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281:幼女「今日は良い陽気です」

2009/08/27 (Thu) 21:00
1 :エル ◆rt7HJ9hh/s:2009/08/17(月) 23:09:22
私は二十歳になりました。

相変わらずの細々とした生活、学も力もない私ですが、こうして成人を迎えられたことを、とても嬉しく思います。

戦争は未だに続いていますが、この山はとても静かで、平和そのものです。

たまに魔族さんが私に襲いかかってくることもありますが、それは全て、魔王さんがなんとかしてくれます。

魔王さんは口では素直じゃありませんが、最後にはいつでも、私を守ってくれます。

優しい優しい、素敵な王様です。

ね?魔王さん。


4 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 00:03:28
この森には多くの生き物が住んでいます。

人もいます。魔族も、もちろんいます。

虫は木の葉にしがみつき、鳥は小枝にとまり、山猫が幹に腰掛け、竜の子が木肌で爪を砥いでいます。

さまざまな命がここに息づいていることを感じると、私はここが、ひとつの国なんじゃないかって思ってしまいます。そんな時が、私にはあるのです。

私もその中の風景にいて、その国の住人として、この大木と一緒に呼吸しているのです。

そう考えると、とっても心が落ち着くのです。

長年の寂しさも、それだけで忘れられそうな、そんな気分になるのです。

5 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 00:39:06
『いつまでここにいるつもりだ?』

幼女「!」

頭の中に響く声。頭に伝わるその低い声の振動が、指の先にまで走ってくる。


『我に主導権は無い、しかしお前の行動を提案する権利はある。』
幼女「・・・」
『ずっとこの、乱世から隔離された山で生きていたいか?過ごしていたいか?』
幼女「・・・駄目、なんでしょうか」
『そういうわけではない』


『我はただ退屈なだけなのだ』
幼女「退屈?私がいるじゃないですか、お話、きらいですか?」
『嫌いではない、ただ、この象牙の檻で己の胃を消化するだけの“自問自答”など、何の価値もない、そう言いたいだけだ』
幼女「・・・面倒な言い回しをしないでください、私はそんなに頭がよくないんです」
『ふむ』
 
『ならば率直に言おう、我は新しいものが好きだ、山を出ろ』
幼女「・・・新しいもの」
『そうだ』
 
『戦地では、都会では、生けとし生ける知識の者が集う場所には必ず、何か新たなものがあるのだ』
『確かに外には危険もあるだろう、しかしその瀬戸際で生まれる、狭間の中で研磨されたものは、非常に面白い』
幼女「魔王さんはお説教好きですけど、新しいものも好きなんですね」
『近しいことだ、温故知新、我はもう既に故を涸らしてしまったのだ』
幼女「・・・」
『お前がこの10年、この山の中で“自問自答”を繰り返している間にな』

6 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 01:02:54
幼女「・・・ふー、あっついです」
ぽすっ

『・・・』
幼女「春になると木々が青々と育ちます・・・その熱気が、生命力が、私の耳から伝わって・・・体全体が暑くなるようです、そんな気がします」

幼女「・・・しかし、それに比べて人はどうでしょう?耳が、目が、心が熱くなるほどの事が・・・この外にはあるのですか?用意されているのですか?」
幼女「安全や危険は別にいいのです、ただ私は、ここ以上の感動など、この外には無いと、そう、決して無いと思えるのです」
『ふっ、世から“解脱”してまだ10年程度の子供が、何をませたことを』
幼女「むっ、ませてません、私はもう二十歳ですよ」
『肉体はまだまだ青いつぼみだ』


『我に憑依された“器”は破壊されることがない・・・その“器”が、自身に決められた期間を全うするまではな』
幼女「何度も聞きました・・・寿命がものすごく伸びるんですよね」
『そうだ、しかし少し違う・・・文字通り、寿命が“伸びる”のだ』
幼女「・・・青年期が長く、成熟期も長く・・・その後も、その後も、おばあさんになっても私は、それでも長く生き続ける」
『人ならば万年を生きるといっても過言ではないだろう』
幼女「・・・気がどうにかなってしまうかもしれません」
『まだ10年目だ、何を言う』
 
幼女「辛いですよ・・・今でさえ、私は、私の心は壊れてしまいそうなのに」
『・・・』

7 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 01:14:18
幼女「芽が萌えるのを10回見ました」
幼女「陽炎が遠景を曲げるのを10回見ました」
幼女「落葉が土に声を与えるその瞬間を10回見ました」
幼女「雨が100日の間斜面へ纏わりつく様を10回見ました」
幼女「そして、植えたどんぐりが、どんぐりではない違う種子であった事に、1度気付きました」

幼女「長いです・・・とっても、この10年だけでも、私にとってはとても、長いのです」

『それはこの象牙の檻の中にいるからに過ぎん』
『いかなる華美な大聖堂であろうと、そこで一年を過ごすたびに、そこは見る間に知らぬ間に、牢獄へと姿を変えてゆくのだ』
『大天使の像が向かいの檻の凶悪犯にすら見えてくるだろう、そういうものなのだ』

幼女「・・・でも」
『ん?』
幼女「・・・外は・・・嫌なのです」

8 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 02:32:23
『何故だ?なぜそこまで?どうしてもか?』
幼女「こっちが魔王さんに訊きたいです、どうして?その問いをそのまま返したい気持ちです」
『愚問だ』
 
『我は知識欲から生まれた魔王、知識溢れる場所に我が向かわんとするのは当然のことだ、自然なことなのだ、これはいわば本能でもある』
幼女「・・・知りたがりさん」
『そういう呼び名でも構わないがやめてくれ』
幼女「どっちです・・・」


幼女「・・・新しいものや沢山の知識の中で生きるのもいいと思います」
『我にとってはそれがほぼ全てであるともいえる』
幼女「でもでも」
 
幼女「・・・新しい知識が生み出すものは、人を不幸にしてしまうのです・・・」
『不幸に?逆だろう』
幼女「いいえ、違います、不幸になってしまうんです」

幼女「・・・私は、少しの間ですけど・・・そんな中にいたからわかるのです」
幼女「新しい知恵から生まれた道具は豊かにします、けれど心を荒ませます」
幼女「新しい知識から生まれた数式は効率を上げます、けれど体がしびれます」
 
