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4044:地域ゆっくりとして生きるということ

2015/05/04 (Mon) 12:00
地域ゆっくりとして生きるということ






「ごみさん、まりちゃにひろわれてにぇ!すいがらさんに、がむさん!」

ビニール袋を引きずって、ゴミを拾い集める。
まりちゃは、公園に住む地域ゆっくりの子だ。
子ゆになったばかりだが、地域ゆと認定され、その義務としての仕事をすでに始めている。
そう、まだ大人の喋り方がうまくできない小さなまりちゃなのに、仕事をしなければいけないのだ。

地域ゆであることは、ゆっくりできない。

仕事を休むな。
仕事をさぼるな。
人間に要求をするな。
際限なくおちびちゃんを増すな。
おうたを歌うな。
大きな声で喋るな。
花壇の花を食べるな。
ゴミ捨て場を荒らすな。
日々生きていけることを、人間に感謝しろ。

しかし、ゆっくりできないことへの対価は、抑圧を補って余りあるものだ。
地域ゆであることを示すバッジによって、対人の安全が担保される。
好きな相手と結婚でき、子作りも制限があるものの自分の意思で行える。
仕事をすれば、対価としてごはんがもらえる。
野良ゆが苦い苦い草を食んでいる間、地域ゆは飼いゆが食べているようなゆっくりフードを食べられるのだ。

野良ゆっくりほど悲惨でなく、飼いゆっくりほど不自由ではない。
ゆっくりにとってこれ以上良い待遇は無いと両親は言う。

そうは言っても、仕事をすることは、ゆっくりできない。
まりちゃは世界に祝福されて、ふかふかのベッドさんの上で、たくさんのあまあまを食べて―――なんてことは、地域ゆが得られる待遇なんかじゃないっていうことは、もう知っている。地域ゆが、仕事をすることで人間さんから生きることを許されていることも、知っている。
でも本当は、ぴょんぴょんしたり、のーびのーびしたり、こーろこーろしたり、日向ぼっこしたり。そういうゆっくりしたことのほうが、したい。そんなことができたのは、本当の本当におちびちゃんだった頃しかないのだ。

「にんげんさんが、ごみさんをすてなければいいのじぇ……」

少し口を尖らせながら、それでもお下げで吸殻を拾い、ビニール袋に放り込む。

「むきゅ、よくやっているわね、おちびちゃん」

「おさ!ゆっくちしていってにぇ!」

「ゆっくりしていってね。おちびちゃん、げんきなごあいさつはいいのだけれど、もうすこし、こえをおとしてね」

「ゆ、わかっちゃのじぇ」

まりちゃは輝くような笑顔で、長ぱちゅりーにご挨拶をした。ご挨拶はとっても、ゆっくりできる。
しかし長から帰ってきた言葉は、「もっと声を落とせ」だった。そんなに大きな声を、出しただろうか?まりちゃは不満を覚える。

「いいおてんきね」

「うん、いいおてんきなのじぇ」

こんないいお天気なのだから、みんなでピクニックに行きたい。その言葉をぐっと飲み込む。

「おちびちゃんはまりさににて、はたらきものね」

「まりちゃは、おとーさんのような、りっぱなかりうどになりたいのじぇ!」

「そのいきよ、おちびちゃん。でももうすこし、こえをおとしてね」

長は意地悪だ。いつも仕事をしないで、公園の見回りをして、群れのゆっくりが仕事をさぼっていないかチェックしているのだ。ちょっと息を抜いただけで、くどくどと小言を言ってくる長のことは、あまり好きではなかった。長はその後二言三言、まりちゃと世間話をして、公園の見回りをしに行った。

「ゆふー、いきがつまるのじぇ」

まりちゃは体をほぐすようにのーびのーびすると、またゴミ拾いを再開した。



「たじゃいまー、なのじぇ」

今日の仕事を終え、まりちゃはおうちに帰る。
野良ゆが住むような、木のうろだとか水でふにゃふにゃになった段ボールではない、立派なおうちだ。
プラスチック板でできているそのおうちは、天井だけが透明になっていて、そこが採光窓になっている。公園の景観を損なわないようにトイレの裏などの目立たない場所に並べられていて、その中のひとつがまりちゃ一家のおうちになっている。
成体二匹と半分が入ればいっぱいになってしまうほど狭いが、人間によって作られたそのおうちは、清潔で、水に強く、風が吹いてもへっちゃらだ。
入り口の上に庇のようになっている部分はおうちの蓋で、蓋に付いている紐を引っ張ると、蓋をゆっくり自身で閉められ、音を遮断することができるようになっている。このギミックのおかげで、おうちでは心置きなく大きな声を出せる。おうたを歌うことすら可能だ。

「ゆっくりおかえりなさい、おちびちゃん」

母であるれいむが、まりちゃに笑顔を返してくれる。まりちゃは既に地域ゆの仕事をしていて立派な社会ゆんになっているつもりではあるが、やはりこの笑顔をみると、全てを投げ打って甘えたくなってしまう。母れいむの、ふくよかなおなかにぽむん、と飛び込んで、ぐりぐりと顔を埋める。

「おとーさんは、まだなのじぇ?」

「そうだよ。ごはんのよういをするから、おてつだいしてね」

「わかったのじぇ!まりちゃ、おさらさんをよういするのじぇ!」

「ゆふふ、おねがいね」

まりちゃの父はまりさで、野良ゆの駆除をするチームの一員だ。黙って駆除される野良ゆは皆無と言っていいので、いつでも命懸けの危険な仕事だ。そんな仕事をしている父のことが、まりちゃは誇らしい。野良のゲス達を蹴散らし、その悪い企みを粉砕するという正義のお仕事をしている父は、たまらなく格好良く見える。

でも父はあまり、仕事のことを話してくれない。ゲスを制裁するという格好いい仕事をしているのに、どうしてお話してくれないのか。まりちゃは不満もあるが、父に嫌われたくないので、あまり強くそういうところを聞きにいけない。

「かえったのぜ」

父まりさが仕事を終え、帰ってきた。駆除任務の給与であるゆっくりフードそれなりー!味と、そして狩ってきた芋虫をおうちの床に置いていく。支給されるフードが少なめであるとはいえ、草むしり役の母れいむが持ち帰る雑草を合わせれば、家族三匹が食べていくには十分すぎるほどである。しかし父まりさは、必ず仕事帰りに狩りをしてから、帰ってくる。

「きょうもおつかれさまだよ、まりさ」

「しゅごいのじぇ!まるまるふとった、いもむししゃんなのじぇ!」

まりちゃは目を輝かせる。それなりー!味とはいえ、ゆっくりフードは野良ゆの一部である地域ゆにとってはご馳走である。しかし、父が手ずから狩ってきた新鮮な獲物の味もまた格別なものだ。芋虫の、噛んだ瞬間に口の中に流れ出る体液の野性味溢れる味。それはまりちゃの大好物のひとつだった。

「ゆふふ。いもむしさんは、おちびちゃんがたべてね」

母れいむは父まりさが帰ったらすぐにごはんにできるよう、いつも少し早めに帰ってごはんの用意をしている。
その日もすぐにごはんになって、葉っぱのお皿に、フードの備蓄と母れいむが雑草を噛み砕いて丸めた草団子、そしてまりちゃの前には芋虫が追加されて置かれた。
苦くゆっくりできない味の雑草が甘くなるまでむーしゃむーしゃしなければならず、しかも折角甘くなった雑草を飲み込むことができない草団子づくりは、ゆっくりできないことだ。それでもこの草団子は、毎日食卓にのぼる。少しだけ草の青臭さが残った甘い草団子は、人間から支給されるゆっくりフードよりもご馳走に思える。母の愛情の詰まった草団子を毎日食べられて、まりちゃは幸せだと思う。

「まりちゃと!」
「まりさと!」
「れいむの!」

「「「すーぱーむーしゃむーしゃたいむ、はじまるよ(のじぇ!)!!!」」」

「うめっぱねっ!しあわせー!むーしゃむーしゃ!しあわせー!」
「いもむししゃんやばいのじぇ!やっべ!やっばいのじぇ!ちあわしぇー!」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」

ゆっくりの本能を爆発させながらしあわせー!を小刻みに繰り返し、ぼろぼろと食べかすを床にこぼす。飼いゆですらできない、贅沢だ。

食べかすをぺーろぺーろして床を綺麗にして、外の共同トイレでうんうんをしたら家族団らんの時間だ。その日あったことをみんなでお話したり、すーりすーりやぺーろぺーろしたり、母れいむのおうたを聞いてゆっくりしたりする。
お帽子の手入れをしだした父まりさにやり方をレクチャーしてもらったりしていると、だんだんとまりちゃはおねむになってくる。
地域ゆとして立派に仕事をこなしているとはいえ、まだ子ゆになったばかりである。エネルギーの使用配分という概念がなく常に全力なので、うとうとしだしたと思うと電池が切れたようにその場でこてん、と眠ってしまう。両親は、そんなまりちゃを見てゆっくりと微笑み、支給された雑巾のベッドにまりちゃを運ぶ。

そうして一日が終わる。




「ゆっへっへ!みるのぜおちび、にんげんのどれいが、ゆっくりしていないことをしているのぜ!」

「おお、あわりぇあわりぇ!れいみゅはおとーしゃがゆっくちさしぇてくりぇて、ちあわしぇじゃよ!」

「なんていいこなのお、おちびちゃん!ゆっくりしてるよお!」

公園には、時々野良ゆが観光にやってくる。

群れには、公園に来る野良ゆと関わってはいけないという掟がある。汚らしい姿で、頬がこけて痩せたゆっくりに馬鹿にされるのはゆっくりできないが、まりちゃは無視してゴミを拾う。

