をセットするのには扉部分を上げてセットし、抑えたままひっかけを組んで…。
「痛てっ!」
バチンと音がして、俺の腕に金属のパーツが食い込む。
酒が入ったおぼつかない手と、濁った思考ではスムーズに作業が進まなかった。
俺は苛立ちに任せてぽいと檻を投げる、壁に当たって床に落ち、ガチャリと無機質な音が部屋に響いた。


「あーあ、やまめちゃん帰ってきてくれよ・・・」
深いため息をつき、その場にうなだれて愚痴を吐く。
当然その声に返すものはいない…はずだった。
「よんだ?おにーさん」
「やまめちゃん!?」
家具の影からひょっこりと顔を出したのは、まぎれもなくやまめちゃん。
一瞬酔って見た幻覚かと思った、けれどあまりの驚きにビール一本分の酔いなんて吹き飛んでしまう。
「本当に本物のやまめちゃん!?」
「ほんとーにほんとのやまめだよ、いなくなってごめんね・・・」
「いいんだ、いいんだよ、お帰り、帰ってきてくれたんだよな!」
あまりの嬉しさについ語調が強くなる、駆け寄るように近づいて、俺はやまめちゃんを手ですくい上げた。
「ひゃっ!びっくりしちゃうよ」
「ごめんごめん、何か食べたいものとかあるかな、今すぐ用意するよ」
「ううん、とくにないよ、ありがとう」
すっかり歓迎ムードで一人浮かれきっている俺に対して、やまめちゃんの表情はあまり明るい物ではない。
「やまめちゃん、どうかした?」
そこで初めて俺はやまめちゃんの異変に気付く、身体全体に力が入っていない、
やまめちゃんは俺の掌の上でぐったりと身を投げ出し、横たわったままだった。
「どうもしないよ、だいじょうぶ」
「全然大丈夫じゃないじゃないか、えっと、こういう時どうしたらいいんだ、病院とかって今からやってるのかな」
あわてふためく俺に、やまめちゃんはゆっくりと笑顔になって、俺を止める。
「ほんとうにだいじょうぶだよ、でもごめんね、せっかくあえたのに、やまめはきょうおにーさんにおわかれをいいにきたの」
「そんな・・・」
やまめちゃんの、俺を安心させるための驚くほどやさしい笑顔、
でもそれはとてつもなく儚げで、今にも消えてしまいそうだった。
その醸し出す雰囲気に、俺は思わず動くのをやめ、掌の上のやまめちゃんとじっと見つめあってしまう。
「おにーさん、ほんのみじかいあいだだったけど、やまめはおにーさんとあえてしあわせーだったよ」
「おい、やめろよ、なんでそんなこと言うのさ、それじゃまるで・・・」
言葉が詰まる、もうわかっていた、きっとこのまま、今からやまめちゃんは俺の手の中で死ぬ。
俺の掌の上で、わずかな重みが軽くなるかのように、どんどんやまめちゃんの体から力が抜けていく、もう頭しか動いていない。
「きいて、おにーさん・・・」
「ああわかった、聞く、最後まで聞く」
涙がにじむ、だけど俺はやまめちゃんの最後をしっかり目に焼き付けようと、袖で目をぐいぐいと拭う。
やまめちゃんが言う言葉の一つ一つを決して逃すまいと、耳をそばだて、じっとやまめちゃんの顔を見つめた。
「あのね、やまめしあわせーだったよ、おにーさんとあえて・・・
 ずっとひとりだったけど、さみしくなかったけど・・・おにーさんとあって、もっともっといっしょにいたいっておもってた・・・
 だから、だから・・・」
「うん、うん・・・俺もやまめちゃんとあえてよかっだ!」
鼻水をすする音も煩わしい、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの俺の顔を見て、やまめちゃんがほにゃりと笑った。
「おにーさん、へんなかお・・・ふふっ、あのね、これからもずーっと、やまめを・・・よろしくね・・・」
「ああ、約束する、ずっと一緒にいてやるから!」
「あり・・・がと・・・」
やまめちゃんが静かに目を閉じる、俺の目から落ちた涙がぼたぼたとやまめちゃんの頬に落ち、
俺がそれを拭ってやっても、もうやまめちゃんが目を覚ますことはなかった。
どうしてこんな結果になってしまったのかわからない、けれどやまめちゃんは最後に俺のところに会いに来てくれた、
もう二度と会えないと思っていたけど、最後の最後にほんの少しだけでもあえた、それが純粋にうれしかった。
やまめちゃんとの再開と、あまりにも早い永遠の別れ、その悲しみに泣き崩れそうになったところで、やまめちゃんの身体がもぞもぞと動いた。
「えっ?」
いや、正確に言おう、やまめちゃんの大きなほっこりと膨らんだあのスカートが、あまりに不自然にもぞりもぞりと動いている。
左右にふわりふわりなんて可愛いものじゃない、上下左右縦横無尽に、荒ぶっている。
「えっ、ちょっ、何?えっ!?」
あまりの突然の現象に思わずやまめちゃんを落としそうになってしまう、パニックを起こしそうになったところで、それは起こった。
ぞわぞわぞわぞわ!!!!!
『ゆゆゆゆっゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっゆゆゆ』
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
今度こそ、本当に申し訳ないけどやまめちゃんの体をぼとりと床に落とす、
その光景は後にも先にも本当に一生涯ないだろうというほど衝撃的だった。
やまめちゃんのスカートの中から現れた、粒、粒、粒、ほんの小さな何かの大群。
一や二じゃない、もしかしたら百、それ以上。
それらはやまめちゃんのスカートの中から飛び出すと、床に広がっていき、思い思いに散って、次第に動きをとめ、
一斉にこちらを向いた。
『おにーさーん!!』
「ひっ!」
ちょっとしたホラー映像だった。
バクバクと高鳴る心臓を無理やり押さえつけて、あくまで冷静にそれらを観察する。
大体個々の大きさは一センチあるかないか程度、すべてが見覚えのある顔をしていた。
「やまめ・・・ちゃん?」
『やまめだよー!』
おにーさんおにーさん、やまめだよ、きゃっきゃうふふとその子たちが一斉に騒ぎ始める。
一つ一つの音は小さくても、それは確かな波になって俺の耳に届いていた。
聞き覚えのある愛嬌のある声、見覚えのある顔、いや、というかそこで横たわっている大きなやまめちゃんと同じ顔。
半分以上は2.5投身程度の体のある個体だったが、顔だけの子もいる、それら全てが”やまめちゃん”だった。