幼女「・・・人は、知識や知恵に・・・いつのまにか、それらに頼るうちに・・・それに、」
幼女「“脳”に支配されてしまうのです」

9 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 02:37:39
『・・・お前は、人が何で動いているのか知っているのか?』
幼女「知っています、魂です」
『いやそれもあるが』
幼女「脳もです、知ってます・・・知っています」

幼女「けどけど、頭を使い始めて、何かを生み出してしまうと・・・」
幼女「人は“脳”に憑かれはじめてしまうのです・・・」
『・・・』
幼女「・・・私は、何か変なことを言っていますか・・・?」
『お前は時々、我以上に難解な言い回しをする』
幼女「そ、そんなことないです!ちゃんとわかるように喋ってます!」


『ふむ、つまり?お前はそれが嫌なのだな』
幼女「・・・はい」
『考えが生み出すあらゆるものが、それによる影響が嫌なのだな?』
幼女「・・・はい」
『我とは正反対ではないか』
幼女「・・・そうなります、だから嫌なのです」
『ふむ』
 
『・・・ではお前は、この山で何を求めている?』
幼女「え?」

10 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 02:44:21
『外界に出ればあらゆる知識と英知が待っている、それらがお前を歓迎するだろう』
幼女「・・・」
『それによる利便性はこことは違う、比べ物にはならんだろう』

『温かい寝床も、温かい食事も、温かい湯船もあるだろう』
『我にはそれを嫌う理由がわからんな、何故お前は温かい寝床を求めない?安息を?より良い休息を求めない?』
幼女「・・・」

『今までのようにそうして、この山で、野生の暮らしを堪能し続けるつもりか?』
幼女「できれば・・・そうしたいのです」


幼女「嫌なのです、どうしても私には理解ができないのです」
幼女「何故?寝床が藁ではだめなのですか?」
幼女「何故三食の食事がなければ、5時間おきに空腹を満たさなければならないのですか?」

幼女「どうして人はそんなに食べたいのですか?そんなに、おなかがすいているのですか?」

幼女「このままではどんどん、人ははらぺこになってしまいます」
『・・・』
幼女「どんどんどんどん、はらぺこに・・・なんでも、なんでも食べて・・・」


幼女「・・・いつかはこの地球も、食べられてしまいそうで・・・いいえ、きっと食べられてしまいます」
幼女「・・・街や国は、その結末へ向かっている・・・そう考えると、とても恐ろしいのです、怖いのです」

12 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 20:02:42
山の夜がやってきました。
でも山に睡眠はありません。
山では誰かが寝た時、誰かが起きるのです。昼となんら変わりません。

でも私は眠くなってしまうので、寝なければなりません。
私は朝に起きるのですから。


幼女「・・・うーん・・・」モゾモゾ

『寒くは無いか?』
幼女「ううん、大丈夫ですよ・・・」
『そうか』


魔王さんはいつでも心配してくれる。
いつでも私とお話してくれるし、いつでも傍にいてくれる。
たまに口げんかしてしまうこともありますが、それでも私は、魔王さんのことが大好きです。


幼女「・・・魔王さん・・・」
『ん?』
幼女「んぅ~・・・むにゃ・・・」
『(・・・寝言か)』

13 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 21:00:38
我は魔王。
あらゆる生けとし生ける者の知識欲から生まれた魔王。
千年を跨ぎ万年を跨ぎ、永久に生き続ける魔王。

だがこの小さき人間の子と交わったばかりに、我に“命”という名の枷ができてしまった。

命には限りがある。
我が命は有限となってしまった。


幼女「・・・・すぅ・・・すぅ・・・」


だが我は後悔はしていない。
この幼き人間の子と交わると決心した時から、我に後悔などというものは存在しない。

我は、この子供と生きると決心したのだから。



幼女「・・・んん~・・・魔王さん・・・食事の時くらい静かにしてください・・・」


・・・。
いや、決心したのだ。決心・・・。

14 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 21:10:38
もしも戻れることができるのであれば、私は100年戻りたい。

いいえ、1000年でも良い。

戻れるのであれば、私は戻りたい。

私は20年しか生きていませんが、私は100年、1000年と戻りたいのです。

私がいない時代に。

私がいなかった時代に。

私が、私を不幸だと認識できなかった時代に、

そんな私さえいなかった時代に。

戻れるのでしょうか。戻る手段は、このせまい球体の中にあるのでしょうか。

いつか戻れたらいいなと思っています。

生き物が山へ帰るように、風が背中へ吹き、また背中へ吹いてくるように。

名を広めようと旅立った若者が、再び己の故郷へ舞い戻ってくるように。

私も戻れたら良いのに。


どうなんですか?

魔王さん。

15 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/18(火) 21:15:21
夜の角で思想に耽っていても、朝は誰にでもやってくるのです。

春の朝日が野を照らして千の生き物を起こすのです。

それは生き物の特異である私であっても同じことです。必ず、全てに朝はやってくるのです。


草が踊り花を開き、

虫が走り草を食み、

鳥が歌い虫を食む。



幼女「んぁ・・・おはようございます・・・」
『うむ』


いつだって私の朝は同じ。

大木の真下に積んだ藁の上で、私は目覚めるのです。


幼女「お腹すきましたねぇ・・・」
『我は空かぬ』

16 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/19(水) 23:53:56
幼女「・・・むー、私がすいたら魔王さんもお腹がすくんです」
『空かぬ、我とお前が共有する感覚は五感のみだ』
幼女「でもでも、一心同体だから同じなんです、すくんです」
『・・・もうそれでいい』


ピチチチ・・・

幼女「あ、小鳥・・・今日も良い天気ですねぇ」
『・・・』
幼女「あの鳥はどこから来たのでしょうね・・・外界からやってきたのでしょうか」
『・・・さあな、だとしたらどうする?』
幼女「・・・どうするって言われても・・・」
『訊き方を変えよう、どう思う?』
幼女「・・・」