「まったく、おやはなにをしているのぜ?こんなおちびにしごとをさせて、なさけないとおもわないのぜ?」

「あわりぇしゅぎるよお!」

「ゆふふ、ほらおちびちゃん、これをすててごらん。どれいがひろって、おもしろいよ!」

野良れいむが、子であるれいみゅに煙草の吸殻を渡す。

「きゃわいいれいみゅがすいぎゃりゃしゃんを、なぎぇるよ!ゆっくちちないじぇ、ひろっちぇにぇ!」

れいみゅはその吸殻を、まりちゃのほうに放り投げた。カッと頭に餡がのぼるのがわかったが、じっと我慢する。
怒りでお下げがぷるぷると震える。震えるお下げで、吸殻を拾う。

「ゆぷぷっ!ほんちょうにひろっちゃよ!」

「ゆふふ、ああしないと、『けーかん』がわるくなるんだって!そんなのゆっくりには、なにもかんけいないのにね!」

「ゆっひゃっひゃ!まったくゆっくりしてないのぜ!ほら、しごとなのぜ」

ぽとりと、くしゃくしゃになったティッシュが放り投げられる。まりちゃは野良まりさを睨みつけた。

「ああん?なんなのぜ?しごとをくれてやってるのに、なにかもんくがあるのぜ?このさいっきょうのまりささまに?」

みすぼらしく痩せているとはいえ、体の大きい成体にすごまれて、まりちゃはあんよが竦んだ。怖くて、おめめに涙が溜まっていく。

「はっ、なさけないのぜ!それなら、さいしょからにらむな、なのぜ」

「おお、なしゃけない、なしゃけない!」

「なにを、やっているのぜ?」

凄味のきいた声が公園に響いた。野良ゆ駆除チームのリーダーである、まりさがそこにいた。片方のおめめが潰れていて、顔は傷だらけだ。何度も何度も戦って、捕食種や猫とも戦って、体に向かい傷しかつけていない本物の英ゆんだ。

「うちのむれのおちびに、なにかようなのぜ?ここは、のらのいていいばしょじゃないのぜ」

「なんなのぜそのたいどは?まりさを、せいっさいできるとでも、おもっているのぜ?にんげんのどれいが!」

「しょーじゃ!しょーじゃ!どりぇいのくしぇに!」

家族の前で情けないところを見せられない野良まりさが、強がるように吠える。しかし、まりちゃから見てもわかるほど、腰が引けている。
それほど片目まりさは、恐ろしかった。

「さっさとどこかにいくのぜ。さもなければ……くじょ、するのぜ?」

片目まりさは、制裁ではなく、駆除という言葉を使った。何匹もゆっくりを屠っていなければ出せない、凄惨ともいえる迫力が場を支配する。ひいいっ、と野良まりさがしーしーを噴出し、れいみゅはあまりの恐ろしさに気絶した。それをきっかけに野良一家は転がるように公園を去っていった。

「ふん、うすぎたないのらが。くじょしてもくじょしても、わきでてくるのぜ」

「お、おじさん……ありがとう、ございます……」

「ん?ああ、おちび、よくがまんしたのぜ。こんじょうがすわっているのぜ」

群れ一番の勇者に褒められて、まりちゃは素直に嬉しかった。一端のまりさとして、認められた気がした。

「でも、でも……まりちゃは、くやしかったのじぇ……」

「あんなの、きにするな、なのぜ。じめんをはいつくばって、くさりかけのなまごみさんをたべて、どろみずさんをすすって……それすらも まんぞくにおさげにつかめないやつらなのぜ」
「ゆんせいがうまくいかないうっぷんを、せめておなじのらの、ちいきゆっくりをみてはらしにきている、なさけないやつらなのぜ」

「でも、でも……」

「にんげんのどれい、っていうことばが、きになるのぜ?」

こくん、とまりちゃは頷く。

「まあ、それはまちがっては、いないのぜ。にんげんのおめこぼしでいきていけるっていうのを、まいにちにんしきさせられるのは、ゆっくりできないのぜ。でもまりさは、このせいかつはわるくないって、おもうのぜ。のらゆっくりほどひさんでなく……」

「……かいゆっくりより、ふじゆうじゃない?」

「ふん、わかってるじゃないか、のぜ。それがわかっていれば、じょうとうなのぜ」

「ゆう……」

まりちゃはなんだか言いくるめられたような気がしたが、あんな屈強な片目まりさでさえ、まりちゃと同じような悩みを抱えているのだと思うと、少しだけ餡子が楽になった。


人間の奴隷として、人間のお目こぼしで生かされていること。そのゆっくりできなさ。同じような悩みは、父も持っているのだと、まりちゃは思う。時々、夜寝ている時、父が泣いている声で目を覚ますことがある。

「ゆぐう……おちび……ごめんなざい……ごめんなざい……」

父の泣き声を聞くと、まりちゃはいたたまれなくなる。
声をかけてはいけないと思い、寝たふりをする。
母れいむの体も緊張していて、目を覚ましてじっと息を殺しているのがわかる。
まりちゃは母れいむのおなかに、顔をうずめる。なぜだかわからないが、涙が滲んでくる。
父の泣き方はいつも同じだ。まりちゃに、謝り続けるのだ。

父はまりちゃに、何を謝っているのだろう。

安全なおうちに、飢えの心配のない生活。
確かに小さいうちから仕事をするのはゆっくりできない。
野良ゆっくりに人間の奴隷と蔑まれるのはゆっくりできないが、こんなに懺悔するような泣き方をされるほど惨めではないと、そう思う。

「ゆぐっ……おちびぃ……おちびぃ……ごめんなざい……」

父は泣き続ける。まりちゃのおめめに涙が満ちて溢れ、頬に一筋、垂れた。




「ゆっち、ゆっち。おそうじはたいへんなのじぇ!」

まりちゃはゴミ袋をがさがさいわせながら、今日も公園に落ちている小さなゴミを拾い集める。
公園は地域ゆによって景観が維持されていると同時に、ゲス野良がいないという治安の良さもあり、飼いゆを連れた人間がよくやってくる。
今も、まりちゃの前を、人間に抱かれたありすが通りがかった。ありすのさらさらの金髪が風に揺られて、太陽の光を反射する。お空にキラキラと光が満ちたように感じた。

「ゆわあ、すごくゆっくちしてるのじぇえ……」

ありすはまりちゃと目が合うと顔をしかめて、人間に何やら話しかけた。

「ねえ、あなた。うちのありすを見ないでね」

「ゆ、え……?」

「そんなけがらわしいおめめで、ありすをみないでね!そのありすをなめまわすような、め!それがいやなのよ!」

「ゆう……あまりにもありすおねえしゃんがゆっくちしてるから、みてしまっただけなのじぇ……」

「掃除するのがあなたの仕事でしょ?ありすを見てどうするつもりなの?」

「しょれは、しょれは……」

「にんげんさあああん!ごめんなさい!このおちびちゃんが、なにかしたかしら!?」

長ぱちゅりーが、ぱちゅりーらしからぬスピードで跳ねてきて、慣性を活かした横軸スライド土下座をしながら、まりちゃと人間の間にスタイリッシュに割り込んできた。地面に砂埃が立ち、あんよが削れたのか、少しだけクリームの線が残った。

「この子が、うちのありすを嫌らしい目で見てたのよ」

「それは!もうしわけありません!!にんげんさんや、かいゆっくりのようなりせいがないので、せいよくをおさえきれないのです!!これから、このせいよくもんすたーは、ちからでおさえますので、もうごめいわくはおかけしません!!!にんげんさんのかんだいさで、どうか!どうか!ごようしゃください!!!」

長ぱちゅりーは、もみあげでまりちゃにも頭を下げさせると、自らは何度も地面に顔を打ち付けた。額が破れクリームが漏れても、地面に顔を打ち付けるのをやめなかった。その土下座の勢いで集まる周りの人間の目が気になったのか、人間は、気をつけなさいよね、と言って去って行った。

まりちゃは嗚咽しながら、長ぱちゅりーと向き合う。

「おさぁ……おざぁ……」

「……ぱちぇは、おちびちゃんがわるくないのは、わかっているわ。でも、ああいうときは、じゆんがわるくなくても……あやまるのよ」

「どぼじで……?どぼじで、まりちゃわるくないのに、あやまらないといけないのじぇ?おかしいのじぇ……」

「にんげんさんには、さからっちゃいけないのよ。にんげんさんがくろといったら、しろいものも、くろいのよ」

「ぞんなの、ゆっぐちできないのじぇ……ゆっぐち、できない……ゆぐっ……」

「それがちいきゆっくりなのよ。ちいきゆっくりとしていきるのであれば、うけいれるのよ」

「……」

「さあ、おうちにかえりましょ」

黙りこくってしまったまりちゃの背をもみあげで優しく押しながら、長ぱちゅりーが歩くことを促す。

「なにもわるいことをしてないのに、はんざいゆんあつかいされて、しょっくだったわね。きょうはもう、おしごとはおわりでいいわ」

「ぐすっ……ぐすっ……」

「あのばをきりぬけるためとはいえ、おちびちゃんをわるくいって、ごめんなさいね……」

「ゆぐっ……ゆぐ……」

「おちびちゃんは、せいよくもんすたーなんかじゃないわ」

「ゆええん……えーん……」

ゆんゆんと泣くまりちゃを、額からクリームを流した長ぱちゅりーは慰めながら、おうちに連れて帰ってくれた。
長ぱちゅりーは、性欲モンスターは言いすぎたわ、と言って去り、まりちゃはおうちにひとゆ残された。

その後おうちに帰ってきた母れいむのおなかに飛び込んで、まりちゃは泣きに泣いた。

どうして悪いことしていないのに謝らないといけないの。
どうして飼いゆっくりを見ただけで、あんな扱いを受けないといけないの。
どうして野良ゆっくりに馬鹿にされないといけないの。
どうして子ゆっくりなのに仕事なんてしないといけないの。
まりちゃが地域ゆっくりだから?まりちゃが飼いゆっくりじゃないから?
まりちゃが公園に生まれたから?