結論から言おう、我が家の家ゆ被害はまさに0、まったくなくなったわけである。
それはなにを隠そう家ゆのおかげ、そう、やまめちゃんのおかげ。
「ただいま」
『おかえりなさーい!』
やまめちゃんは、いや、やまめちゃん達はあの後ほとんどが外の世界に旅立っていき、うちに残ったのは5匹だった。
ここから離れた子達も、元気に生活していることを祈るばかりだ。
だいぶにぎやかになったやまめちゃんハウスは、いまや虫かご程度では収まらず、
結局棚にしていたカラーボックスの下の段を貸し出す形でペットにしてはだいぶリッチな生活を送れるようになっている。
彼女らはもう半分同居人だ、我が家に侵入する不届きものは、家ゆや害虫を問わず俺に知られないうちに狩られている。
成長したやまめちゃん達から聞いたところ、とどのつまりあの時やまめちゃんがいなくなったのは、交配のためだったわけだ。
家に住み着くゆっくりという特殊な形態で生活していると、
交配相手が現れたら一も二もなく繁殖を優先させるというのは、種としての当然の本能なのだろう。
「あそんであそんでー」
「おにーさんだっこー!」
「おなかへったよー」
「きょうはさんびきもやっつけたよ!みてー!」
「うんうんでーるー」
うちに残ってくれたのは一部といっても、数は当初の5倍、姦しさは10倍といったところだろう。
「はいはい、ちょっと落ち着けって」
生まれた時から一緒に過ごしているおかげで、すっかりお父さん気分だ。
やまめちゃん達の一挙手一投足が微笑ましく愛しい。
ひょんなことから始まった俺とやまめちゃんの同居生活だったが、何の因果かこんなことになってしまった。
ゆっくりの記憶や経験は親から子に受け継がれる、それがどれくらいの割合だとか難しいことはわからないけど、
それが本当だというのなら、俺はなおさら”やまめちゃん”との約束を破るわけにはいかない。
もちろん破ろうだなんて気持ちはこれっぽっちもないけれど。