幼女「・・・なんとも思いませんよ?」
『本当にか?』
幼女「本当にって・・・どうして二度も訊くんですか」

幼女「あの鳥が仮に、この山ではない外界からやってきた鳥だとして、それが一体何だというのですか」
『なんだろうな?』
幼女「・・・魔王さん、言いたい事があるならはっきり言ってください」

幼女「私はもう大人、ですよ?隠し事なんて通じません」
『・・・いいだろう』

17 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 00:00:45
『お前は人の持つ“知識”が嫌だと言った』
幼女「“知識”もそうですが、もっと言えば“考え”ですね」
『・・・その考えが、知識が、知恵が、この山に入ってきたらどう思う?』
幼女「・・・嫌です」

幼女「この山は人の考えや知恵が及ばない場所だから、だから私はここにいるのです」
『うむ』
幼女「ここにいれば何も動かない、まるで遥か北の氷の大地のように、この山は安全で、安心できるのです」
『“溶けないから”か?』
幼女「はい、それに“流れ”もしません・・・動かない、いつもそこに変わらない平穏がある・・・」
『それがお前にとっての幸福なのだな?』
幼女「はい」

『・・・では、あの鳥はどうだ?』
幼女「・・・鳥」
『お前はこの山に人が、考えが入ることを嫌う・・・では鳥ならばどうだ?』
幼女「・・・鳥は鳥です、人のように危険な考えを持っていません」
『そうだな、だが・・・』
幼女「なんですか、もう」


『お前は外界から何かが、・・・鳥ですら、ここへやってくるという事に・・・わずかな嫌悪感を抱いているのではないか?』
幼女「・・・そんなことないです」
『それはどうだろうな』

18 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 00:08:37
ピチチチ・・・ピチチ・・・


幼女「・・・」
『遥か高い木の上で、鳥が囀っている』

『我らが訊いただけでは、あの声はただの閑古な歌声にしか聞こえんだろう』

『だがあれは本当に“歌”なのか?』
幼女「・・・考え過ぎです」
『あれは仲間へ、町の様子を・・・人の思想を伝えている、そうとも考えられはしないか?』
幼女「絶対に考え過ぎです、あり得ない」
『だがお前は心のどこかで、この静かなる山が変化してしまう・・・知らぬ間に、“知識”や“考え”が及んでしまう』
『そう思ってはいないか?疑ってはいないか?不安になっているだろう?』
幼女「・・・魔王さん、嫌いです」
『・・・』


幼女「・・・私は」
幼女「鳥は、鳥だと思いますし・・・人こそ人だと思っています」

幼女「・・・人でないならひとまずは安心だと、そう考えているのです」
『ほう』
幼女「・・・ご飯、探しにいってきます」
『そうだな、人が思考を巡らせるには食事が必要だ』
幼女「・・・そういう言い方、あんまり好きじゃないですよ」


ザッザッザッザッ・・・

19 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 00:14:41
ザザザザザ・・・


幼女「今日は何か、美味しい果物が食べたいですねー」
『好きにするがいい』
幼女「・・・魔王さんも探してくださいよ」
『我には必要のないものだ』
幼女「・・・私に必要なものは、魔王さんにも必要なんですっ」


幼女「じゃあ魔王さん、私がもしも飢えに倒れて死んでしまったら、魔王さんはどうなるんですか?」
『我も死ぬだろうな』
幼女「ほら、やっぱり必要」
『だが我は再び、この世のどこかで甦るだろう』
幼女「・・・えー、なにそれ、ずるいです」
『我は1、1は姿を変えてどこかに顕れる』

『1が0になることはないの』
幼女「魔王さんすごい、異国の言葉も喋れるんですね」
『・・・』


ザッザッザッザッ・・・


幼女「・・・あ、何か、良さそうな木を見つけましたよ!」
『ほう、近づいてみろ』

ザッザッザッ・・・

20 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 00:22:50
幼女「わあ」
『ほう』


幼女「・・・立派な、立派な立派な、リンゴの木ですね」
『高いな、ここまで育つ植物だったとはな』
幼女「私もはじめて見ました・・・わぁー・・・本当に高い・・・」
『今日の朝食はここのようだな?』
幼女「えへへ、そのようですね」


幼女「・・・でも魔王さん、大変です」
『む?』
幼女「私の身長だと、あの果実までは全く手が届きません」
『なるほど、素朴な課題だな』
幼女「どうしましょう?魔王さん、何か良い案をお願いします」
『我はそのようなアドバイスをするためにこの世に存在しているわけでは・・・』
幼女「“知りたい”んです」
『! よかろう』
幼女「(魔王さんは言い方を変えるだけで何でも教えてくれるんですよね・・・うふふ)」

『では、まずはだな・・・』

21 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 00:28:01
幼女「ここと、この紐を・・・ここに通す?」
『そうだ、結び方は教えた通りにしなければ、途中で崩れるぞ、しっかりやれ』
幼女「う、うーん・・・魔王さん、よくこんな難しい結び方を知ってますね・・・」
『以前お前が見た書物にあったではないか』
幼女「・・・それっていつのことですか?というよりも、私そんな本を読みましたっけ?」
『お前がその頁を見たのは0.1秒ほどだったからな、覚えていないのも当然だ』
幼女「・・・さすが魔王さんです」


キュッキュッ

幼女「こんな感じですか?」
『ああ、これでハシゴの完成だ』
幼女「・・・ハシゴって、こう作るんですね・・・意外と大変でした」
『そうか、我は指示を出すだけだったので退屈だったぞ』
幼女「・・・」

22 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 13:41:46
幼女「う、うぅぅうん・・・」
『どうした、まだ全然触れてもいないぞ』
幼女「だ、だめです・・・!これ以上は・・・!」
『さっさとやるがいい』

ギシッ・・・ギシッ・・・


幼女「こ、こここれ以上はちぎれちゃいます・・・!」
『ええい、ノロマめ』
幼女「だってこのハシゴ、短すぎるんです!これじゃあ全然届きませんよぉ!」
『我に言われてもな』