今まで素直に従ってきたことに、最近立て続けに理不尽な扱いを受けたことを切欠として反抗心があふれ出た。
いや、今まで溜め込んできた不満を爆発させた、と言ったほうがいいだろうか。まりちゃは感情を爆発させ、母れいむに思いを訴え続けた。

まりちゃが紡ぐのは、一生懸命育ててくれている両親の、そしてその両親の―――繋がれてきた命のバトンに泥を塗り、否定する言葉だった。まりちゃは、はっきりとそれを理解しているわけではないが、薄々それに感づき、自ゆんの言葉で母れいむを傷つけてしまっていることに心が痛んだ。しかしまりちゃは感情を訴えることを止められなかった。

困惑し悲しそうな顔をする母れいむだったが、それでも、もみあげで優しく抱きしめてくれる。
その日まりちゃは、赤ちゃん返りをしてしまったようにずっと母にひっついて離れなかった。




昨夜、ひとしきり泣いたあとのまりちゃに母れいむが言った。

「それじゃあ、あしたは、しゃかいかけんがくに、いこうね」

群れのゆっくりは、子ゆの時に社会科見学をする機会がある。
どれだけ自ゆんが恵まれた環境に生まれたのか、野良ゆの駆除チームに随伴して学習するのだ。
いつ見学をするか、それは各家庭の親の判断に任されている。各家庭で、一番学習の効果が高いと思われるタイミングで行われる。

「お・や・しゅ・みー、お・や・しゅ・みーにゃのじぇー!」

広いお外の世界を見られることと、仕事がお休みになった嬉しさで、まりちゃははしゃいでいる。
しかも憧れの、野良ゆ駆除チームの仕事を見られるのだ。父の勇姿を想像して、まりちゃは悲しい思いをしたことをすっかりと忘れ、ワクワクして昨夜はよく眠れなかった。

まりちゃは、父まりさが所属する班に、片目まりさに連れられてやってきた。

「よろしくだみょん、おちび。なるほど、まりさによくにてるみょんね」

頬に傷のある、みょんが言う。

「よろしくなんだねー」

ちぇんが挨拶する。

「よろしくおねがいしましゅっ!!!」

まりちゃが元気よくご挨拶をして、父まりさは少しだけ誇らしげに微笑んだ。

「ほんとうはさんゆんひとくみだけど、きょうは、まりさもついていくのぜ。おちび、きょうはまりさに、くっついているのぜ」

片目まりさが、まりちゃのお守役としてついてきてくれるようだ。

「ゆっくち、りかいしたのじぇ。ちーむのみんなで、いかないのじぇ?」

まりちゃが片目まりさに尋ねる。駆除チームは、もっとたくさんのゆっくりが所属していたはずだ。

「まりさたちは、さんまでしかかぞえられないのぜ。だれかいなくなっても、すぐわかるような『はん』をつくるのぜ」

「ひとはん、さんゆんなんだよー」

「にゃるほどなのじぇ……」





「はしっこをあるくのぜ」

ずーりずーりと、一列縦隊で道の端を歩く。まりちゃでもついていけるように配慮しているのか、みんなゆっくりと歩いている。
そのすぐ横を人間がせかせか歩き、さらにそれよりも速くすぃーが走る。なんてゆっくりしていない世界なのだろうか、とまりちゃは思う。

「さっそくいたのぜ。まりさたちがくじょするのは、たとえば……ああいうやつ、なのぜ」

片目まりさがお下げで指し示す先には、ゴミ集積所を荒らす野良まりさがいた。
ゴミ袋を歯や枝で破り、中身を引きずり出しては吟味してお帽子に入れ、また違う袋に穴を開ける。
鬼気迫る表情でゴミをあさっているその姿はさながら餓鬼のようで、体は生ゴミの出す汁にまみれて、ここまで臭いが漂ってきそうである。

「ごみぶくろさんをもちかえるやつと、ああやって、そのばであらすやつがいるのぜ。そのばであらすやつは、そのばで、くじょするのぜ」
「まりさと、ちぇんとみょんでくじょするところを、みてるといいのぜ」

「わかったのじぇ……」

父まりさと、ちぇん、みょんが散開する。片目まりさは、まりちゃを護衛するようにぴったりとくっついている。父まりさが、野良まりさに声をかける。

「おい、そこのまりさ」

「ゆっ!?」

「そこのごみさんは、にんげんさんの、ものなのぜ」

「うるさい!まりさになんのようなの!?そんなの、おまえたちにかんけいないでしょ!?」

黄ばんだ歯をむき出しにして、野良まりさが吠える。生臭い息がまりちゃまで届いた。

「かんけいあるのぜ。まりさたちは、にんげんさんのいらいをうけて、まちをきれいにしているのぜ。そこをあらすのをやめるのぜ。だしたごみをもとにもどして、おうちにかえるのぜ。そうしたら、ゆるしてやってもいいのぜ」


「あれは、うそなのぜ。そうやって、おうちにかえったら……かぞくも、くじょできるのぜ。いっかいごみすてばをあらしたゆっくりは、なんかいでも、あらしにくるのぜ」

片目まりさが、まりちゃにこっそりと耳打ちする。

「うしょ、つくのじぇ……?」

「そうなのぜ。きれいごとは、いってられないのぜ」

「ゆう……」


そうこうしているうちにも、父まりさと野良まりさの言い合いは続いている。

「うるさい!うるさい!にんげんのどれいが、まりさにめいっれいしないでね!!まりさのかわいいおちびが、まってるんだよ!まりさは、たべられるごはんさんのひを、ずっとまってたんだよ!ずっとごはんをたべてないんだよ!」

「しかたないのぜ。くじょするのぜ」

父まりさが、お帽子から尖った枝を取り出した。野良まりさもそれを見て、お帽子から枝を取り出す。

「ゆらああ!!!」

「おとーしゃ!」

先手必勝とばかりに、野良まりさが父まりさに突っ込む。その迷いのなさは、経験の豊富さと強い殺意を想起させた。
まりちゃは思わず父の名を叫ぶ。
父まりさは口に咥えた枝で野良まりさの枝を横から叩き、いなした。父まりさは戦意が無いかのように、ただ野良まりさの枝を払う動作だけをしている。

「でかいくちたたいて、たたかうきがないの!くそにんげんのどれいが!」

そうこうしているうちに、ちぇんとみょんが枝を咥えて、野良まりさの後ろにまわっている。

「いっだーい!いだい!までぃざのあんよさん!」

ちぇんとみょんが、野良まりさのあんよを後ろから刺した。野良まりさは突然もたらされた痛みに耐えきれず、叫んで枝を取り落としてしまう。

「ひぎょうものがあ!!せいっせいどうっどうと、たたかええ!!」

「せいっせいどうっどうでごはんがたべられるなら、そうしてやるみょん」

「ゆぎいいい!!」
「あっ!あがあっ!やべでっ!ごめんなさい!もうごみすてばをあらしません!」
「がっ!あっ!」
「あっ……おちび……もっと、ゆっくり……」

その後は一方的だった。三方から枝を突き刺され、野良まりさはあっという間に殺された。

「ひとゆがずっと、ぼうぎょしているあいだに、ほかのゆっくりがあんよをさして、うごきをうばうのぜ。うごかなくなったら、ひといきに、いのちのあんこさんをさすのぜ」
「ぼうぎょにてっしていれば、まんがいちのじこが、おきづらくなるのぜ。いったいいちは、げんきんなのぜ」

片目まりさの解説は、あまり頭の中に入ってこなかった。
あんよの震えが止まらなかった。吐き気すら感じた。
謝罪や命乞いなどものともせず、父を含む班のみんなは無言で無表情で、淡々と野良まりさを刺していた。同族の命を奪うということ、その現場を生まれて初めて見たまりちゃは、その圧倒的な現実にただ息を呑んだ。

「み、みんにゃ……あの、のらゆっくちは……あやまっていたのじぇ?」

「それがどうしたんだよー。あんなのは、そのばをしのげれば、どうでもいいってやつだよー」

「おちびちゃんも、いるっていっていたのじぇ……?」

「そうやってみのがしていたら、まちはげすであふれるみょん」

「いたがってたのじぇ……ないていたのじぇ……」

まりちゃは、今までの考えがあまりに甘い、お花畑のようなものだったと痛感した。
人間の手先となり、人間に迷惑をかけるゆっくりを駆除するということ。駆除という言葉の意味。
想像していたような、ゲスなゆっくりをただ懲らしめて終わりなんていう牧歌的なものではないことを、理解した。

「うっ……」

まりちゃは漂ってくる死臭にえずき、苦労して餡子を飲み込む。

「おちび、だいじょうぶなのぜ?」

父まりさが心配そうにまりちゃの顔を覗き込む。まりちゃは震えながら、こくんと頷いた。

「さあ、あらされたごみすてばを、おそうじするのぜ」

片目まりさが号令をかけ、ゴミ集積所に設置された小さなちり取りと箒を使い、荒らされた集積所のお掃除が始まった。ゴミを集め、穴を開けられた袋で余裕がありそうなものに詰め込んでいく。野良まりさの骸は集積所の隅っこに置かれ、片目まりさが集積所にネットをかけると、お掃除が終わった。

「ちゃんとねっとさんをかけないにんげんや、ねっとさんをかいくぐるゆっくりは、いくらでもでてくるのぜ。そこでまりさたちのでばんなのぜ」




お掃除をして一息つく間もなく、班は移動を開始する。
道路の端っこをずーりずーりと一列縦隊で進んでいると、路上で叫んでいるゆっくりが見えた。

「でいむはっ!!かいゆっくりでじだ!ぎんばっじさん、です!おといれをおぼえられます!」


「おとーさん、あれは……」

「もとかいゆっくり、なのぜ。ものごいをしているのぜ。くじょするのぜ」

「ほっといてもどうせすぐしぬけど、『けーかん』がわるくなるみょん」


「おじびじゃんは、うばれでがら!いばばで!ずっど、ゆっぐり、できながったんでず!おじびじゃんはまだ、ぴょんぴょんだって、じでないんでず!あばあばだっで、いっがいもたべでないんでず!れいぶはどうなっでもいいでず!!だがら、このづみもないおじびじゃんだげは!さいごの、おちびちゃんだけは!!たずげでぐだざいいい!!」