約束通り、俺とやまめちゃんは一緒、これからも、きっとずっと。


終わり。

ゆっくりいじめSS・イラスト ※残虐描写注意!コメント(21)トラックバック(0)|

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コメント

5532:

良い話だな

2013/03/30 07:48 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5533:

悪くない、悪くないぞ!
愛でに目覚めちゃうじゃないか!

2013/03/30 09:09 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5535:

家ゆ=Gという扱いなら、Gに対するアシダカグモもいて不思議じゃないわな、確かにw

2013/03/30 11:07 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5536:

涙腺が…

2013/03/30 11:07 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5540:

マイクラしたい

2013/03/30 14:43 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5542:

やはり胴付きは別格
しかし、やまめちゃんに見つかるという失態をおかしたのはやはり無能のれいむだったな
れいむとまりさはほんとに自分や家族を危険に晒すのが得意だよなあ

2013/03/30 17:30 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5543:

以前Gと思って殺そうとしたらアシダカだったことを思い出した
アシダカも見た目があんなんじゃなけりゃなあ

2013/03/30 17:41 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5546:

こういう「ぼくのかんがえたきしょうしゅ」ものは個人的に苦手だけど
この話はわりと好きだ

2013/03/30 19:01 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5547:

ゆっくりやまめを知らなかったから画像検索したらかわいいじゃないか
胴付きやまめなら愛でたい

2013/03/30 19:22 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5551:

くそっ… 虐待鬼威惨たるこの俺がこんなので泣くなどっ…

2013/03/30 23:44 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5552:

やまめちゃんは虐待鬼意山でも、虐待せてはならない!

2013/03/31 02:05 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5555:

俺も生粋の虐待派だがこのやまめは全力で愛でるだろうな
やまめまでも虐待しようと言う奴は俺と上コメの鬼威惨方が相手をしてやる
恐れずしてかかってこい

2013/03/31 03:09 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5560:

野良を駆除してくれるれみりゃ、ふらんを大事にするように
家ゆを駆除してくれるやまめを大事にしてもいい。

れいむにまりさ?問答無用で殺すかエサにするよ。

2013/03/31 04:48 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5576:

虫なんてどれも嫌いだがあまりにもGが出るからアシダカさんを家に放った事がある
時々ぬっと現れて心臓にダメージ与えるテロをしてくるが
その代わりにGが壊滅してくれて助かったわ
いつしかいなくなってたけど

2013/03/31 20:05 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5626:

うちにもやまめちゃんこないかなー
れいむとまりさ?すりこぎでミンチにしてやるわ!

2013/04/02 00:59 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5640:

アシダカ軍曹は任務(G殲滅)が終われば新たな戦地へ赴任なさる
旅立っていったやまめちゃんたちもそんな感じなのかな

2013/04/02 19:20 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
5769:

虐待鬼威惨すらゆっくりさせるなんてなんてやまめちゃん・・・

2013/04/06 14:08 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
6142:

確かに糞通常種を駆除してくれるれみりゃ、ふらん、やまめは大事にしないといけないとはわかっていても。
「お家宣言」と「うー☆うー☆」は頭に来るものがあるな

2013/04/17 23:53 | 超絶善良しか愛でない者 #- URL [ 編集 ]
6186:

かわいければいいんだよ、なんでも。いやウザかったら別だけども

2013/04/19 22:00 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
6348:

やまめ飼いてぇ…
ちくしょうゆっくり生えてこいよぉぉぉぉぉぉおおおお!!

あ、れいむとまりさはお断りします。

2013/04/27 11:38 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
7066:

よかった。

2013/05/18 19:50 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]

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