ギシッ・・・ギシッ・・・

幼女「うう・・・こうなるんだったら、もっと長い木材を集めてくればよかったです・・・」
『いいからさっさと採ってしまえ』

23 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 13:48:09
??「おーい、何やってるんだ?」


幼女「ふえっ!?」
『む?』


グラ・・・

幼女「あ」
『ぬ』
幼女「お、落ちる!落ちる落ちる・・・!」
『バランスを取れ、このくらいの傾きならば・・・』
幼女「え、ば、バランスってぇえ?」
『馬鹿者、のけぞるな!』

フラーッ・・・

幼女「ひゃああ!」
??「お、おいおい・・・!」


びたーん

24 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 14:05:00
幼女「・・・あれ?痛くない・・・」
??「おいおい、大丈夫か・・・危ない危ない、キャッチしてなかったら大変だったな」
幼女「・・・?」

男「いや、しかし驚かせて悪かった」

幼女「(・・・人!)」
『・・・』

男「でもお前も悪いんだぞ、この木は俺が育てているリンゴなんだ」
幼女「え?あ・・・そ、そうなのですか」
男「ああ、最近はよく山猿が盗みに来るもんで見張っていたんだが・・・そうか、まさか人がいるとはな」
幼女「・・・あの」
男「ん?」
幼女「・・・降ろしてください」
男「ああ、すまんすまん」

ポスッ

幼女「(人・・・男の人だ、歳は私と同じくらい・・・かな)」
男「ところでお前はどこからきたんだ?家は?親はどこにいる?」
幼女「え?お、親ですか?」
男「早く両親のいるところに帰るんだ、一人で歩く山は危険だぞ」
幼女「(むっ・・・子供の姿をしているからって馬鹿にして・・・)」
『子供ではないか』
幼女「(ちーがーいーます!)」

25 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 14:17:22
ヒュッ

ゴツッ
幼女「ったぁ!」
男「うおっ」

ゴトッ・・・コロコロ・・・


『リンゴが落ちてきたようだな』
幼女「・・・」
『やったじゃないか、今日の朝食を手に入れたぞ』
幼女「(・・・そうですね、よかったです・・・)」

男「おいおい、大丈夫か?災難だな」
幼女「・・・ほんとですよ(サスサス」
男「どれ」
スッ
幼女「ふえ?」

ナデナデ

幼女「・・・!」
男「よしよし、大丈夫か」
幼女「な・・・撫でないでください!」バッ
男「おぅっ、なんだ素直じゃないなぁ」
幼女「わ、私は子供じゃないんです!」
男「ははは」
幼女「笑わないでください!」
『ははは』
幼女「~・・・!」

26 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/20(木) 18:05:47
幼女「・・・もういいです!リンゴありがとうございます!さようならっ!」
男「ははは・・・って、おいおい、どこに行くんだ、そっちは山だぞ」
幼女「別に良いんです!私は山で暮らしてますから!」
男「何言ってんだ」

ガシッ

幼女「や、離してください!」
男「変なこと言ってないで、山を降りなさい、家に帰るんだ」
幼女「だからぁ、家は山にあるんです!山を降りるなんてまっぴらですよ!」
男「・・・?変な子供だなぁ」


パッ
幼女「・・・私は子供ではないので、心配は御無用です」
男「(いやどう見ても子供だろ・・・)」
幼女「(もう・・・行きましょ、魔王さん)」
『・・・』
幼女「(・・・魔王さん・・・?)」

男「おいおい、だからそっちは危ないって、魔獣も出るんだぞ」ガシ
幼女「ちょっ・・・やめてください、離して!」
男「自警団に保護してもらうか・・・やれやれ」ザッザッザッ
幼女「やー、離してー!」ズルズル
『・・・』

27 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 11:36:43
幼女「・・・むすっ」
『そう頬を膨らませるな』
幼女「怒りたくもなります、理不尽です」
『倫理的だと思うがな』
幼女「意味がわかんないです」

男「・・・うーむ・・・?この町には流季の家系が2世帯か・・・しかしどれにも当てはまらないなぁ、名簿にも無い」
幼女「当然です、私は町の人間ではないです」
男「んー・・・?じゃあ本当に山小屋か何かを?」
幼女「そうだと言っているでしょう?聞き分けの悪い人ですね」
男「(幼いけど辛口だなぁ・・・)」


男「・・・しかしなぁ、俺も自警団の会員だからなぁ・・・あまり君を・・・えっと」
幼女「私の名前は幼女です」
男「幼女ちゃんをほいっと山に、一人で返してしまうわけにもいかないからな・・・」
幼女「そんな、勝手です!」
男「とはいえ・・・なぁ、山は危険だし・・・自警団の立場も」
幼女「勝手です!私の家は山にあるのですよ!これではただの誘拐です!」
『まさにな』
男「そう言われると弱いんだよな」

28 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 11:43:51
男「んー・・・じゃあ君に両親は?住んでいる家は集落に?せめてそちらに連絡を入れてから、後日警備隊と一緒に送り届けるなりしよう」
幼女「・・・」
男「・・・うん?」

幼女「・・・両親は、いないです」
男「えっ、じゃあ祖父母さんが?」
幼女「・・・祖父母は覚えてないです・・・きっと、私が生まれる前に死んでしまったのだと」
男「・・・そうか・・・すまないな」
幼女「別にもう、昔の事ですから・・・とっくに気持ちの整理はできてます」
男「(ん?とっくの昔?)」


男「しかしまいったな、一人暮らしか・・・」
幼女「山には集落なんて無いです、私は一人で住んでいます」
男「おいおいなんだそりゃ、寝床は?食事は?」
幼女「・・・レディに多くを訊くのは失礼だと思いますよ」
男「ははは、そうだな、いやすまない、レディか・・・はは」
幼女「・・・むっ・・・」


『この男に悪意は無さそうだが』
幼女「(・・私にとっては悪意に他なりません、町へ送られて孤児院に入れられてしまいます)」
『少なくとも今の生活よりは安定すると思うがな』
幼女「(心が不安定になってしまいます)」