物乞いれいむが天に大事なものを捧げるように掲げる両のもみあげには、黒ずんだ小麦粉玉が乗っている。

物乞いれいむ自身も、無残な姿だった。栄養が足りなくて干し柿のようになってしまった体に、お飾りはもう布きれとしか言いようのないものしか残っていない。あんよにはカビが生えているのか、少し緑色になっていて、皮膚が崩れて中身が見えてしまっている。

「ひどいありさまなのじぇ……」

時々公園に観光に来る痩せた野良ゆが肥満ゆっくりに見えるほどの悲惨な姿に、まりちゃは顔を歪める。

「じゃあ、みょんがしょうめんをとるみょん」

「おねがいだよー」


「そこのれいむ、ものごいはやめるみょん」

みょんが声をかけると、物乞いれいむは目をむき歯茎をむき出しにして、みょんを睨みつける。

「なんだんだおばえだじはあ!!!じゃばを、じゃばをするなあ!!」

声をかけられただけなのに、物乞いれいむはそれだけで激高してみょんに飛びかかろうとした。
しかしカビが生え腐りかけのあんよがその場に残り体だけ前に出て、だるま落としが失敗した時のようにずるりとスライドし、崩れて倒れた。
黒ずんだ小麦粉玉がもみあげから落ちて、てんてんと転がった。

「あああ!!あがああ!!だにごれええ!!でいむのせくしーあんよざん!」

「あーあー、くさっていたみょん」

「ゆかびだよー……」

崩れ落ちた物乞いれいむを見て、班のゆっくりたちは顔をしかめた。

一方まりちゃは、目の前に転がってきた小麦粉玉とじっと見つめ合っていた。

最後まで母から手入れをしてもらっていたのだろう、どす黒い小麦粉玉に釣り合わない色鮮やかで綺麗なお飾りで、それがれいみゅだということがわかる。
お飾り以外の部分、黒ずんだその表皮や光のないおめめ、力なくぶら下がったままのもみあげには、生を感じる要素が全くなかった。
それなのにれいみゅはまだ生きていて、何かを言いたいのか、かさかさに乾いた唇が少しだけ動く。
しかしれいみゅの口から漏れるのは、かひゅー、かひゅーという空気が声帯を揺らす音と、臭い息だけだった。
それは、先程の野良まりさの死骸と同じ臭いだった。

同世代くらいのれいみゅの、あまりにも救いがないその姿にまりちゃは心をえぐられ、あんよが動かない。
れいみゅから、目を離すことができない。

「かわいそうなのじぇ……」

「さわるな!」

れいみゅにお下げを伸ばしかけたまりちゃを、片目まりさが強く制止した。

「ははおやが、ゆかびにかかっているのぜ。そのおちびもたぶん、ゆかびなのぜ」

「でも……でも……」

いつの間にか班のみんなが、手近なゴミ集積所から小さな箒とちり取りを持ってきていた。
物乞いれいむは、失餡のしすぎかわからないが、まりちゃが気づいた頃には既に物言わぬ饅頭になっていた。

「おちびは、はなれているのぜ」

片目まりさが、まりちゃをお下げで引っ張った。
みょんが箒を持って、ちぇんとまりさがそれぞれ、ちり取りを構える。そして協力して物乞いれいむの死骸をかき集め始めた。
みょんはゴミ集めのついでのように、れいみゅも箒で転がして、父まりさの咥えるちり取りに押し込む。父まりさが少しだけ、目を背けた。

「いき、いきちぇるのじぇ!れいみゅ、まだ、いきちぇるのじぇ!」

「かわいそうだけど、えださんでさしたら、ゆかびがつくのぜ。そのまますてるしかないのぜ」

「ちがっ!どぼじで、どぼじで、たすけないのじぇ!」

「ああ……そういうことなのぜ。ちちおやににて、やさしいやつなのぜ。でも、にんげんにめいわくをかけるのらはれいがいなく、ころすのぜ。それがにんげんと、まりさたちのきめごとなのぜ」

「しょんな、しょんな……」

まりちゃが片目まりさと話しているうちにも、父まりさとちぇんは何度かゴミ集積所と現場の往復をして物乞いれいむの死骸を運ぶ。道は、すっかりと何もなかったかのように綺麗になった。

「さあ、いくのぜ」




「ゆびっ!やべでぐだざい!もうげんかいでず!ごーろごーろじだぐないでずっ!!!」

片目まりさの号令で移動をしようとした時に、ゆっくりの悲鳴が聞こえてきた。声の方向を見ると、人間の子供たちが、野良のまりさを蹴り転がしながらこちらに近づいてくるのが見えた。
野良まりさはお帽子を無くしてしまったのか、かぶっていなかった。体中に餡子が染み出していて痣や切り傷だらけになっている。
大人なのにしーしーと涙を盛大に流していて、情けない姿だった。

「にんげんさん、まってほしいのぜ」

「ああ?」

片目まりさが、人間の子供たちに声をかける。
人間の子供のうち一人が、野良まりさに足を乗せて、転がるのを止めた。

「ゆひっ!そごのゆっぐり!まりざをだずげでっ!だずげでねっ!!」

「なんだこいつ?」

「ほら、見ろよとし君、バッジついてる。あの公園のさ……」

「ああ……」

人間の子供たちは、まりちゃたちのお飾りについているバッジを見て顔をしかめた。

「やったっ!まりさはたすかるんだねっ!」

「にんげんさん、そのまりさは、まりさたちがせきにんをもってかたづけるのぜ。『けーかん』をいじするために、ごきょうりょくいただきたいのぜ」

「ゆ……え……?」

「じゃあ、今、ここで殺せよ」

「わかったのぜ」

「やだああああ!!やだ!だずげでぐれるんじゃないの!」

班のみんなが、枝を咥えて野良まりさに近づく。

「いっだ!いだああい!!やだっ!どぼじでええ!がっ……もっど、ゆっぐりじだがっだ……」

「あー、もう殺したよ」

「もっといたぶれよ。あーあ、白ける」

もっといたぶって殺せと、人間の子供はそう言っている。
父たちは野良まりさに無用な苦痛を与えたくなくて、それでも苦労して殺しているというのに、なんと酷いことを言うのかとまりちゃは思った。人間の子供たちは、ゆっくりできない目でまりちゃたちを見て、何やら小さな声で相談している。

「クソ地域ゆっくりが、邪魔しやがって……」

「とし君、ほら、後でさ……クスクス」

「あき、ひどいなお前……クスクス」

「にんげんさん、ごきょうりょくありがとうなのぜ」

「ああ、じゃーな」

人間の子供たちは、死んだ野良まりさを一瞥もせずに去って行った。




その後もまりちゃは、色々な物を見た。
れいぱーに襲われ、額から茎を何本も生やして死んでいるれいむ。
戯れに蹴られ、あんよを破壊されて動けなくなり、死を待つだけになってしまったありす。
虐待され、おめめもおくちも髪の毛もお飾りも無くし、すべすべの饅頭となって路上に放置されてうねうねと蠢く、だれか。
誰も彼も、悲惨だった。

悲惨な同族を、父まりさたちは淡々と、必要なら殺し、解体して小分けにして掃除していく。

移動の合間に、まりちゃは考え込む。
まりちゃと野良ゆっくりに、違いなんてない。ただ、お飾りにバッジが付いているかいないか。それだけだ。
まりちゃは地域ゆのバッジに、自ゆんがどれだけ守られていたのかを知った。
理不尽なことで謝罪させられるというレベルではない。弁明や命乞いの機会すらなく、野良ゆたちは殺され死んでいくのだ。
まりちゃの頭から、先ほどのれいみゅの顔が離れなかった。

「おとーさん……」

「ゆん?どうしたのぜ、おちび?」

一日中ずっと青い顔をしているまりちゃを、父まりさはちらちらと心配そうに様子を窺っていた。呼びかけられた父まりさは、すぐにまりちゃに近づいてくる。

「のらゆっくちも、にんげんさんとなかよく、くらすほうほうは、ないのじぇ?」

「……ないのぜ」

「どぼじでなんだじぇ?」

「まちでいきるということは、にんげんさんの、もちもののなかでしか、いきられないってことなのぜ。おちびは、こうえんとか、おうちがにんげんさんのものだって、しっているのぜ?」

「ゆん、しっているのじぇ」

「のらは、それをしらないのぜ。せかいじゅうすべてが、ゆっくりのものだとおもっているのぜ。だから、にんげんさんのものを、かってにつかっては、おこらせるのぜ」

「おしえてあげれば、いいのじぇ。おはなししたら、きっと、わかってくれるのじぇ」

「たぶん、わかるゆっくりも、いるのぜ。でもほとんどの、のらゆっくりは、りかいできないのぜ。だって、せかいじゅうすべてがゆっくりのものだと、おもっているのぜ?わざわざじゆんのゆっくりをへらすようなことは、うけいれないのぜ」

「でも、でも……ゆっくちがゆっくちしたいっておもうのは、しょうがないことなのじぇ。それに、にんげんさんは、もういっぱいゆっくちをもっているのじぇ。ゆっくちを、ほんのすこしくらいわけてくれたら、みんなでゆっくちできるのじぇ?ひとりじめは、ゆっくちできないのじぇ」

「おちびは、もっとおちびのころからずっと、しごとをしているのぜ?それは、にんげんさんに、ゆっくりをわけてもらうためにやっていることなのぜ」

「ゆっくりでもおなじなんだよー。なにかをもらうときは、なにかをあげないといけないんだねー」

「のらゆっくちも、なにかをあげれば、にんげんさんと、なかよくできるのじぇ?」

「そうかもねー。でも、にんげんさんはゆっくりがもっているものなんて、ほしがらないんだねー」

「ちいきゆっくりは、にんげんさんが、『めんどうくさくて、やりたくないこと』をひきうけて、おしごとをするのぜ。ゆっくりできないことばかりだけど、そのみかえりが、あんぜんで、ごはんのしんぱいがない、くらしなのぜ」

「のらゆっくちみんなが、しぇめて、ちいきゆっくちみたいになれないのじぇ?」

「だめなのぜ。あいつらは、がまんできないのぜ。ほんのちょっとのゆっくりできないことが、がまんできないのぜ。それで、もっとおおきなゆっくりをうしなっていることに、きづけないのぜ」