29 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 11:54:18
男「・・・あー、じゃあちょっと待っていてくれ、今上の方に連絡するから」
幼女「・・・できるだけ私の意見を尊重してください」
男「うーん、まぁそうしてみるけどね」

ガチャ バタン


『聞く耳は半分であったな』
幼女「気持ちも半分でした、私の意見なんて結局左右されないのでしょうね」
『どうだろうな、我に人間のシステムは今だよくわからん』
幼女「魔王さん、人にはめんつというものがあるのですよ」
『めんつ?』
幼女「集団の中で自分の地位を守ろうとする考え方・・・のようなものです、それを主体に動く人がとても多いのです」
『ふむ』

幼女「・・・めんつを守るために、あの男の人は私を町へ送り戻すのでしょうね」
『良いことではないか?』
幼女「私にとっては嫌なことなんです!」
『果たしてそうだろうか』
幼女「そうです」
『生きていれば何が起こるかはわからん、町にいればお前の考え方も変わるかもしれんぞ』
幼女「・・・そんなの、やです」
『我は知識を得られればそれで良いのだがな』
幼女「・・・」

30 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:01:13
男「(えーっと、無線無線・・・これか、番号は・・・)」

キュリリリリリリィィイィン・・・


『はいこちら火山警護隊本部です』
男「あ、どうも・・・私は自警団22組の男というものですが・・・」
『22組・・・ああはい、男さんですね、ご用件は』
男「幼女という幼児を保護したのですが、その子の身元について調べてもらいたいんです」
『幼女さんですね?おおざっぱで構わないので年齢の方をお願いできますか』
男「あー、そうですね・・・あ、ちょっと待ってください」


ガチャ

幼女「?」
男「君、年齢は?あー、歳はいくつかな?」
幼女「・・・言ったと思いますが・・・今年で二十歳になります」
男「・・・ああ・・・うん、わかった」

バタン


男「・・・あー、10歳くらいだと思います、それでお願いできますか?」
『はい、了解しました・・・幼女さん10歳くらい、ですね?』
男「はい、お願いします」
『ではファイルの方を漁ってみますので・・・しばらくお待ちください』
男「はい、お忙しい中すいませーん」


男「・・・ふー、農作業だけでも面倒だってのに・・・やれやれ、自警団なんか入らなきゃよかったな」

31 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:08:22
ガチャ
男「いや、待たせてすまなかったね・・・無線の方でちょっと話していたんだ」
幼女「・・・そうですか」

コト

幼女「・・・?これは・・・」
男「紅茶、飲めるかな?ははは、まだちょっと早いか」
幼女「・・・紅茶・・・」
男「飲めなかったら残してもいいからな」

『紅茶とはなんだ?』
幼女「(・・お茶のひとつです・・・すごく、良い香りが・・・)」
『・・・ふむ』

幼女「・・・久しぶり・・・昔は飲めなかったなぁ(ズズズ・・・」
男「どうかな」
幼女「・・・あったかい」
男「はは、そりゃよかった」

幼女「(・・・久しぶりに温かい飲み物を飲んだ気がする・・・)」
『湯、か・・・そういえばあまり口にはしていなかったな』
幼女「・・・甘くておいしい」グビグビ
男「気に入ってもらえたか、ありがとう」


キュリリリリリリィィイィン・・・

男「!おっと・・・じゃあまたもう少し、ここで待ってくれな」
幼女「はい」

バタン


幼女「・・・綺麗な絵柄のカップです」
『うむ、実に美しいな・・・我が魔族の国にもこのような華やかさが欲しいものだ』

32 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:16:36
ガチャ

『火山警備隊本部です、男さんはいらっしゃいますか?』
男「あはい、私です」
『ああどうも、調べてみたのですがね、』
男「はい、どうでしたか?親戚などがいれば助かるのですが」

『えーっと幼女さんでしたね?彼女のファイルは10代の棚からは見つけられませんでした』
男「・・・え、本当ですか」
『代わりにですね、我が優秀な職員がですね、はは・・・20代の棚からその、幼女さんのデータを見つけてくれました』
男「!」

『幼女さんは今年でちょうど・・・20歳ですね、家系は・・・あー、両親も10年前既に他界、兄弟はいませんね』
男「・・・はぁ」
『孤児院にいった記録もなく・・・現在行方不明、ということになっています』
男「・・・」

『もし彼女を保護しているのでしたら、そうですね、しかし彼女はもう二十歳ですからね』
男「・・・」
『幼女さんが病気などに罹っておらず、また保護される意思もないというのであれば・・・幼女さんの意思を尊重して対処、ということになります』
男「・・・そう、ですか」
『彼女はどうやって保護を?』
男「あ・・・そのですね」
『?』
男「すいません、後でまた掛け直します・・・」
『? そうですか、わかりました』
男「では、お手数をおかけしました」

ガチャン


男「・・・?どういうことだ・・・」

33 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:24:52
ガチャ


男「・・・」
幼女「あ、いただきました・・・美味しい飲み物ですね、ありがとうございます」
男「・・・うん、まぁ、はい」
幼女「・・・?」

男「・・・(ジーッ・・・」
幼女「・・・な、なんですか」
男「(・・・彼女が俺と同い歳・・・?)」

幼女「それで、どうしたのですか?私はこれからどうなるのですか」
男「え?ああ・・・うん・・・」


男「(・・・)」
男「ひとつ訊いていいかな」
幼女「まだ訊くんですか?」
男「うん・・・これで最後だ」

男「・・・君の名前は本当に“幼女”なのかい?」
幼女「・・・同じ質問を多くする人ですね、一度答えられただけで理解してください」
男「・・・」

男「(・・・確かに・・・喋り方も、身振りも・・・10歳、には・・・見えない)」
男「(本当にこの女の子が・・・20歳・・・)」

34 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:32:17
幼女「じゃあ、ありがとうございました、もう来ません」

バタン

男「ちょっ・・・と・・・待ってくれ!」
幼女「・・・まだ何かあるんですか?私は早く帰りたいんですけど」
男「山にか?」
幼女「はい、山です」
男「(なんで山なんだ・・・)」
幼女「私が二十歳であることは信じていただけたんでしょう?なら私は自分の意思で生きていいということですよね」
男「・・・そうだけど」
幼女「そうですね、ではさようなら、紅茶とリンゴ、ありがとうございました」
男「ま、まってくれって!」


ガシッ

幼女「!・・・・は、離してくださいっ!」
男「た、頼むから!」
幼女「へ、変態ですか!?そうなんですか!?最初からそのつもりで」
男「違う違う!」

男「・・・これは自警団としてじゃなくて・・・ただのしがない、農民の俺として訊きたいんだ」
幼女「・・・」

男「・・・君は・・・なぜ10年もの間、行方不明になっていたんだ・・・?」
幼女「・・・!」

35 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:38:28
『・・・』

幼女「・・・そんなことを訊いてどうするんですか?」
男「・・・どうもしないさ」
幼女「・・・私が教える必要があるんですか?」
男「・・・ない・・・と思う」

男「だけど、・・・なんつーのか、・・・知りたいんだ」
『!』
幼女「知りたいって・・・嫌ですよ、プライベートです」
『おい、教えてやれ』
幼女「(な、なんですか魔王さんいきなり・・・そんなことを喋ったら大変なことになりますよ)」
『この男は知りたがっている』
幼女「(教えたら、私の半分が人間ではないという事が知られちゃうんですよ!?)」
『そこは話さなくとも良いだろう』


『だがそこに真実を求めている者がいるのだぞ?』
幼女「・・・」
『さあ、話すが良い』
幼女「(うう・・・魔王さん・・・脊髄反射・・・)」
男「?」


幼女「・・・あー・・・」

幼女「・・・何か、お食事をおごってください」
男「え」
幼女「そしたら・・・少しだけ話してもいいですよ」
男「・・・わかった、そのくらい任せろ」

幼女「(・・・もう知りませんよ?魔王さん・・・)」

36 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:45:35
店員「いらっしゃいませー」

男「ちとほこり臭い店だが、勘弁してくれ」
幼女「・・・ここは・・・」
男「普通の喫茶店だよ、珍しくもないだろう?」
幼女「・・・あ、そ、そうですね」

幼女「(・・・どうしよう・・・人とこういう店に入るなんて・・・はじめてだからよくわからないや)」
男「じゃああっちの席に座ろうか」

キシッ

男「あ、すいませーん赤ビール1つ・・・あ、ビールでいい?」
幼女「え?ビール・・・?」
男「・・・お酒だけど」
幼女「あ・・・その、私はお水で・・・」
男「・・・あー、赤ビールとリンゴジュースで」
店員「はいかしこまりましたー」


男「・・・」
幼女「・・・」
男「何か食いたいものがあれば頼んでいいよ」
幼女「・・・え、本当に?」
男「それで・・・まぁなんだ、話してくれるんだろ」
幼女「・・・はい」

幼女「(・・・何かドキドキします)」
『四角鹿のステーキか・・・調理法を見てみたいものだな』
幼女「(聞いてますか?)」
『早くメニューを決めるがいい』
幼女「・・・」

37 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 12:52:55
男「(・・・こうして見ている分にはただの子供なんだけどな・・・)」
幼女「え、えーっと・・・どれにしよっかな・・・」
『ふむ、人は麦を使った調理を好むのか・・・なるほど・・・』

男「(・・・山に帰りたいって言ってたけどまさか・・・10年もの間ずっと山にいたわけじゃ・・ないだろうな)」
男「(しかし服がボロボロだな・・・元は白かったんだろうけど、泥が付いて茶っぽくなってやがる)」

幼女「えっと、その・・・決めました」
男「お、そうか・・・じゃああの店員さんに頼むと良い」
幼女「え?私がですか?」
男「おう」


男「(・・・これで20歳か・・・じゃあ40くらいになったらものすごい美人になるんじゃないか・・・?)」
男「(いやしかし今のままでも結構・・・っていかんいかん)」

男「(・・・俺にそんな趣味は無い・・・はずだ)」

38 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 13:31:12
幼女「・・・(モグモグ」
『結局ただのパンか』
幼女「(・・・いけないですか)」
『そんなことはない、ただ面白くない選択だと思っただけだ』
幼女「・・・(モグモグ」

男「・・・美味しいか?」
幼女「・・・はい」
男「そうか、普通のパンなんだけどな」
幼女「・・・あまり、こういうものは・・・食べたことが無いので」
男「・・・」

男「なぁ、どうして・・・二十歳なの?」
幼女「!ごほっ」
男「あ、すまん!」
幼女「ごほっごほっ・・・けほ・・・生まれてから20年経ったから、なんじゃないですか?」
男「・・・そう言われてみればそうなんだが・・・」


幼女「・・・私はそういう体質なのです」
男「体質」
幼女「そうです・・・ゆっくり成長して、ゆっくり老いて・・・ゆっくり、死ぬ」
幼女「私は野に一本だけ、大きくさみしく佇んでいるような・・・大木のような体質なのです」
男「・・・マジか・・・」

男「・・・いやいや、信じられるかよ、いくらなんでも・・・」
幼女「まずこれを信じてもらわないと、今日私が話すことは無いですよ」
男「・・・」

39 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 13:41:16
男「・・・信じよう、ひとまずは信じよう」

男「・・・俺は、やらしい意味ではないが、君に興味がある」
幼女「・・・(モグモグ」
男「学術的な興味ではない、純粋に・・・本当に純粋な、知りたいっていう興味なんだ」
幼女「(魔王さんみたいな人・・・)」

男「空はどうして青いんだとか、雲はどこからやってきたのかを考える、そんな子供のような疑問でもある」
幼女「・・・」
男「・・・訊きたい、どうして君はそんな体に?」
幼女「・・・」

幼女「(どうしましょう、魔王さん・・・)」
『素直に“魔族王と融合して寿命が飛躍的に伸びた”と言ってしまっても良いかもしれんな』
幼女「(そ、そんなことしたら私殺されちゃいます!今は魔族と戦争中なんですよ!?)」
『そうだな、殺されはしないが・・・控えた方がいいだろう、なんとか誤魔化せ』
幼女「(・・・)」