「ちいきゆっくりにうまれても、にんげんさんにしたがうのはゆっくりできないって、のらになるゆっくりも、いるんだよー。おしえてもらっても、がまんできないゆっくりだって、いるんだよー」

その気持ちは、まりちゃもよく分かる。お仕事なんてしないで、ゆっくりできるなら、それが一番いい。

「ゆっくりごとに、がまんできることと、できないことが、それぞれちがうのぜ。にんげんさんとつきあうことでうまれる、ゆっくりできないことを、がまんできるゆっくりでないと、うまくやっていけないのぜ」

「ゆ、ゆう……」

「それが、ちいきゆっくりなのぜ。おちびがちいきゆっくりとしてみとめられてるってことは、しぜんにがまんできてるってことなのぜ」

「だからわかりづらいのかもねー。だって、うまれてからずっとふつうにおもっていたことが、ゆっくりできないっていうきもちは、そうぞうできないんだねー」

「ゆう、まりちゃだって、おそうじとかじゃなくて、ほんとうは、ゆっくちしたいのじぇ」

まりちゃがそう言うと、違いない、と大人たちは笑った。




「そろそろ、こうえんにかえるのぜ」

やっと終わる、とまりちゃは思った。
まりちゃは一日中歩きづめで、へとへとだった。ずっと固い地面をずーりずーりしていて、あんよが痛かった。

「ゆひい、ゆひい……」

「おちび、がんばるみょん。あとすこしだみょん」

「ふつうのおちびなら、あるけなくなってるんだねー。なかなかこんじょうあるんだねー」

「ふだんからおしごとを、しっかりしているからなのぜ。おさも、かんしんしていたのぜ」

大人たちがまりちゃを励ましてくれる。普段の自ゆんの頑張りを誰かが見ていて評価していてくれたことが分かって、とても嬉しかった。
餡子がほんわかして、歩く力がまた生まれる。

「おちび、ざんねんなのぜ。あとひとつ、しごとができたのぜ」

片目まりさが、お下げを指し示す。そこには、路地裏に入っていく野良まりさがいた。

「ゆう……」

まりちゃは、帰宅が先延ばしになったことよりも、また凄惨な駆除を見なければならないことに気が滅入った。
そんなまりちゃの気持ちを知ってか知らずか、班のメンバーは、まっすぐに路地裏に向かう。
路地裏には、横倒しになった段ボール箱が置いてあった。まりちゃたちが路地裏に入った時、ちょうど野良まりさが、その段ボールのおうちに入っていくところだった。

「ちぇんが、ていさつするよー」

ちぇんがぴょんぴょんと跳ね、段ボールのおうちを横切る。そうしてまた往復して、こちらに戻ってきた。

「せいゆんがふたゆ、おちびがたくっさん。もんだいないよー」

「よし、いくのぜ」

班のメンバーが、ずーりずーりとおうちに向かう。

「たたかえるゆっくりがたくっさんいるかぞくだったら、きけんなのぜ。おうえんをよぶか、ひとゆずつおびきだして、ころすのぜ」

片目まりさが、まりちゃに解説する。

「あれはふつうの、つがいみたいなのぜ。だからひとはんで、もんだいないのぜ」

ちぇんがおうちの向こう側に行き、みょんと父まりさがこちら側に待機した。父まりさが声をかける。

「おまえたち、でてくるのぜ」

「なっ、なんなのぜ!おまえら!」

野良まりさがずーりずーりと外に出てくる。きょろきょろと周りを見て、怯えている様子だ。

「おまえもでるのぜ」

父まりさがそう言うと、おうちの中から、額に茎を生やしたれいむが這い出てくる。そのふくよかなおなかで、まりちゃは少しだけ母のことを思い起こした。

「なに、なんなの……れいむたちは、にんげんにめいわくをかけてないよっ……」

「そうなのぜ、ちいきゆっくりが……なんのようなのぜ」

怯えた目で野良の番が口を開く。

「じゃあ、これはなんだみょん?」

「にゃんじゃ!くしょゆっくち!おうちにはいりゅにゃ!」
「ゆんやあ!きょわいよお!おとーしゃ!おとーしゃ!」
「げしゅなみょんにはぷきゅーするよ!ぷきゅー!!」

みょんが勝手に野良のおうちに入って、中からビニール袋を持って出てきた。おうちの中から、赤ゆの言葉が聞こえてくる。

「やっ!やめっ……」

みょんは野良まりさが制止する前に中身を検める。

「これは、にんげんさんのだした、なまごみだみょん」

「だから、だからなんなの?れいむたちは、いきてるんだよっ!ごはんをたべないと、いきていけないんだよ!!」

「そうなのぜ、かってにはえてきたごはんをたべることの、なにが、いけないのぜ」

「もんどうむようだみょん。くじょするみょん」

班のメンバーは枝を取り出す。父まりさが早々に野良まりさのあんよを刺し、動きを奪う。

「あぎっ!いだいっ!!なにずるのっ!このげすうう!!!」

「やめてねっ!まりさがいたがってるよ!」
「やめりゅのじぇえ!!おどーしゃをいじめにゃいでよお!!」
「やびぇちぇよおお!!やめにゃいと、ぷきゅーするのじぇ!!いやじぇしょ?ぷきゅーじゃよ!」

班の三匹は無言のまま、野良家族の懇願にまったく耳を貸さず、野良まりさを何度も刺し続けた。

「あっがっ!……もっど、ゆっぐり……じだがっだ」

どれかが中枢餡に達したのか、野良まりさは抵抗らしい抵抗をする間もなく、殺されてしまった。
死臭がまりちゃの所まで漂ってくる。

「ああああ!ばりざあ!!どぼじでっ!どぼじでっ!どぼじでこんなことするのおお!」

「ゆんゆあああ!おどーじゃ!!おどーじゃ!」
「おどーじゃああ!!」
「くしゃいい!!げろろろ」

「もうだいじょうぶなのぜ。ちかくで、みるのぜ」

片目まりさが、まりちゃの背をお下げで押す。
まりちゃはバランスを崩したように、ととと、と前に進み出た。
その場所からは、段ボールのおうちの中まで見渡せた。おうちの中には、まりちゃより少し大きいくらいの子ゆが二匹と、赤ゆが三匹、いた。
子ゆたちは泣きわめき、しーしーやうんうんを漏らし、餡子を吐いていた。
死臭とうんうん臭の混じった臭いにまりちゃは餡子を吐きかけたが、なんとか持ちこたえた。

「はっ、よくここまでふえたもんなのぜ」

片目まりさが呆れたように吐き捨てる。

「やべでぐだざいっ!れいむのおちびちゃんを、ころさないでぐだざいっ!!」

「そのまえにおまえなんだよー」

子の命乞いをする野良れいむが、尖った枝で刺され始める。

「あぐっ!ああっ!やべでねっ!いだいっ!ほら、みでっ!みでよ!れいむのおちびちゃん、こんなにかわいいんだよ!ゆっぐりできるでしょ?ねえ、ゆっぐりなら、わがるでじょお!?だがら、やべでねっ!」

野良れいむが、額から生えた茎を示す。
惨劇を知らぬまま、ゆっくりと微笑んで揺れる実ゆっくりを見て、まりちゃは素直に、可愛いと思った。とてもゆっくりできると思った。
しかし、あの子たちは生まれる前に殺されてしまうのだ。

「おめめをそらすな」

片目まりさが、地の底から響くような恐ろしい声で、まりちゃに命令する。
その声に、体が意思に反して従ってしまう。

父まりさたちは、実ゆを示されても、野良れいむを刺すことをやめなかった。

「にんげんのどれいがっ!どれいになっで、ゆっぐりごろじをして!そごまでじで、いぎだいのがっ!じゆんだぢだげ、ゆっぐりじだいのがっ!!!ゆっぐりじゃない!おまえら、ゆっぐりじゃない!」

野良れいむがうねうねと激しく動き抵抗しているため、父まりさたちは中枢餡をとらえきれず、無用な苦痛を野良れいむに与え続けている。

「やびぇりょおお!!おがーじゃをぷーしゅぷーしゅ、しゅるなああ!!」
「やべりゅのじぇええ!!ぷきゅーすりゅのじぇえ!!ぷきゅー!」

野良の子ゆたちがおうちから出てきて、父まりさたちに体当たりやぷくーをし始めたが、そんなことで凶行を止めることができるはずもない。

「がっ……やめで、ぼう……やめ……いだいんでず。いだいんでず……」

野良れいむが痛みに負け、背を丸めて動かなくなる。
そこへみょんが深く枝を刺すと、野良れいむの体が急速に黒ずみ、額に生えた茎があっというまに萎びた。

「ゆう、ゆう……おがーさん……」

まりちゃは、野良れいむの死ぬ姿に涙を流していた。野良れいむの姿に、母を重ねてしまったのだ。

「おがーじゃ!おがーじゃあああ!!」
「ぷきゅううう!!ぷきゅうううううう!!!なんじぇ、じなないのじぇええ!!なんじぇ!!」

「あぎっ!」
「ぼっど、ゆっぐり……」

ちぇんとみょんが子ゆっくりを枝で刺して、あっという間に殺してしまった。

「なかもやるんだねー」

「いちゆ、いちゆんだみょん」

「……」

おうちの中に、三匹の赤ゆが残っている。生まれたばかりではないかというくらい、体が小さかった。
三匹は身を寄せ合って震え続けている。

「たしゅけちぇにぇ、れいみゅ、きゃわいいでしょ?やめちぇにぇ……」
「やじゃあああ!!ちにたくにゃいのじぇ、ゆっくちちたいのじぇえ!!」
「おどーじゃ!おがーじゃ!だじゅげでよおお!!」