幼女「・・・それは、そういう術にかかっているからなんです」
男「術?」
幼女「はい、呪いのようなものですね、何故かけられたのか、それは私にもよくわかりません」
男「わからない?」
幼女「覚えてないんです」
男「・・・そうなのか・・・術・・・そんな術が・・・」

40 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 13:46:24
幼女「・・・こんな体ですから、あまり外には出たくないのです」
男「?」

幼女「この体で過ごしていると、周りで動き続ける町や・・・建物・・・発明」
幼女「全てが怖く感じられてしまうのです」
男「・・・?うん・・・」
幼女「自分は何も変わっていない、でもでも、自分の周りの風景は春を経るごとに、めまぐるしく変わっていく・・・」

幼女「・・・わかりますか?私はまだまだこの先、ずっと長くを生きるのです」
幼女「・・・ずっと、体はほとんど変わらない・・・だけど周りはどんどん、新しい知識とともに姿を変えて・・・」

幼女「・・・戦争の結果も、私は見ることになるでしょう・・・」
幼女「魔族が勝つのでしょうか?人が勝つのでしょうか?・・・どちらにも関わらず、私はそれを見ることになるでしょう」
幼女「その先にある勝利の旗も、新しく建てられるであろう世界の王の城も、国も・・・それからの支配者が夢見る“野望”の結果すらも」

41 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 14:23:00
男「・・・ふぅーん・・・なるほど」
男「でも、俺にはちょっと理解できないな」
幼女「・・・そうですか?」

男「君は戦争の先を憂いているけどな、俺はむしろ今だよ」
男「今のこの時、今まさにこの時だ、こうして紅茶を飲みつつパンを食べているひと時だ」
男「こうして世界の行く末を話している今でさえ、その世界は戦火に包まれている・・・そう、それが俺にとっては一番の恐怖だな」
幼女「・・・」
『それは正論だ、我もその考えこそ正しいと思っているぞ』

男「だって人が死んでいるんだぞ?なら今が最も危惧されるべき時なんじゃないのか?」
幼女「・・・そうですね、確かに戦争は怖いです」
『ま、今の有限の身となった我にとってはどちらが勝とうがどうでもいい事だがな』

幼女「私も・・・一時期は奴隷の身でしたから、戦争による世界の荒れというものを、この身によく覚えている・・・つもりです」
男「! 奴隷!?」
幼女「お、大きな声で言わないでください」


幼女「・・・鉄鉱の採掘現場でよくつるはしを振り下ろしていました」
幼女「あれは・・・そうですね、12年くらい前の話でしょうか・・・?」

幼女「戦争は鉄を要求します、火を要求します・・・それを絞り出す痛みも、それを目当てに・・・欲に目がくらむ人も見てきました、感じました」
男「・・・俺と同い年でも・・・かなり修羅場をくぐってきたみたいだな」
幼女「・・・学はありませんけどね」
男「ははは、そんなことはない、俺の周りの奴なんかより全然知的だと思うぞ」
幼女「そ、そうですか・・・?」
男「ああ」

42 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 14:32:57
幼女「・・・(モグモグ」
男「戦争・・・の先かぁ、よく考えたことはなかったな・・・」
『そこには支配がある、栄光が、豊かがある・・・ただし一種族のみだ、負けた種は世界の隅で生き続けるだろう』
幼女「(魔王さんは考えることがいちいち残酷です・・・)」
『事実だろう?』

男「しかしまずは戦争でどっちが勝つか・・・かぁ、うーん・・・」
『間違いなく人が勝つだろうな』
幼女「(え?本当ですか?)」
『知能無き魔族が勝てるはずがなかろう、戦争とは知力だ』
幼女「・・・」


幼女「・・・戦争は嫌いです」
男「・・・そうだな、人が沢山死ぬ、誰だって嫌さ」
幼女「・・・どうして、多くの犠牲を出してまで・・・領土を、肥えすぎた作物を守るのでしょう」
男「・・・うーむ・・・」
幼女「・・・何かを求め続ける限り、それ以外の何かを壊してしまう・・・だから嫌なのです」
男「・・・」

43 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 14:50:26
幼女「・・・(ゴキュゴキュ」
男「・・・美味しい?」
幼女「ええ、すごく美味しいです」
男「そうか、それは良かった」

男「(・・・本当に、子供相手に喫茶店に入ってる・・・っていう感じなんだけどな・・・)」
幼女「もっと砂糖入れようっと」
男「(でも目の前にいるのは間違いなくオトナで・・・)」

幼女「あなたは何か食べないんですか?」
男「え?あ・・・あーそうだな・・・」

男「(・・・駄目だな俺は、まったく)」


幼女「もぐもぐ・・・」
『すっかり町の景色に溶け込んでいるようだが?』
幼女「!」
『町は嫌なのではなかったのか?』
幼女「(・・・来ることになってしまったので・・・し、仕方なく楽しんでいるだけです)」
『斬新な表現だ』

『だが悪くは無いだろう?居心地はよかろう?』
幼女「・・・」
『年頃の男と一緒に昼を過ごす、人間にとってそれは普通、当たり前のことなのだろう?』
幼女「(そう・・・らしいですけど・・・)」
『ここには山には無い価値がある、そうであろう?』
幼女「・・・」
『いつまでも外界の変化に怯えていては、先へは進めぬぞ』
幼女「・・・」

『どうした?永遠の命よ、永久の人間よ』
『この平和な戦争の世界の何を、どこを恐れることがある?』
『人の死を耳できくことか?友を失うことか?家が焼かれることか?』
幼女「・・・」
『その中で自分がただただ、そこに大木のように立ちすくむことが怖いか?』
幼女「・・・」
『さぞかし怖いことだろうな、お前はただの木なのだから、山にひっそりと、山から動かない木なのだからな』
幼女「・・・!」

44 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 14:56:35
男「おい・・・、おい・・・どうした?」

幼女「(わ、私は人間・・・木じゃない!)」
『同じようなものだ、そこにはしっかり佇むくせに外へは行こうとしない』
『ただそこで浴びたい光を浴びて、そこに積もる土を食み細々と生きる』
『それはまさにお前の姿に等しい』
幼女「(・・・でも・・・)」

男「おいっ」
プニ
幼女「!いはい、いはい!」
男「どうした、上の空で・・・すごく怖い顔してたぞ」
幼女「・・・つねらないでください」
男「すまん」

幼女「・・・ちょっと、考え事をしていたんです」
男「・・・考え事」
幼女「・・・はい」

45 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 15:12:34
幼女「(私は山で・・・山で生きたいのです)」
『ほう』
幼女「(ひっそりと・・・何も見ないで生きていたいのです)」
『ふむ』
幼女「(私にはわかるんです・・・絶対に、戦争が終わっても絶対に・・・良くないことが起こるんです)」
『そうか』
幼女「(誰とも口がきけなくていいから・・・パンも紅茶もなくていいから・・・)」
『それで』
幼女「・・・」


男「おい、大丈夫か?」
幼女「・・・!あ、・・・はい」
男「大丈夫そうじゃないみたいだが」
幼女「・・・」


幼女「男さんは、一人で生きていけますか?」
男「え?」
幼女「一人で、本当に一人で・・・これからずっと、誰とも会わずに」
男「突然だな」
幼女「ふふ、色々聞かれたんだから、お返しです」
男「・・・そうだな」

男「まぁまずは無理だろうな」
幼女「・・・どうして?」
男「人と会わずになんて俺には無理だ、精神がまず先に死ぬだろう」
幼女「・・・」
男「というか、俺に限らず誰だってそうだと思うけどな」

46 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 15:36:00
幼女「やっぱり・・・そうなのでしょうか」
男「まぁ一人になるなんてことはありえないだろうけどな、ははは」
幼女「・・・」
男「誰かと一緒にいたいと思ってれば、一人になるってことはないだろうよ」
幼女「・・・そうですか?」
男「そういうもんだろう・・・どんな嫌われ者でも変わり者でも、絶対にひとり・・・ってことはないはずだ」

幼女「・・・」
男「・・・ま、まぁ・・・なんだ、君もな」
幼女「え?」
男「山に戻りたい・・・んだっけ?」
幼女「・・・」
男「山に行かれたらそりゃ、一人だろうけどな・・・町にいれば、人との関わりは持てると思う」
幼女「そう・・・でしょうか」
男「そうさ」

男「お、俺とか・・・話したいし」
幼女「え?」
男「町にいれば・・・一緒に話もできるし・・・な?」

幼女「・・・!」
『ほうほう』

47 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 15:49:00
幼女「わあわ、私は山が良いです!」
男「え」
幼女「そ、そんな、そんなのダメです!山に帰ります!」
男「ま、待てって!山には家が無いんだろう?」
幼女「で、でもでも!でもでも!そんなのやです!」
男「そこまで拒絶しなくても・・・」
『免疫が無いのだな』

幼女「・・・わ、私は・・・山の方が落ち着くし・・・山が好きだから・・・!」
男「おいおい、でもだからって町も捨てたもんじゃないだろう」
幼女「・・・だけど・・・けど、けどけど・・・」
男「・・・どうして人を遠ざけるんだ?」
幼女「・・・」
男「多分、君が考えているよりも人は悪いもんじゃない」
幼女「・・・」
男「人から逃げてばかりでは・・・なんも変わらないぞ?」
幼女「・・・でも・・・」
男「・・・」

幼女「・・・怖い・・・怖いんです・・・」
男「・・・」

男「俺もか?」
幼女「・・・」
男「・・・だったらちょっと・・・ショックだな」
幼女「・・・そ、そんなことないです」
男「え?」
幼女「あなたはとっても・・・優しい、良い人だと思います」
男「・・・本当?」
幼女「ほ、本当です・・・」
男「・・・よっしゃ」
幼女「?」

48 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 15:57:05
相変わらず、人とは良く分からないものだ。

というのも、この10年もの間にこの人間の子が外との関わりの一切を持たなかったからなのではあるが。

だがそれも、今日からは変わるかもしれない。

水を嫌う者が桶に向き合い、顔を浸し始めたのだ。

期限と比べれば、慣れるのにはそう時間はかからないだろう。

そうして慣らしている間に、我も人間についてよく学ばなければならない。

今日から、今日から学び始めよう。

そして人の進歩を見つめよう。



幼女「な、撫でないでください・・・子供じゃないんですよ!?」
男「あ、すまん・・・つい」


この小さき子がこの先、どう生き・・・どう“未来の恐怖”を克服するのか。

それを見るのが我の楽しみでもある。

49 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 16:06:04

――約千年後


同じではないが、当時と様式がほぼ変わらない喫茶店が、そこにあった。

人類の文明はあまり進歩していなかった。
機械も発達しなければ、まだ電灯も普及しきっていない。

通信手段も無線のままで、相変わらずリンゴとヨウナシとブドウが、市場に多く置かれている。



仮面「・・・戦争、か」

「?」

仮面「いや、なんでもない」

「どうしたどうした、戦争なんて珍しいもんでもないだろう」

仮面「・・・うむ」


仮面「(そうだな・・・今となっては、さして珍しくは無い・・・)」
仮面「(だが、当時はあり得なかったのだぞ・・・?)」
仮面「(このように、机上で・・・カードを広げ、戦争するなど・・・)」

仮面「(・・・少しは、私の努力に感謝してほしいものだな・・・)」
『我の努力にもな』
仮面「(ああ・・・感謝しているとも・・・魔王よ)」

50 :エル ◆rt7HJ9hh/s:2009/08/22(土) 16:07:35
END

しかし未来はどこまでも続いてゆく。
少なくとも、だいたい、あと9千年くらいは。

51 :みんなの暇つぶしさん:2009/08/22(土) 16:33:04
マジ乙


関連リンク:
http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1023407.html


このSSは【SS企画】Swriters【誰でも来い】 の完結作品です!!
今回作者さんには安価で決まった以下の条件でSSを書いて頂きました。

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