「……」

「ゆぴっ!」
「ぴぎゃっ!」

ちぇんとみょんは、躊躇なく赤ゆを刺して、殺した。残るのは、枝を構える父まりさと、小さな野良まりちゃだけだった。

「はあっ、はあっ……」

「できないみょん?」

「いやじゃああああ!!ちにちゃくにゃい!!やみぇちぇにぇ!かじょくのあいどる!まりちゃを、ころしゃにゃいじぇ!!」

「ふう、またなんだねー。ちぇんがやってあげようかー?」

「いや……やる、やるのぜ」

「にぇえ、にぇえ!まりちゃ、ちいきゆっくちににゃってあげちぇも、いいよ!にぇってば!じゃから、ころしゃないでよおおお!!!」

野良まりちゃは、必死に命乞いをしている。
顔をくしゃくしゃにして、涙としーしーとうんうんを漏らして、唯一助けてくれる可能性がありそうな父まりさのあんよに縋り付き、お下げで父まりさのおなかを叩いている。
父まりさがまりちゃを振り返り、何かを決意したような表情をする。


そうして、野良まりちゃを刺した。




その後はお決まりのお掃除だった。量が多いので、まりちゃもお掃除を手伝う。

「きれいなのじぇ」

おうちの隅に、きらきらしたガラスの破片や、ぴかぴかに磨かれた小石が置いてあった。きっと野良家族たちの宝物だったのだろう。

「もってかえってもいいんだみょん、おちび」

みょんがそう言ってくれたが、まりちゃは先ほどの野良家族の死を思い出すと、その宝物に手を付ける気持ちになれなかった。
ゴミの一時置き場に持っていき、積み上げる。

「だれかの、おかじゃりなのじぇ」

「ああ、たぶん、しんだおちびのかたみだみょん」

「ゆう……」

少しだけ死臭が残っているその小さなリボンは、紙の箱で作られた台の上、床よりも一段高いところに、宝物よりも大事なものであることを示すように置いてあった。丁寧に手入れがされていて、まるで新品のように思える。みょんは、そのリボンをぞんざいにゴミ山に投げた。

野良家族の大切な思い出や、宝物が、小さなちり取りに載せられてゴミ集積所に運ばれていく。

「おちび、さっきみていたから、わかるとおもうけど……おまえのおとうさんは、のらゆっくりのおちびがなかなか、ころせないのぜ」

片目まりさがいつの間にかまりちゃの側にいて、語り始めた。

「ゆう、それのなにが、いけにゃいのじぇ。やさしいのは、いけないことなのじぇ?」

「いや、おちびがそうおもってあげられるならいいのぜ。さっきのをみて、げんっめつ、してないかっておもったのぜ」

「そんなこと、ないのじぇ。おとーさんは、さいっこうのおとーさんなのじぇ」

「あんしんしたのぜ。こんじょうがないって、ばかにするやつも、たまにいるのぜ。おちびがもし、そんなことをおもっていたのなら……それは、ふとうなひょうかだって、いいたかったのぜ」
「おまえのおとうさんは、りっぱなせんしなのぜ。それをしっかり、あんこにきざむのぜ」

「ゆっくち、りかいしたのじぇ」

目の前では野良家族のおうちの段ボールが処理されようとしていた。

ちぇんと協力して段ボールを折り畳んでいる父まりさの姿を見ながら、まりちゃは、父が夜泣いている声を思い出していた。
あの謝罪は、まりちゃではなく、殺した子ゆっくりたちに向けられていたのだ。
父が泣いているのが自ゆんの為ではないとわかり少しだけ寂しかったが、なんとなく、何かから解放されたような気持ちも感じる。

「さあ、かえるのぜ」

日が落ちかけている。
まりちゃの長い社会科見学の一日が、ようやく終わろうとしていた。






「おかえりなさい、おちびちゃん」

母れいむが心配そうに、公園の入り口でまりちゃを待っていた。

「おがーしゃ!おがーしゃああ!!」

まりちゃは疲れてもう歩けないと思っていたが、母れいむの顔を見て、あんよが痛いのも厭わずぴょんぴょんと跳ねる。
まりちゃはそのまま母れいむのおなかに飛び込んで、箍が外れたように大声で泣き出した。
赤ゆのようなまりちゃの行動を笑ったり、大声を注意するゆっくりは、いなかった。

「おちびちゃん、おうちにかえろうね」


おうちの中で、まりちゃは昨夜以上に母れいむにべったりとくっついていた。
ほとんど会話は、なかった。ただ家族三匹でくっついて、すーりすーりをしていた。

その時だった。

突然おうちの蓋が開いて、何かが投げ込まれた。
すぐに蓋が閉められる。

何かが連続して爆発する轟音と光、そして火薬の匂い。

「ゆひっ!ゆひいい!!」
「なにこれ!なにこれなにこれ!」
「こわいのじぇえ!!めっじゃ、めっじゃこわいのじぇえ!」

父まりさがおうちの蓋に体当たりをするが、外から何かで押さえつけられているのか、開かない。

「げほっ、げほっ!!」
「おちびちゃん、おかあさんのおくちにはいってね!」
「げひょっ!げひょ!」

また蓋が開き、先ほどとは違うものが投げ込まれる。それはもくもくと煙を発して、おうちの中はあっという間に白煙で包まれた。

「ゆぐう!ふたさん!いじわるしないでね!ひらいてね!」
「げほっ!げほ!」

どん、どんという振動がそこら中から伝わってくる。横並びのおうちに、同じようなことがされているのだろう。

どん!と全力で父まりさが蓋に体当たりをすると、蓋が開いた。そのままの勢いで父まりさは外に転がり出る。

「おおー、こいつ根性あるな、重石ごと蓋開いたよ」
「戻せ戻せ!」
「石もっとでかいやつで押さえようぜ!」
「気をつけろよ!殺したら罰金だぞ!」

外では人間の子供たちが、花火を手にニヤニヤと笑っていた。
父まりさは人間の子供に蹴られ、おうちの中に押し込まれる。

「ゆひい!まりさがこーろこーろするよ!」

「でたよ、実況」
「別に転がってる情報いらねーし」

今度は、火花を散らしながら高速回転する恐ろしいものがおうちに投げ込まれた。

「ゆひいい!!なにこれ!ゆっくりしてないいい!!!」
「ひいい!ひいいい!!げほっ!あづっ!あっづい!!」
「あじゅい!あじゅいのじぇ!!」

母れいむが咳をする度に外が少しだけ見える。その度に火花が母れいむの口の中に入ってきて、熱の雨がまりちゃの顔に降り注ぐ。
散々回転したそれは、ぱん!と最後にひと鳴きして、破裂した。


しん、とおうちが静まった。外の音は蓋に遮断されて、どうなっているのか、わからない。
まわりのおうちの蓋を叩く音も、もう聞こえない。

「おわった、のぜ……?」

しーしーと涎を垂らしながら、父まりさが呟く。まだ煙がおうちに充満していて、母れいむが咳をする。

「おそとをみてくるのぜ」

「きをつけてね、げほっ、まりさ」

「そろーりでるから、だいじょうぶなのぜ。そろーり、そろーり」

まりちゃは母れいむの口の中で、うんうんを漏らしてしまっていた。

「くしゃいい……くしゃいのじぇえ……」

うんうんまみれになりながら、涙を流す。それでもまりちゃを吐き出さない母れいむはすごいと、まりちゃは素直に思った。

「まりさがきょーろきょーろするよ。きょーろきょーろ……あんぜん、だいじょうぶ、なのぜ」

父まりさは、きょーろきょーろして周りの安全を確認すると、他の家族のおうちの前に置かれている大きな石をどかしながら、他の家族に声をかけていく。

「ちぇん、ぶじなのぜ?」
「ありす。もうだいじょうぶなのぜ」
「みょん、でられるのぜ?」

煙や花火の残骸、そして漏らしてしまったしーしーやうんうんだらけのおうちから、ゆっくりの家族たちがもぞもぞと這い出てくる。

みな一様に惨めさを顔に浮かべ、体中を汚し、涙を流している。

「どぼじで……」

そう誰かがつぶやいた。

その言葉をきっかけにして、すすり泣きがゆっくりたちに広がっていく。
そこへ最後に一発、爆竹が投げ込まれ、ゆっくりたちの悲鳴が響き渡る。子供の笑い声が遠ざかっていく。

そのあとは、みんな泣いた。
情けなさで、惨めさで、泣いた。

結局その日の夜は、みんな泣きながらおうちのお掃除をした。
まりちゃは、たとえ殺されなくてもひどい扱いを受けることがあり、それを止めようがないことを、この日知った。




「ふう、きょうもごみさんが、たくっさんなのぜ」

まりちゃは、成体のまりさとなっていた。すでに独り立ちし、ひとつのおうちを与えられている。
独り立ち後、まりさは駆除チームにどうしても入れなかった。
あんな仕事を毎日やっていける自信がなかったからだ。だから、公園でゴミ掃除をする仕事を選んだ。

まりさは、お掃除の仕事中に知り合った少しだけ年下のれいむと番になっている。
子作りの順番を待っているが、駆除チームに優先的に与えられる子作り権によって、どんどんと順番を抜かされる。
子を死なせた同じ番に何度か順番を抜かされた結果、番のどちらかに駆除チームの所属ゆんがいなければ事実上子作りが出来ない仕組みであることに、まりさとれいむは気づいた。

番のれいむは優しい個体で、まりさの意思を尊重してくれている。ずっとおびちちゃんがいなくてもいいよ、とすら言ってくれている。

しかしまりさは、れいむが群れの子ゆっくりを、時々じっと見ていることに気づいている。
そこに負い目を感じているが、どうしようもなくて歯がゆい日々を過ごしている。



「まりさ、まりさ!きなさい!」

慌てた様子の長ぱちゅりーがやってきて、お掃除中のまりさを呼んだ。

「ゆ?なんなのぜ、おさ……?」

連れて行かれた公園の入り口に、ゆっくりたちが集まっている。一様に沈痛な表情をして、輪になっている。
その真ん中には、つぶれた饅頭が置いてあった。

「ゆ……?」

奇妙な饅頭だった。まんまるの姿の、ど真ん中だけが上から強い力でへこまされていて、赤血球のような形になっている。

「おとー……さ…?」

父だった。へこんだ真ん中部分に埋まっているお帽子。リボンもフリルも汚れていて、先っぽが少しほつれていて、つばが破れている。
見間違えるはずがない。父だ。

「まりざああああ!!どぼっ!どぼじでええ!!」

母れいむも誰かに連れられて、やってきた。そして父まりさのお帽子を見た瞬間に取り乱し泣き始めた。

「なにがあったのぜ?」

片目まりさが、父と同じ班のみょんに聞いている。まりさはずーりずーりと近づいて、話に加わる。

「みょんおじさん、おしえてほしいのぜ」

「ゆ……それは……」

実の娘に聞かせていい話しではないということだろう、みょんは言い淀む。

「にんげんさんに、つぶされたんだよー」

父と同じ班の、ちぇんが声を上げる。

「にんげんさんのごみすてばをあらす、のらのかぞくが、ふたかぞくいたんだよー。あっちにはたたかえるゆっくりが、ちぇんたちよりいたんだよー」
「だから、おとりでつれてきて、まちぶせしてくじょするやりかたにしたんだよー」
「おとりはまりさだったんだよー。まりさはおとりが、すごくうまかったからねー。ごみすてばのまわりで、のらをちょうはつして、ちぇんたちがまちぶせするろじうらに、はしってきたんだよー」

「そうしたら……にんげんさんが、まりさをふみつぶしたんだみょん」

「じこなのぜ?」

片目まりさが聞く。確かに状況を聞くと、事故のような気がした。いや、事故であってほしかった。しかしみょんは首を振った。

「ちがうんだみょん。にんげんさんはこういったんだみょん。『けつふってさそってんのか』って……」

「ちぇんたちがこうぎしても、『けつふってるのがわるい』のいってんばりだったんだよー。しまいには、おまえらもころされたくなかったら、そのまんじゅうもってかえれっていわれたんだよー」

ひどい。まりさはそう思った。ゆっくりが走るときにお尻が振れてしまうのは、仕方のないことじゃないか。
そんなことで殺されるなら、ゆっくりは一歩も動けなくなってしまうじゃないか。



「うわーこれ、ひどいねー。おしゃれな加湿器みたいだね」

長ぱちゅりーに連れられて、市の地域ゆっくり管理係の職員がやってきた。長のおうちには緊急ボタンがあって、それを押すと市の職員がやってくるシステムになっているのだ。とはいえ、比較的優等生だったこの群れでこのシステムが使用されたのは、初めてだった。

「かかりのおにいさん。ちいきゆっくりをきずつけたら、ばつがあるんでしょう?ぱちぇのむれのだいじななかまを、ぜんえいげいじゅつみたいにした、にんげんさんを、せいっさいしてくれるんでしょう?」

長が怒りを含んでいることを隠しもしない声で言う。

「うーん……でも犯人わかんないでしょ?警察には一応言うけどねえ、出てきたら御の字だよねえ」

傘を盗まれた?一応受理するけど、新しいの買ったほうが早いよ。そんな調子で市の職員は長ぱちゅりーに答えた。

「そんな、そんな……にんげんさん、ぱちぇたちをだましていたの?」

「いや、そんなことないよ。公園で殺されるゆっくりは出てきてないし、外で殺されたのも今回が初めてでしょ」

「じゃあ、ぱちぇたちは、のらゆっくりのくじょをしないわ。おそとであんぜんがほしょうされないなら、たいせつなむれのなかまを、おそとになんてだせないわよ」

「こちらの依頼する仕事をしないなら、地域ゆっくりの指定を解除することになるね。おうちとバッジを返してもらって、それで終わり」

「ひどい、ひどいわ……にんげんさん、それは、あまりにもひどいわ」
「ぱちぇたちは、おばあちゃんの、おばあちゃんの……そのおかあさんのじだいから、ずっと、ゆっくりをがまんしてきたのよ」
「のらゆっくりにばかにされて、かいゆっくりにみくだされて、たまに、にんげんさんにひどいことをされて……それでも、みらいのおちびちゃんのために、ゆっくりできないことをつづけてきたのよ」
「みんなこんなにゆっくりしているのに、ばかにされるのよ。ゆっくりしていない、にんげんさんのどれいだって」
「でもぱちぇは、みんながにんげんさんにみとめられているのが、うれしいのよ。いや、うれしかったのよ」
「そのけっかが、これなの?にんげんさん、ぱちぇたちは、なんのために……」

長ぱちゅりーは、みんなのために謝って、理不尽なことに土下座を続けた結果、額が傷ついて、もう妊娠できない体になっている。
自ゆんのゆっくりは諦めて、群れのためにゆん生を捧げているのだ。
そんな長が、我慢をする模範を示し続けた長が、地域ゆの指定を解除されるかもしれないのに、人間に文句を言っている。

長の言葉を、市の職員は、面倒くさいなあ、という表情で聞いていた。

「にんげんさん!!」

まりさが声を上げる。群れの目がまりさに集まる。

「にんげんさん、まりさはまりさなのぜ。そこの、ころされたゆっくりの、こどもなのぜ」

「そう。ご愁傷様だったね」

「にんげんさん。もし、おとうさんをころしたにんげんがみつかったら、せいっさい、してくれるのぜ?」

「うん。条例で決まってるからね。罰金だけど」

「にんげんさんの、おきてなのぜ?」

「そうだね。君たちの言う、掟だ」

「ならいいのぜ。おさ。まりさはそれでまんぞくなのぜ」

「まりさっ!なにをいって……」

「おさ。おとうさんのことで、そんなにおこってくれて、うれしいのぜ。でも、それでむれのみんながゆっくりできなくなるのは、いやなのぜ。おとうさんがいきてたら、きっとそういうのぜ」
「ちいきゆっくりじゃなくなったら、みんなゆっくりできないのぜ。まりさはいいのぜ。にんげんさんが、おきてで、げんだいあーとになったおとうさんのかたきを、とってくれるのぜ……」

まりさは、長が父まりさの為だけに怒っているのではないと理解している。
これは、群れの安全の問題だ。

しかし、ここで群れが引かなかったら、群れが地域ゆでなくなってしまう。
長が引く気がないのは、顔を見ればわかる。

だったら、当事者であるまりさが引けばいい。そうすれば長が引かざるを得なくなる。丸く収まる。
勝手な判断だけど、これが一番だと思う。長には後で謝ればいい。
地域ゆでなくなることは簡単だけれど、また地域ゆになることは、不可能だからだ。

人間が、飼いゆでもないゆっくりを殺した人間を探してくれるなんて、さらさら思っていない。
これは、かつて長が教えてくれた、「人間が黒と言ったら、白いものでも黒い」実例だ。
母れいむはもうずっと泣いていて、話を聞ける状態じゃない。あとで説明すればわかってくれるだろうと思う。
あんなにも他ゆんに優しい母なのだから。

「まりさ……ごめんなさい……」

長ぱちゅりーが、まりさを呼び、謝った。




おうちの蓋が、とんとん、とノックされた。

「ゆ……?」

父まりさが死んで帰ってきた日の夜、妻れいむの奨めがあったのと、母れいむが心配だったこともあり、まりさは実家に帰っていた。
母れいむは大分落ち着いてきて、父まりさのお帽子を手入れしながら思い出話ができるくらいにはなっていた。

まりさは警戒しながら蓋を開ける。

「おさ……」

「むきゅ、まりさ。こっちにきていたのね」

おうちの前にいたのは、長ぱちゅりーだった。長は、おうちの奥にいる母れいむに声をかける。

「れいむ、こんかいは、きのどくだったわね。かたきをうってもらうやくそくができなくて、ごめんなさいね」

「おさ、おちびちゃんから、おはなしはきいたよ。おさは、なにもわるくないよ」

「こんなものしか、もってこられなかったのだけれど、うけとってもらえるかしら」

長はお帽子から、花を一輪取り出した。

「ぞれ……ぞれ……あでぃがどう、あでぃがどう、おざ……ああ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

それは父まりさが好んで食べた花だった。花壇にあるもので、落花した時にしか拾うことができない貴重なものだった。
長は、その花を手折ってきていた。
群れのただの一員に過ぎなかった父まりさの好物を知っていること、そして花を手折ってまで持ってきてくれたことに、母れいむは感激して泣き出してしまった。

「かかりのおにいさんに、きょかをもらったから、もんだいないものよ」

まりさの心を見透かすように、長は言う。

「まりさ、ちょっといいかしら?」

「ゆ?」

花をもみあげで抱きしめて泣いている母れいむに声をかけ、長と共に外へ出る。

「まりさ、きょうは、ありがとう」

「い、いや……おさ、かってなことをして、わるかったのぜ。おさは、むれのみんながおそとにでるときに、あんぜんでないことを、なおしたかったのぜ?」

「むきゅ、やっぱりそこまでわかっていたのね。まりさは、にんげんさんにそれをいったら、むれがちいきゆっくりでなくなるっておもったのよね?」

「そうなのぜ。それは、ゆっくりできないのぜ」

「そうね。でも、まりさ。あなたにいいことをおしえてあげるわ。このむれは、とくべつなのよ」

「とくべつ?」

「いえ、ことばが……せいかくじゃないわね。にんげんさんが、とくべつなことをしているの。『せんっしんてきなこころみ』っていったかしら」
「ぱちぇたちで、じっけんしているのよ。おうちをあたえて、おそうじのどうぐを、まちじゅうのごみすてばさんにおいて。ぱちぇのおうちには、かかりのおにいさんをよぶ、ぼたんさんまであるのよ」

「ゆ、ゆう……」

「にんげんさんが、のらゆっくりに、ここまでてをかけることは、ふつうはないのよ」

「そ、そうなのかぜ……でも、それがなにか、きょうのこととかんけいあるのぜ?」

「かかりのおにいさんひとりで、ちいきゆっくりのしていをかいじょできるほどの、おはなしじゃないのよ。もっとたくっさんのにんげんさんが、かかわっているの」
「たまに、『しさつ』で、いろいろなにんげんさんが、むれをみにくることがあるわ。たくっさんのにんげんさんが、さんっこうにしたいっておもうほど、このむれは、うまくいっているむれなの」
「そんなむれのゆっくりが、すこしくらいわがままをいったところで、すぐにじっけんをやめられるようなおはなしでは、なくなっているということなの」

「ゆう、じゃあ、じゃあ……まりさは、よけいなことをしたのぜ?」

長ぱちゅりーから語られる難しい話で、まりさは頭が混乱していた。
ただ、あの場で長ぱちゅりーがやろうとしていたことを台無しにしてしまったことだけは、わかった。
長ぱちゅりーはまりさなんかよりもずっと物を考えていて、人間を相手に強かな交渉をしていたのだ。

「むきゅきゅ、そうでもないのよ」

「ゆ?」

「ちょっとした、かけだったのよ。まりさのいうとおり、ほんとうに、ちいきゆっくりでなくなってしまうことだって、あったのよ」

「ゆ、ゆう。そうなのぜ。それはみんなが、ゆっくりできないのぜ。そうなったら、どうしたらいいのぜ」

「かんたんよ。むれのみんなで、ぱちぇをころして、『げすなおさはころしたから、ちいきゆっくりのままにしてください』っていえばいいのよ。そうしたら、にんげんさんに、かちのあるむれは、いじされるでしょう」

まりさは茫然として、二の句が継げなかった。それほど長の口から語られた内容は、衝撃的だった。

「かんがえて、まりさ。あのときこうしょうがうまくいったら、それはとてもいいことだわ。もし、しっぱいしたら―――ぱちぇがしねばいい。ぱちぇがいのちをはるだけで、むれのみんながあんぜんになるのなら、かけるかちのある、かけだったのよ」

「それは、それは……よくないのぜ。ぜったいに、よくないのぜ。おさがゆっくりできなくて、なんのためのむれなのぜ」

「むきゅきゅ、ありがとう。そう、だから、ありがとうなのよ、まりさ。あなたは、ぱちぇのいのちが、ぜったいにたすかるようにしてくれたのよ」

「ゆ、ゆう……」

「そんなかおをしないで、まりさ。ぱちぇは、ほんとうにあなたにかんしゃしているの。ありがとう」

にっこりと笑う長を前に、まりさは、ある決意をする。群れのために、長のために、まりさが何をできるのか。



「おさ、まりさは、くじょちーむに、はいるのぜ」



まりさは、父まりさが所属した班に補充された。

子作りの順番は、思っていたよりも早く回ってきた。子供を作れても、それが人間に地域ゆとして認定されなければ殺されてしまうからだ。群れのゆっくりの一番の死因は、それだった。そうやって何度も何度も子作りをして死なせては、耐えきれなくなって狂ってしまうゆっくりもいる。

子をなす為に群れの誰かの死を願わなければならない生活が早々に終わったことに、まりさは安堵した。

子はまりちゃを残した。番のれいむと相談して、れいむの体に一番近いところにできた実ゆを残そうと決めて、それがまりちゃだった。
とても手がかかり我儘なところもあるが、手前味噌ながら素直で優しく育ってくれていると思う。
地域ゆとしても、問題なく認定されるだろう。



「あぎいい!びょよ!!」

まりさは目の前にいる、野良れいみゅを枝で刺す。
柔らかい赤ゆの皮に、木の枝がほとんど抵抗なく刺さる。するりとれいみゅの体に枝が入る。

無用な痛みを与えないように、中枢餡を狙う。
それでも相手は死にたくないので、激しく動き、狙いが外れる。

「びょ!ぴょぴょよ!」

だから何度も何度も刺すことになる。
同族を殺すことも、ゆっくりの死臭も、死骸の片付けも、仕事の全てに未だに慣れることはない。
おそらく、死ぬまで慣れることはないだろうと思う。

「じゃあ、おつかれだみょん」
「またあした、なんだねー」
「おつかれなんだぜ」

「むきゅ、おつかれさま、みんな」

今日も大過なく、仕事を終えることができた。生きて公園に帰ってこられると、まりさは餡子の底からほっとする。
公園の入り口で今日の分のフードを長ぱちゅりーから受け取り、お帽子に入れた。



「さあ、かりをはじめるのぜ」

いつしか、まりさも父まりさと同じように、狩りをしてからおうちに帰るようになっていた。

『くそにんげんのくそどれい』
『じゆんたちのために、ゆっくりをころすのか』
『おまえらはゆっくりじゃない』

仕事をするうちに、何度も何度も同じ罵倒を浴びる。
ゆっくりの思考回路なんて似たようなものだから、本当に同じことを言われる。
ずっと同じことを言われ続けると、本当にそうなんじゃないかと錯覚してくる。
赤ゆを刺す度に、ゴミ集積所に死骸を捨てる度に、自ゆんはゆっくりなのだろうか、と自問する。

人間たちは、巧妙に、ゆっくりを殺せるゆっくりだけを残す仕組みを作っている。
駆除や間引きを通して、人間の言うことを聞けないゆっくりが死んでも仕方のないことだという考え方を植え込んでいく。

そうやって残ってきた、そしてこれから残っていくゆっくりは、果たしてゆっくりなのだろうか。
最近まりさは、そう思う。

『おちび……ごめんなざい……ごめんなざい……』

父の泣き声が頭から離れない。あれは、殺した野良の子への謝罪ではなかった。
ゆっくりを殺さなければ生きていけない我が子への、そして子孫への懺悔だ。




「ゆう、いないのぜえ……」

公園の植物の葉っぱを一枚一枚お下げでめくっては覗き込んで、獲物を探す。
まりさは、父から狩りのやり方を教わったことがない。だから、なんとなくこうだろうというやり方で狩りをしている。
どこにどういう獲物がいるのか知らないし、例えば飛んでいる蝶の捕まえ方だってわからない。
獲物が取れたり取れなかったり、狩りの成果はまちまちだ。

野良では生きていけないな、とまりさは苦笑する。

「ゆっ、ゆっ……いないのぜ」

狩りに熱中している間は、何もかも忘れて、本能に従うことができる。
ゆっくりらしさを取り返せているような気がする。
父もこのような時間を大切にしたかったのだろうと思う。

「いてね、いてね……いもむしさん」

何枚目になるかわからない葉っぱをめくった時、丸々と太った芋虫を見つけた。
芋虫は突然の大きな環境変化にびっくりするかのように頭をもたげ、うねうねと蠢く。

「いたのぜ、いもむしさん。おちびがよろこぶのぜ」

まりさの顔が、ゆっくりとほころんだ。

ゆっくりいじめSS・イラスト ※残虐描写注意!コメント(19)トラックバック(0)|

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コメント

18700:

長くて何か言う余力無いけど普通に良い物語だった

2015/05/04 13:40 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18702:

ひさしぶりにいいSSを読んだわー。キリライターさんが活躍
してた頃と違って今じゃゆっくりがバカか強欲かおかざり誤認
により仲間を食い殺すとか、ひきょうな通常種が正しい補食種
や希少種に成敗されるみたいな話ばかりで食傷していた。
センキュー作者様。

2015/05/04 21:16 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18703:

地域ゆっくりの権威チートあきを彷彿とさせる良SS。114514点

2015/05/04 23:16 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18704:

素晴らしい
ゆっくりに感情移入してしまった

2015/05/04 23:42 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18705:

親まりさの気持ち、少し分かるなぁ。友達が結婚するとか聞いて、子供のこととか考えてたから、来るものがあるよ。
それに、親まりさを殺したクソ人間に対する罰が無いってのも、ある意味、今の日本の法律を表してるみたいだった。
いい話だった。

2015/05/05 03:07 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18710:

これ読んだ後に純粋なゆ虐見てもいつも通りヒャッハー!出来ないよ...

2015/05/05 08:50 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18712:

最後で主人公のまりちゃが父まりさと全く同じ状態にあるのは、
この環境でまりちゃのような優しく善良なゆっくりなら皆こうならざるを
えないだろうという表現になっているのだな。

2015/05/05 17:09 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18718:

ゆっくりのssごときでちょっと涙腺にきたぞ
どうしてくれるんだ作者さん

2015/05/11 01:04 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18720:

名作だな

こういうSSをもっと読みたい

2015/05/11 15:04 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18721:

素晴らしい

2015/05/11 21:30 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
18724:

しっかりしたいい作品だったわ
オチもこれでいいと思う
無理矢理悲喜劇を取って付ける必要はないな

2015/05/13 18:02 | イルボン速報@名無しさん #- URL [ 編集 ]
19008:

普通に良い物語だった(笑)
普通だったら良くない。良かったら普通じゃない。
矛盾してることに気付かないのか、このバカは。

2015/10/01 23:31 | 各無しさん #- URL [ 編集 ]
19013:

深い、深いよ。

2015/10/03 10:22 | 鬼威惨 #- URL [ 編集 ]
19042:

泣いた

2015/10/14 18:25 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]
19269:

はあ、野良が全部ゲスならよかったのに・・・でもそれはハエを殺すのと同じようなものだと何とかこらえたがなんなのこの終わり!?これはクソガきニムカつきざるをえない。最悪・・・

2016/02/07 20:50 | 絶望している人 #- URL [ 編集 ]
19270:

そういえばまりちゃがまりさに変わってた。

2016/02/07 20:55 | 絶望している人 #- URL [ 編集 ]
19275:泣ける...

ゆっくりの小説で泣いてしまった...

2016/02/12 02:43 | 壊苦蘇吐理医務鬼威惨 #usSCdrhA URL [ 編集 ]
19512:

いい話だった
でもそんないい話だからこそ
この地域ゆっくりにもいつもの強烈なおかざり差別が
あるのかなあったらイヤだなと気になってしまう
そんなの作者の設定次第なのにね

2016/06/28 04:14 | 名無しさん #P5cbrT8o URL [ 編集 ]
19513:

ゴーマニズム宣言スペシャル戦争論の最後に出てきた
「自分を一番自由にしてくれる束縛」
簡潔に一番マシな束縛、最善な束縛と言い換えてもいいだろう
この話のテーマもそれと同じなのだと思う

2016/06/28 04:22 | 名無しさん #- URL [ 編集 ]

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